疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第48話 最悪の目覚め

 その日は最悪の目覚めだった。

 

「あれ、俺なんで泣いて……」

 

 悪夢に魘されて目覚めてみれば、俺の両目からは涙が零れ落ちていた。

 夢の内容は何も覚えていない。ただ胸がはち切れそうなほどに苦しかったことだけは確かだ。

 本当は忘れてはいけない大切な夢だった気もする。

 

 だが、どんなに思い出そうとしても、苦しいだけで何も思い出せなかった。

 外はまだ薄暗く、窓の外には灰色の空が広がっている。カーテンの隙間から差し込む朝日も、どこかぼんやりとしていて、俺の気分をさらに沈ませるようだった。

 

「学校、行きたくないな……」

 

 ベッドに腰掛けながら、ぼんやりと呟く。

 帰り道の喧嘩以来、ヨシノリは俺の部屋に来なくなった。

 教室でもグループを通して話すことはあったが、一緒に登校したり、一緒に帰ったり、そういった二人の時間はすっかりなくなった。

 

 つまり、元の関係に戻っただけだ。小学生の頃はしょっちゅうヨシノリが俺の部屋に乗り込んできていた。それが中学になり、パタリと途絶えた。

 そして再びやり直せた二周目でも、こうして完全になくなってしまった。

 

 俺たちの関係の変化は周囲も気づいている。

 ナイトやアミ、喜屋武は心配そうにしている。

 どこかぽっかりと心に穴が開いたような感覚が襲う。

 

「はぁ……」

 

 一人で最寄り駅である神保町駅に降り立ったとき、隣にヨシノリがいないことを再認識する。一人で改札を抜けて駅を出る。それだけで気分が落ち込んでしまった。

 駅のホームには、通勤ラッシュを避けようとする学生や会社員たちが列をなしていた。誰もが当たり前のように日常を過ごしているのに、俺だけが時間の流れに取り残されたような気分だった。

 俺はヨシノリをキャラとして見ていた。

 

『田中くん。仕事は一人でしているんじゃないんだよ。もっと周りのことを見ないと』

 

 ふと、一周目で上司に言われた言葉を思い出した。

 周りのことを見る。それは二周目において俺が意識してやっていたことのはずだった。

 

 だが、俺はその意味を履き違えていたのだろう。

 小説の参考になるから、キャラとして分析して観察するだけで相手の気持ちは考慮しない。まるで動物園で動物の生態を観察するような視点でみんなを見ていた。

 行動から心理状態の把握はできても人の気持ちは理解できない。

 その事実は、俺が人でなしなんだと自覚するには十分だった。

 

 足を進めながらも、周囲の喧騒がどこか遠くに感じられる。

 ヨシノリがいないだけで、こんなにも景色が変わって見えるのか。

 視界が滲みそうになるのを堪え、俺は無理やり足を前へ進めた。

 

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