疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す   作:サニキ リオ

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第9話 幼馴染との登校イベント

 玄関を出ると、爽やかな春風が頬を撫でる。

 幼馴染と一緒に登校できるなんて夢のようだ。

 このワクワク感と湧き上がる優越感。この感覚を忘れずにいよう。小説の糧になる。

 

「それじゃ、由紀ちゃん、お兄ちゃん。私はこっちだから」

「おう」

「車に気をつけてね!」

 

 楽しげに中学へ向かう愛夏の背中を見送る。

 

「それじゃあ、俺たちも行くか」

「ちょっと待って」

 

 歩き出そうとした俺を呼び止めると、ヨシノリは俺の目の前に立った。

 

「ネクタイ曲がってるから」

「えっ、マジ?」

「じっとしてて」

 

 有無を言わさぬ口調で告げると、ヨシノリは俺のネクタイを直し始める。

 改めて至近距離で見てみると、身長差がよくわかる。

 小学生の頃はヨシノリのほうが背が高かったが、いつの間にか俺のほうが高くなっていた。

 

 それでも、女子にしてはかなり高いほうだろう。

 俺が一七三センチだから、ほぼ一七十くらいはあるだろう。

「これでよし……あ」

 ネクタイを直し終わったヨシノリが顔を上げると、目が合った。

 ヨシノリはそのまま固まって目を瞬かせる。

 

 至近距離で見ると、ヨシノリの整った顔立ちがよくわかる。

 長い睫と瞼の上に引かれたオレンジ色のアイシャドウ。切れ長の三白眼に、薄くリップの塗られた唇。顔立ちは美人よりだが、どこかあどけなさの残る顔立ちには可愛いという感想が先にくる。

 

「「…………」」

 

 そのまま俺たちは見つめ合ったまま言葉を失う。 

 

 やっばい、何これ! めっちゃドキドキする!

 ハッ、ときめいている場合じゃない!

 

「これが可愛い女子を至近距離で見たときの感情か。メモらねば!」

「あたしのときめきを返せ……!」

 

 なんか後ろでヨシノリがガックリと肩を落としていたが、必死にメモをしていた俺にはそれどころじゃなかった。

 

 それから、何故かぷんすかしながら足早に駅へ向かうヨシノリを追いかけ、電車に乗り込む。

 

「うわ、結構混んでるね」

「この時間の新宿線は混んでるもんな」

 

 俺たちの通うことになった慶明高校は、最寄り駅の大島から神保町まで乗り換えなしで行ける。

 

「それでも、乗り換えなしは楽だよな」

「まあね。そういえば、カナタは何で慶明受験したの?」

「神保町には本屋街があるからだ」

「でしょうね」

 

 タダで寄り道し放題なのは非常に助かる。その気になれば歩いて秋葉原にも行けるのでアクセス的には最強の立地である。

 

「そういうヨシノリはどうして慶明に行こうと思ったんだ?」

「あたしは中学の知り合いがいなそうなとこに行きたかったの」

「何でまた?」

 

 意外な理由に興味が沸く。

 というか、幼稚園から一緒の俺がいる時点で破綻していると思うんだけど。

 

「中学でもヨシノリ呼びが定着したからよ……」

「あれ、嫌だったのか」

「男子みたいなあだ名を気に入る理由はないっての」

 

 そういえば、こいつ小学校まではガキ大将の短パン小僧♀だったからヨシノリ呼びが定着したんだった。

 そのイメージを変えたいという気持ちはわからないでもない。

 

「じゃあ、佐藤って呼び直したほうが――」

「由紀」

「ん?」

 

 苗字呼びに直そうとした途端、ヨシノリは俺の言葉を遮ってきた。

 

「別に二人のときはヨシノリでいいけど、苗字呼びは嫌」

 

 何故かジト目で睨まれた。

 

「ああ、そうか。佐藤っていっぱいいそうだもんな。じゃあ、学校じゃ由紀で」

「それでよろしく」

 

 ……ううむ。平静を装ったが、女子を名前呼びするのは思いのほか緊張するものだ。

 また一つ勉強になった。

 

「そうだ、由紀」

「うん?」

「制服似合ってるぞ」

「ふふっ、カナタもカッコいいよ」

 

 春風に桜が舞う中、ヨシノリは嬉しそうに目を細めてはにかんだ。

 

 まったく、危うく惚れるところだったぜ。

 

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