疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
木の根に背中を預けたまま、しばらく動けなかった。
雨が葉を叩く音だけが続いている。
風はなく、ただ真っ直ぐに降り続けている。
木々の間から見える空は白く濁っていて、どの方角に日があるのかもわからなかった。
ヨシノリは俺の隣に座り込んで、足首を両手で包んでいた。
「痛いか」
「動かさなければ大丈夫」
大丈夫という言葉の信憑性が低いのはいつものことだが、顔色は悪くない。
俺は雨合羽のポケットからハンカチを出して、ヨシノリの頬の泥を拭いた。
ヨシノリが少し目を丸くしたが、何も言わなかった。
また沈黙が落ちる。
雨音の中で、水が流れる音が聞こえた。近くに沢があるらしい。遠くで鳥の声がして、すぐに消えた。
「あのさ」
口を開いたのは、気づいたら声が出ていた、という感じだった。
「ここ最近のこと。ちゃんと話したかった」
ヨシノリが足首から視線を上げた。
「ずっと、ヨシノリをないがしろにしてた。RINEの返信もおざなりになってて本当に悪かった」
「……別に、カナタがあんま連絡返さないのは知ってるし」
「わかってくれてるからって、それに甘え過ぎてたのがダメだったんだ」
俺の言葉に、ヨシノリは何も言わなかった。
雨が少し強くなった。木の葉から落ちる水滴が、肩を濡らしていく。
「漫研には普通に行ってたのに、ヨシノリには連絡を返さなかった。外から見たらどう映るか、わかってる。言い訳のしようがない」
「伊代ちゃんのことは、別にいいよ」
ヨシノリの声は平坦だった。怒っているわけではない。ただ、どこか遠い。
「本当にそう思ってるのか」
「……思ってる」
「ヨシノリ」
名前を呼ぶと、ヨシノリが視線を逸らした。濡れた木の根のあたりを見ている。
少しの間があった。雨音だけが続く。
「嘘じゃないよ」
ヨシノリは静かに言った。
「伊代ちゃんのことは本当にいいの。ただ……」
そこで言葉が止まった。ポニーテールの崩れた髪が、頬にかかっている。
「ただ?」
「あたしのこと、どうでもよくなったのかなって、思ってた」
声が小さかった。雨音に混じって、ほとんど聞こえないくらいの声だった。
胸に、鈍い痛みが走った。
「ごめん」
それ以上の言葉が出てこなかった。言い訳も説明も、今は要らない気がした。
「ヨシノリのことをどうでもいいと思ったことは、一度もない。それだけは本当だ」
ヨシノリが膝を抱えたまま、こちらを向いた。
その目が何かを確かめるように、俺の顔をじっと見ている。
何か言おうとして、口を開いて、また閉じた。
「……あたしだって、そう思いたいよ」
思いたい、ということは確信できなくなっている。
そういうことなのだろう。
だから、話さなければならない。
俺も気持ちだけではない。
「ヨシノリ、聞いてくれ。大事な話がある」
これまでの俺を全部。余すことなく伝えなければいけない。