疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第397話 理解ある幼馴染がやっぱり好き

「さすがに、戦争関連のところで恋愛関連の話はできんて……」

 

 俺たちがいるのは、知覧特攻平和会館。

 修学旅行の一日目、最初の見学先だ。

 戦争について学ぶのは修学旅行の鉄板コースではあるため、仕方のないことではある。

 この場所でそういう話をするほうが、よほど不謹慎だ。

 

 俺は割り切ることにした。

 せっかくの機会なのだ。これも小説の糧にする。

 それだけで、脳みそのギアが切り替わった。

 

 展示されている資料を一つひとつ丁寧に読み込んでいく。

 特攻隊員たちの遺書、写真。

 展示資料の一つ一つに目を止めて、できる限り言葉にならない部分まで受け取ろうとした。

 

 午後の講義の時間は、数名がすでに舟を漕いでいた。

 無理もない。資料館を歩き回った後の、静かな室内だ。眠くなるのが普通だと思う。

 

 俺は一言一句聞き逃さない勢いで話を聞いていた。

 講師の先生が話す言葉を頭の中で反芻して、どう物語に落とし込めるかを考える。

 感情の解像度を上げるための作業だ。何かを書こうとしているわけじゃない。

 ただ、引き出しに入れておきたかった。

 

「田中君、すごく熱心だね。感心感心」

 

 講義が終わった後、引率の先生に声をかけられた。

 

「こういうのに真剣に向き合ってくれる生徒がいると、先生たちも嬉しいよ」

「いえ、そんな……」

 

 心苦しかった。感心されるのが、素直に嬉しくなかった。

 純粋に戦争の歴史と向き合っていたわけじゃない。

 小説のために聞いていたのだ。遺書の言葉に目を止めたのも、講義を聞き込んだのも、全部自分の小説に役立てるためだ。

 そう思うと、先生の言葉が刺さった。

 

 ただ、それでも。

 この場所が持つ重さは、本物だった。

 創作のためだとしても、受け取ったものは確かに存在する。

 それで自分を許すことにした。

 

「……どうせ、小説の糧にでもしてたんでしょ」

 

 外に出たところで、声をかけられた。

 振り返ると、ヨシノリがいた。呆れたような顔で、腕を組んでいる。

 そこに気まずさはなく、いつもの調子だった。

 

「なんでわかるんだよ」

「顔に書いてある。資料一個一個にあんな食いつき方するの、カナタくらいでしょ」

 

 思わず笑いそうになった。おっ、いい感じじゃないか。普通に話せてる。

 

「否定はしないが、真剣に聞いてたのは本当だ。特攻隊員の遺書って、当たり前だけど一人一人、違うんだよな。家族への言葉を淡々と書いてる人もいれば、感情がそのまま溢れてるような人もいて。書き手の性格が出るっていうか、その人がどういう人間だったかが文章から透けて見える気がして。それって読んだだけでどんな人かわかる。キャラが立ってるってことにもなる。ただ真似をするんじゃなくてあの切迫感をどう平時の物語に落とし込むかっていう問題もあって――」

 

 ヨシノリが、ため息をついた。深い、ため息だった。

 

「……あ、すまん」

「謝らないでよ。いつものカナタだったら謝らないでしょ」

「いや、その」

 

 完全に創作モードになっていた。自分でも気づかないうちにマシンガントークになっていた。

 俺って、こんなに会話下手だったっけ。

 いや、下手なままでもヨシノリが許容してくれていただけだったのだ。

 

「ホントに、あんたはしょうがないわね」

 

 ヨシノリは肩の力を抜くと、呆れたように笑った。

 

「どうせ、あんたの小説脳を理解してあげられるのはあたしくらいなんだから遠慮すんなっての」

「いい、のか」

「感謝しなさいよ?」

 

 そう言うと、ヨシノリはいつものような笑みを浮かべた。

 

 ああ、やっぱり俺はヨシノリが好きだ。

 

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