疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
気まずさも払拭され、知覧での学習も終わった。
今日はホテルに宿泊予定だ。
ホテルの部屋は三人部屋だった。
部屋割りは、俺とナイトとゴワスの三人。
夕食を終えて部屋に戻ると、ゴワスは荷物を放り投げるようにしてベッドへ倒れ込んだ。
スプリングが軋む音がして、それきり動かなくなる。
今日は朝から移動続きだったから無理もない。
ナイトはシャワーを浴びに行き、俺は手持ち無沙汰のままベッドの端に腰を下ろした。
特に見たいものがあるわけでもないのに、スマホを開く。
知覧で見た遺書の文章が、まだ頭の中にある。淡々と書かれたもの、感情がそのまま滲み出たもの。どちらも本物だった。書いた人間が確かにそこにいたという証拠が、文字になって残っていた。
今日ヨシノリといつもの調子で話せた。
それでも三ヶ月分の距離を縮めるには、あまりにも少ない。
ナイトが戻ってきた。タオルで髪を拭きながらベッドに腰かけて、ゴワスをちらりと見る。
「寝てるのかい?」
「寝てない。目閉じてただけだ」
ゴワスがむくりと起き上がる。なんだかんだ、こいつは夜に強い。
昼間あれだけ眠そうにしていたのに、夜になると妙に覚醒する。
ゲーマーの性というやつだろう。
「なあ、藍里さんとはどうなんだ」
俺が聞くと、ゴワスの表情が微妙に動いた。
不機嫌でも照れでもない、微妙な顔だ。
「普通だよ」
「付き合ってるのに、普通ってどういうことだ」
「普通に付き合ってる。デートもした」
「どこ行ったんだ」
「水族館」
ナイトが吹き出した。
「意外だね、ゴワスが水族館」
「藍里が行きたいって言ったんだからしょうがないだろ」
「それで行ったんだ」
「文句あるか」
「全然ない。微笑ましいと思って」
ゴワスは顔をそむけたが、耳が赤かった。
こいつが赤くなるのを見るのは珍しい。
俺とナイトは目を合わせて、黙って口の端を上げた。
「ナイトはどうなんだ。愛夏と」
ナイトは困ったような顔をした。
「付き合ってはいないよ。連絡は取ってるけど」
「どんな内容だ」
「こういうの兄妹的にはあまり聞きたくないやつでしょ」
「気にするな。小説の糧になる」
「愛夏ちゃんに怒られるからパスで」
「まあ、しょうがないか……ところで、告白はしないのか?」
「さすがに、愛夏ちゃんが高校生になってからかな」
「慎重だな」
「またロリコン扱いされたくないからね」
それだけ言って、ナイトは電気スタンドの明かりに目を向けた。
照れているのだろうが、相変わらず表情が読みにくい。
部屋の中が温度を持ったような気がした。
こいつらは、ちゃんと前に進んでいる。
そう思ったら、自然と言葉が口から出ていた。
「この旅行中に、ヨシノリに告白する」
ナイトが顔を上げた。ゴワスも目を向けてくる。
口にすると、改めて腹が据わった。
緊張と覚悟が混ざり合って、胃のあたりに重く沈む感じがする。
怖くないわけじゃない。ただ、言わないまま帰る選択肢が、もう浮かばなかった。
「おう、やっと覚悟決めたか」
「頑張って。失敗したら笑うけど」
「笑うな」
「冗談だよ」
ナイトが電気を消した。
部屋が暗くなって、窓の外の夜だけが残る。
ベッドに横になると、シーツが冷たかった。
明日は屋久島だ。ハイキングでへとへとになる前に決めたいところだ。
目を閉じると、ヨシノリのポニーテールが思い浮かんだ。
空港でぴょこぴょこと揺れていた、あのポニーテールが脳裏にこびりついていた。
早く、ヨシノリと話がしたい。