疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第70話 狼の群れに骨付き肉

 ヨシノリと話していると、少し離れた場所で何やら揉めている様子が目に入った。

 アミと喜屋武が、見知らぬ男たちに話しかけられている。どうやらナンパされているようだ。アミはあの容姿だし、何より今は水着だ。

 ナンパ男からすれば水着のムッチンムッチン巨乳美少女なんて、切り分けられたサーロインステーキが歩いているようなものだろう。

 それに加えて、横に沖縄美人までセットで付いているのだ。もはやサーロインステーキ定食である。

 喜屋武がアミを庇ってナンパ男を威嚇しているが、小型犬がキャンキャン吠えているようなもので、あまり効果がない。

 

「ちょっと、あれ……!」

 

 ヨシノリが助けに行こうとした瞬間、俺は咄嗟に腕を掴んで止めた。

 

「はい、ストップ」

「なんで止めるのよ!」

 

 ヨシノリの声には苛立ちが滲んでいる。

 その裏には仲間を助けたいという真っ直ぐな気持ちが見え隠れしていた。彼女の仲間想いな性格は昔から変わらない。

 

「狼の群れに骨付き肉を放り込むと思うか?」

「は?」

「アイツら、二人だけでも目を引いてるのに、お前まで加わったら逆効果だろ」

 

 こんなほどよく引き締まったムチムチの水着姿の美少女なんて格好の餌である。

 俺の言葉を聞いたヨシノリは一瞬ムッとしたが、すぐに状況を理解したのか小さく息を吐いた。

 

「でも、放っておけないでしょ」

「だから、ナイトとゴワスに行かせる。あいつらなら上手くやるだろ」

 

 俺がそう言うと、ナイトはスマホをポケットにしまいながら、余裕の笑みを浮かべて歩き出した。その隣には拳をパキポキ鳴らしているゴワスもいる。

 

「まったく、僕が出るまでもなかったらいいんだけどね。ゴワス、行くよ」

「へへっ、荒事は任せろ」

「荒事にしないために行くんだよ」

 

 二人が向かっていくのを見届けながら、俺はヨシノリの手をそっと放した。

 

「これで大丈夫だ。俺は撮影に戻る」

「そこはあんたが颯爽と助けに行くとこじゃない?」

 

 ヨシノリはジト目で俺を睨みながらも、どこか安心したような顔をしていた。

 

「適材適所って奴だ。俺は〝ギター少女アフロディーテ〟のヒーローじゃないからな」

 

 俺は軽く肩をすくめる。あいつは言ってみれば、別作品の主人公みたいなもんだ。

 

「じゃあ、誰のヒーローなの」

「そりゃ、もちろん……――――」

 

 そこまで口にしたところで、言おうとした言葉がしゅわしゅわと炭酸のように脳内から弾けて消える。

 まただ。ヨシノリに対して感情が高ぶると、いつもこの謎の感覚が俺を押さえつける。

 ヨシノリは期待するようにこちらを見つめていたが、俺は誤魔化すようにカメラを構えた。

 

「おっと、ナンパ男から美少女を助ける資料を撮らないと」

「あ、誤魔化した」

 

 ヨシノリは呆れたようにため息をつくが、その横顔はどこか満足そうだった。

 

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