疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
ひたすらにキーボードを打ち続ける。
今週の話は、キャラも、ストーリーも、最高の出来だ。
練りに練って回収する伏線だって完璧だと自信を持てる。
この引きは読者には予想できないはずだ。
「くくっ……」
タイピングする指に力が籠り、気味の悪い笑みが零れてしまう。
読者がきっと予想できないであろう展開を思いついて書いているときほど脳汁が溢れ出す瞬間はない。
「カナタ。進捗どう?」
部屋のドアが開いて、ヨシノリが顔を覗かせた。
高校、大学を卒業して、去年からは一緒に住んでいる。
「あと一段落ってところだな」
「また一段落が三時間になるやつじゃないよね」
「ならない」
「絶対なるじゃん。やっぱり週刊連載って、人間のする仕事じゃないよね」
「まあな。俺は原作担当だから気が楽だけどな」
現在、ライトノベル作家である田中カナタの仕事は、漫画原作の仕事のほうが増えつつあった。
俺の文章ネームを形にしてくれるケイコ先輩には助けられっぱなしだ。
「それでも締め切りが毎週あるのがキツイでしょ」
「エナドリに頼らないで済んでる時点でかなり健康的かつ計画的にやれていると思うけどな」
「ふーん……でも、少しは休憩したほうがいいと思うんだよね」
ヨシノリは、すっと目を細めて俺をイスの後ろから抱きしめてきた。
「あのな。同棲始まってからずっとだぞ? さすがに、体力が持たないって」
「へぇ、作品のために無茶はできるのに、あたしのためには無茶できないんだー」
わざとらしく頬を膨らませるヨシノリに、俺は深いため息をついた。
「無茶とかそういう問題じゃなくて、母さんたちから結婚するまでは節度を持つように言われてんだから……」
「あっ、そういうこと言う? ママたちを盾にするんだ」
カッチーンという擬音が聞こえたと思ったら、プツッという音が背後から聞こえてきた。
「まあ、いいわ。とりあえず長時間の執筆作業で疲れているだろうから、ホットアイマスクでも被ってなさい」
「おう、悪いな――ぶふっ!?」
むわっとした固めの布が視界を覆った瞬間、匂いとで理性が吹き飛びそうになった。
「おま、これ、ブラじゃねぇか!」
「ごめーん、間違えた!」
振り返ると、ヨシノリが悪戯っぽい笑みを浮かべていた。
自然と視線が顔から下へと下がってしまう。
「あれぇ、毎日は体が持たないカナタ先生? お元気そうですね?」
「お前なぁ……」
さすがに、ここまで煽られて止まれるわけがなかった。
「避妊はちゃんとするからな。新卒一年目で秒で結婚からの産休は気まずいだろうし」
「そう思うなら養ってくれてもいいんだよ?」
「お前だって稼ぎはあるだろ。とはいえ、お互い安定とは程遠い職業だからな」
ヨシノリは現在コスプレイヤー、芳野リサトとして活動している。
高校生時点でも人気は出ていたが、大学生からはさらに人気が爆発した。
現在は、国内外の企業イベントコンパニオンとしても活躍しており、俺以上に稼いでいた。
同棲を始めたのは結婚する前に共同生活を送れるかの確認作業も兼ねていた。
「もう待てないんだけどなぁ」
俺がその気になったのを理解したのか、ヨシノリは服を脱ぎながら唇を尖らせる。
「あんまり今と変わらないことになりそうだけどな」
「夫婦って肩書きがあるだけで、気分のノリが違うんだけどなぁ」
「あれ、もしかして結婚後のほうが体力持たなくなる可能性ある?」
「さあ、どうでしょう。答え合わせは……そのうちね?」
抱きしめられながら耳元で囁かれ、俺の理性は完全に崩壊するのだった。