疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
俺たちは買い出しのために近くのコンビニへ向かうことになった。
コテージを出ると、夜風が心地よく肌を撫でた。
昼間の熱気の余韻が辺りを包んでいる。
「うぅ……ポーカーは難しいです」
アミが肩を落としながらぼやく。その隣で、同じく敗者の喜屋武がため息をついた。
「わんも、なんでもかんでも顔に出ちまうんよねー」
「二人も大概正直な性格してるもんな」
俺は苦笑しながら二人を宥める。
「にしても、夜の海辺って雰囲気あるよな」
ふと視線を横にやると、道の向こうには波の音がかすかに聞こえてくる。昼間の賑やかな海とは違い、夜の海はどこか静かで幻想的な雰囲気があった。
「はい……なんか、しんみりしますね……」
アミも同じことを感じたのか、夜空を見上げながら呟いた。星が広がる空は、都心ではなかなか見られない美しさだった。
「そういえば、何買うば?」
喜屋武が思い出したように尋ねる。俺はポケットからメモを取り出して確認した。
「えーっと、朝ごはん用のパンとか、飲み物、あとお菓子も適当に買ってこいってさ」
「適当にって、どのくらい買えばいいんでしょう?」
「ヨシノリが言ってたから、まあ……多めだろうな」
三人で顔を見合わせて苦笑する。ヨシノリの〝適当に〟だ。あの食欲魔神に見合う量となれば多いに越したことはないだろう。
「そうだ。軽音部って今どんな状況なんだ」
歩きながらふと思い出し、俺はアミと喜屋武に尋ねた。
「部内でも何個かバンドはできてますけど、私とキャンちゃん以外はメンバーが固まってる感じですね」
「アフロンは後から入ったからさ、やっぱり組みづらいわけよー」
「元々キャンちゃんと組んでたドラムの子が戻ってきてくれればいいんですけどね」
むむ、青春の予感。
「なんかあったのか?」
「実家の手伝いが忙しいらしくて休部しているんです」
「まあ、一時的なモンらしいさー」
なんか思ったより問題なさそうだった。まあ、音楽バンドらしい脱退からの復帰イベントはなかなか起きないか。
「じゃあ、今は二人で練習してるって感じか」
「ギターとベースでも演奏はできますからね」
「そんでアフロンは作曲もやってくれとーんやっさ!」
「え?」
喜屋武の言葉に、アミは少し照れくさそうに笑う。
「はい。もともとピアノを習っていたのですが、お父さんが作曲家の影響もあって……最近はお父さんに手伝ってもらいながら、自分で曲を作ったりしているんです」
「おお、マジか!」
アミは俺の未来の推しであるバーチャルシンガーAMUREだ。その彼女がオリジナル曲を手がけ始めていると聞いてテンションが上がらないわけがなかった。
「早く曲が聞いてみたいな。絶対作業用BGMにするし!」
なんなら一周目では既に作業用BGMだった。
AMURE初のオリジナル曲の青春エピローグとか、鬼リピしてたし。
「そ、そんなに大したことじゃないですけど……」
アミは頬を染めながら謙遜するが、その表情はどこか嬉しそうだった。
「バンド活動は動画でも触れてるのか?」
「はい。キャンちゃんにもたまに出演してもらってます」
アミは夜空を見上げながら、遠くを見つめるように呟いた。その横顔には、静かな決意のようなものが滲んでいる。
「動画の伸び具合はどうなんだ?」
ふと、気になっていたことをアミへ問いかける。彼女は少し考え込むように指を顎に当てた。
「えっと……最近は再生数も増えてきて、コメントもたくさんいただけるようになりました」
「それは、すごいな……」
一ヶ月半くらいで、もうそこまで伸びているのは素直に感心してしまう。
アミは未来の推しであるバーチャルシンガーAMUREだ。その彼女の成長をこうして間近で見られるのは、なんとも感慨深いものがった。
「ちょっと見てみるか」
「あっ、ちょっと動画は――」
俺がスマホを開くと、何故かアミが焦ったような声を出す。
「別に恥ずかしがることじゃないだろ」
画面に映し出されたのは、ギターを抱えたアミ。演奏自体は素晴らしく、確かな技術と情熱が伝わってくる。
伝わってくるの、だが……。
「……気のせいか。服の露出度が上がっている気がするんだが」
「き、気のせいですよー」
いや、絶対に気のせいじゃない。首元はゆるく開いていて、動くたびに肩がちらちらと見える。しかも、ギターを抱える仕草がやたらと強調されているせいで、自然と胸がぐにゅりと形を変える様子がよく見える。
「なんか胸をギターに乗せる仕草を強調してないか?」
「ま、まさかー。私にだって恥じらいはありますよ!」
アミの目は泳ぎまくっていた。こいつ、わざとやってるな……。
動画サムネをざっと見ていくと、〝ガールズバンドのメンバーと一緒に演奏!〟という文字が。
そこに映っていたのは小さなマスクで、できるだけ顔がわかるようにして出演していた喜屋武だった。
ちなみに、アミはドミノマスクで顔の上半分だけを隠している。そのせいかいかがわしさは増しているように思えた。
「おい、喜屋武まで日焼け跡が見えるような服着て出演してるんだが」
「な、なんのことさー」
これはマズい気がする。嫌な予感がしつつも、動画のコメント欄を開いてみる。
[おっぱい上手ですね。間違えましたギター大きいですね!]
[すげぇ! おっぱいがギター弾いて歌ってる!]
[色白の肌と日焼け跡のコントラストが素晴らしい]
[感動して白い涙が止まらない]
「コメ欄が末期じゃねぇか!」
「ごめんなさい。ごめんなさい! 大勢の人に褒められて気持ちよくなっちゃいました!」
アミが涙目で両手を合わせてくるが、そういう問題じゃない。
「演奏の凄さが霞んでるだろ、これ」
もちろん、演奏の凄さに注目している人もいて、ネットでは〝高校生とは思えないくらい演奏がうまいのに、演奏が耳に入ってこないユーチューバー〟として話題になっている。
ある意味、話題性はあるからマーケティングに成功はしている、のか?
「いやいやいや」
何だろう。やっぱり薦めた張本人としては責任を感じずにはいられない。
承認欲求は過ぎれば身を滅ぼす。
俺もその傾向はあるから明日は我が身と思って注意しなくてはいけない。
「まあ、幸い露骨にエロ売りしてるわけじゃないからな。アミの性格ならギリギリ天然で誤魔化せるラインだろ」
「そ、そうでしょうか?」
「次の動画はちゃんと服を着るんだぞ」
「べ、別に服は着ているんですが……わかりました」
アミは顔を引き攣らせながら俺の言葉に頷いた。
未来の推しが変な方向に進まないように、今のうちに軌道修正しておかないとな……。