疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第67話 特急列車の中で

 高校生の旅行において、如何に旅費を節約できるかは重要な課題だ。

 とはいえ、大荷物を抱えての長旅はなかなかの負担になる。そこで今回は特急列車を利用することにした。

 ローカル線よりも追加料金は掛かるが、乗り換えがなく、全員分の座席も確保できる。何より、移動の快適さを考えれば必要経費だと判断したのだ。

 

 特急列車の車内は、夏休みの旅行客でにぎわっていた。大きなスーツケースを抱えた家族連れ、遠足気分で騒ぐ学生グループ。そんな中、俺たちも乗車直後の高揚感に包まれていた。

 窓から差し込む陽射しが強く、エアコンが効いているとはいえ、じんわりとした暑さが残る。そんな中、ヨシノリが興味津々に車窓を眺めながら口を開いた。

 

「特急乗るの、あたし初めてかも」

「わんねー、電車乗る機会が少ないから、ちょっと楽しみさー!」

「そういえば、沖縄って電車ないんでしたね」

 

 アミが不思議そうに首を傾げる。その隣で、喜屋武は頷きながら答えた。

 

「離島は基本、移動手段は船さー」

「モノレールみたいなのがあるんじゃねぇのか?」

「それは、ゆいレールだね」

 

 ナイトがすかさず補足する。

 

「沖縄本島の話だろ? 喜屋武は島出身だったじゃん」

「そーさー!」

 

 俺がそう言うと、喜屋武は楽しげに笑った。

 

「うちの島にはバスもないからねー。こっちに来て初めて電車乗ったわけさー」

 

 その言葉に、ナイトが感心したように頷いた。

 

「まさか電車そのものが新鮮だとはね。旅気分、さらに上がるんじゃない?」

「間違いないさー! それに、乗り換えなく行けるのが嬉しいねー!」

「ま、特急列車は高くつく分乗り心地はいいのが利点だからな」

 

 俺の言葉に愛夏は不思議そうに尋ねてくる。

 

「お兄ちゃん、特急なんて乗ったことあったっけ?」

「あるぞ。昔の話だけど」

「そうだっけ……?」

 

 一周目の大学生のときの話だから、未来の話でもあるけど。

 

「なんか、こうやってみんなで旅行って、すごく特別な感じがするよね」

 

 ふと、ヨシノリが窓の外を眺めながらつぶやく。

 

「確かに、学校帰りに遊ぶのとはまた違う感じがしますね」

 

 アミが柔らかい微笑みを浮かべる。彼女はカバンからお茶を取り出し、一口飲んで喉を潤していた。

 

「うちの親は『特急なんて贅沢な奴め!』とか言ってたけど、荷物あるし楽なほうがいいよなぁ」

「いや、ゴワス。お前、荷物それだけ?」

 

 ふと視線を向けると、ゴワスの荷物がやけに少ない。周囲の誰よりもコンパクトなリュックひとつしか持っていない。

 

「おう。荷物が多いと移動が面倒だし、必要なら現地で調達すればいいだろ」

「現地調達は厳しいだろ……」

 

 そんなやり取りをしていると、ふと喜屋武の懐事情が気になった。

 

「喜屋武、予算は大丈夫だったのか?」

 

 喜屋武は現在、住吉のほうで一人暮らしをしている。

 楽器関連の費用や一人暮らしの生活費など、出費はかなり多いはずだ。

 すると、喜屋武はニコッと笑いながら指でOKサインを作る。

 

「仕送りとバイト代あるから、大丈夫さー!」

「バイト? 鳴久って、どこでバイトしてるの?」

「大島の〝がちま屋〟って、沖縄料理のお店さねー」

 

「「ド近所じゃん」」

 

 俺とヨシノリの声がぴったり揃う。

 がちま屋は最近駅前にオープンした沖縄料理の店だ。チラシを配っているのを見たことがあるが、まさか喜屋武がそこで働いているとは思わなかった。

 

「せっかくだし、今度行ってみるか」

「いいね! ゴーヤチャンプルーとか食べたいかも」

「おすすめはラフテーさー! あとは、ソーキそばもおいしいねー!」

 

 車内の会話は途切れることなく、次々と話題が飛び交う。

 

「ナイトさんは、沖縄料理食べたことあるんですか?」

「んー、ちゃんとした沖縄料理の店には行ったことないな」

「じゃあ、今度みんなで行きましょうよ!」

「それも悪くないね」

 

 愛夏がキラキラと目を輝かせながら言うと、ナイトは笑いながら頷いた。

 その笑みは不思議といつもの笑みと違ったものに見えた。

 

「ん?」

「どうしたの、カナタ?」

「いや、何か……何だろう。何か見覚えがあるんだよな」

 

 少しの疑問を残しつつも、和やかな空気の中で特急列車は目的地へと進んでいく。楽しい旅行の始まりを予感させる、そんな道中だった。

 

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