疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第75話 猥談も糧になる

 日差しが少しずつ落ち着き始め、海辺の喧騒も穏やかになりつつあった。俺たちは海水浴を満喫し、そろそろコテージに戻るために荷物をまとめ始めた。

 

「ふぃー! 思いっきり泳いでスッキリしたさー!」

「私もすっごく楽しかったです!」

 

 喜屋武とアミが満足げに伸びをしながら笑う。その横で、ヨシノリは軽く髪をかき上げながら、まだ物足りなさそうな表情をしていた。

 

「まだ泳げそうなのになー」

「お前、どんだけ体力あるんだよ」

 

 俺は濡れた髪を軽く指で梳きながら苦笑する。ヨシノリはこのメンバーの中でも、特に動き回るタイプなので、明らかに俺たちと体力のレベルが違う。

 

「そろそろ着替えて戻ろうか」

 

 ナイトの一言で、俺たちはそれぞれ更衣室へ向かった。

 

「それにしても、眼福だったな……」

 

 更衣室に入り、タオルで髪を拭きながらゴワスがしみじみと呟いた。

 

「眼福?」

 

 首を傾げると、ゴワスはニヤリと笑いながら俺の肩を叩く。

 

「奏太、お前も見ただろ? 水着女子たちの破壊力をよ!」

「そういうことはもう少し控えめに言えよ」

 

 正直、否定はできない。アミは相変わらずスタイル抜群だったし、ヨシノリもいい感じに引き締まったムチムチボディで、健康的な魅力があった。喜屋武も美人系の顔立ちと日焼けの組み合わせがいい味を出していた。

 

「特にアミは反則だろ? 水着の上からでも分かるあの圧倒的ボリューム……ばるんばるんのどたぷんよ!」

「お前、ほんとに口を慎めって」

 

 俺はため息をつくが、ナイトは意外にも冷静な表情で腕を組んでいた。

 

「確かにアミちゃんは目を引くけど、鳴久ちゃんの日焼け跡も捨てがたいよ。愛夏ちゃんの水着姿も可愛かったし」

「ナイト。お前も乗っかるのか……」

 

 俺はため息をつきながら着替え始める。

 

「せっかく男子だけなんだから、気を遣わずこういう話題で盛り上がるのもいいと思ってさ」

「いや、ビーチにいた知らない美女ならまだしも、知り合いのそういうのはキツくないか?」

 

 特に妹の愛夏に関するものは聞いてるだけで精神力が削られる気分である。

 ゲンナリした俺を見て、ナイトは笑いながら肩へ手を置く。

 

「まあ、カナタ。視点を変えてみなよ」

「と、いうと?」

 

 ゴワスが腕を組み、わざとらしく咳払いをする。

 

「下ネタを言えない男は信用できない。心の内を曝け出してこそ仲が深まるってもんだ」

「そうそう。男同士のこういう話こそ青春ってものだろう?」

「なるほど……」

 

 俺は顎に手を当てて、改めて考えてみる。確かに、こういう話題は普段なら避けがちだった。だが、陽キャにとっては、これもまた友情を深める手段の一つなのかもしれない。

 

「今までそういう機会がなかったから苦手意識があるが……俺、全力で猥談してみるよ」

「そ、そんなに意気込んでするものじゃないけどね」

 

 ナイトが苦笑しながらも、「ま、無理のない範囲で」と言葉を添えた。

 

「いいや、ここで猥談の一つもできずに何が青春か。これもまた小説の糧になるんだ」

「何でこんな執筆マシーンにあんな生き生きとしたキャラが書けるんだ?」

「そういう視点で物事を見れるのもある種の才能だよね」

 

 ナイトは苦笑しながら髪を整えていた。

 うーん、意気込んでみたはいいものの、猥談ってどうすればいいんだ。一周目では友達も彼女もいなかった。当然、会社の人たちとは猥談なんてしない。ダメだ、詰んだ。

 

「好きなエロ本のジャンルとか、なんかないのか」

 

 ゴワスが助け船を出してくれるが、エロ本と言われてもリアルのほうは読んだことないんだよなぁ。

 

「それって同人誌とかでもいいのか」

「同人誌?」

 

 サブカル系の知識に疎いゴワスが首を傾げる。まあ、普通は通じないよな。

 

「自主制作で作った薄い漫画とかって言えばわかるか?」

 

 別に同人誌は漫画に限ったものではないのだが、ゴワスにそれを言ったところで理解はできないだろう。

 

「まさか、お前。現実の女に興味ないのか?」

「ちゃんとある……はずだ」

「自信はないのか……」

 

 ちゃんとヨシノリの女の子らしさにはドキッとするし、アミの胸だってつい目線が向く。

 ただ自分が二次元派の自覚もあるので、何とも言えないのだ。

 アイドルもののアニメは楽しめるのに、リアルのアイドルを見ても楽しめないのは何故なのか。

 

「騎志。奏太をこのままにしてたらやばい」

「別に趣味嗜好はそれぞれだと思うよ?」

 

 ナイトは俺の肩を軽く叩きながら、フォローするように言う。

 

「とはいえ、猥談に入りづらくなるのは確かだ」

 

 ナイトは腕を組んで考え込む。それから名案を思いついたかのように手を叩いた。

 

「よし、今度みんなで鑑賞会でもしようか」

「おっ、いいねぇ」

「いや、それはちょっと」

 

 俺は慌てて手を振った。普通に友達とそういうのを見るの嫌じゃないか?

 

「小説の糧になるんだろ?」

「お前、それ言えば俺が動くと思ってるだろ。もちろん、行くぞ」

「動くのか……」

 

 考えてみれば、一周目の俺はこういう友人同士の何気ない会話すら経験できていなかった。猥談も、バカなやり取りも、全部他人事のように過ごしていた気がする。

 苦手だと言い訳する前に、やってみる。考より行だ。

 

「焦らなくてもいいけどね。こういう話題も、気楽にできるようになったらまた違う世界が見えるかもしれないって話でさ」

「焦ってるつもりはないんだけどな」

 

 この下ネタや猥談への忌避感。乗り越えておけば、変なところで挙動不審になったりもしないだろう。

 気は進まないが、これも小説の糧になる。そう思って頑張ろう。

 

 俺はため息をつきながら、更衣室のロッカーを閉めた。

 

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