疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第87話 田中家唯一の料理上手

 朝、目を覚ますと、コテージの中にはふんわりとした香ばしい匂いが漂っていた。

 まだ寝ぼけ眼のまま、リビングへ向かうと、そこにはエプロン姿の愛夏がいた。

 

「だいぶ豪華だな……」

 

 すでに食卓には、トースト、ベーコンエッグ、サラダ、そして温かいスープが並んでいた。

 全国展開しているホテルのビュッフェかよ。思わず突っ込みたくなるレベルの朝食メニューである。

 愛夏がここまで料理上手になった原因は、主に俺と両親のせいだ。

 母さんはメシマズの極み、父さんは食事をただの栄養補給と考えている。俺は言わずもがな。

 そんな田中家の中でも、食事に対する執着があったのは愛夏だけだった。

 

「愛夏ちゃん、料理上手なんだね」

 

 ナイトがキッチンの近くでその様子を見ながら微笑むと、愛夏は少しだけ照れくさそうに目を逸らした。

 

「べ、別に普通です。うちではよく作ってますし……」

「いや、手際も良かったし、愛夏ちゃんは良いお嫁さんになると思うよ」

「そ、そうですか?」

 

 愛夏が髪を耳にかけながら、ちらりとナイトを見る。そのしぐさには明らかに意識している様子が見て取れた。

 それを見逃さなかったヨシノリがニヤリとしながら俺の隣に座った。

 

「なんかあの二人、いい感じじゃない?」

「元々相性がいいんだろうな。愛夏は面食いだし、ナイトは普段から面倒な女子たちのせいで辟易してるから、ああいう直球な性格の愛夏が新鮮なんだろ」

 

 ナイトと愛夏の間には穏やかな空気が流れている。愛夏はちらちらとナイトを見ているが、ナイトは愛夏の作った料理に夢中になっていた。

 

「それより温かい飯食おうぜ。せっかく作ってもらったんだし」

 

 全員が席についた。トーストをちぎりながら、スープを口に運ぶ。

 

「うまいな」

「当然でしょ」

 

 そっけない返事だったが、どこか嬉しそうな表情をしていた。

 湯気の立ち上るスープの香り、焼きたてのベーコンの塩気。どれも悪くはない。

 食事を進めながら、今日の予定について話し合いが始まる。

 

「さて、今日はどうするかだ」

 

 ゴワスが口の端にトーストをくわえながら言う。

 すると、アミが少し困ったように呟いた。

 

「うーん……ちょっと、昨日遊びすぎて疲れが残っているかもしれません」

「確かに……昨日は海ではしゃぎすぎた」

 

 ゴワスが頷く。体力バカの彼の顔にも、どこか疲れが見えるのだから珍しい。

 

「わんも今日は泳ぐ気分じゃないさー」

 

 クマを浮かべた喜屋武も、珍しくテンションが低い。いつも明るい彼女が弱音を吐くということは、相当な疲労が蓄積しているのだろう。

 

「せっかくだから、今日はもうちょいゆったりできるところがいいな」

 

 ナイトが、コーヒーを口に含みながらぽつりと呟いた。

 

「じゃあ、シーワールドに行かないかい?」

 

 その言葉に反応したのはアミだった。

 

「わぁ! 水族館、大好きです!」

 

 ぱっと顔を輝かせるアミ。彼女のリアクションはいつも素直で見ていて気持ちがいい。

 

「いいですね、それ。シャチのショーもあるし、のんびり見て回れますね!」

 

 愛夏も賛成し、次々と賛成の声が上がる。

 

「わんも行きたい! ベルーガ見れるとこでしょ?」

「うむ、よかろう。水中生物観察は我が研究対象でもある」

 

 そうして全会一致で、今日の行き先は水族館に決定した。

 

「よし、決まりだな」

 

 俺はコーヒーを一口飲みながら頷く。

 朝の柔らかな光が、テーブルの上の食器に反射してきらめいた。

 こうして、今日の計画が決まるのだった。

 

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