疎遠になってた元ガキ大将のムチムチポニテ幼馴染との青春を高校生活から書き直す 作:サニキ リオ
バーベキューもそこそこに楽しんだ俺は、さっそく男子部屋に戻り、ポメラを開いて執筆活動に取り掛かる。
部屋の窓を開けると、潮風が静かに流れ込んできた。波の音が遠くから聞こえ、夏の夜特有の湿った空気が肌にまとわりつく。とはいえ、そんなことを気にしている余裕はない。
ここ最近は執筆時間があまり取れなかったからな。さすがに働いてもいないのに、一日五千文字はサボりすぎだ。こんなペースじゃ、いずれ腕が鈍る。それだけは絶対に避けなければならない。
もちろん、創作活動する上でインプットは重要だ。この青春の日々というインプットもまた、貴重な時間であることに間違いはない。ただ、その瞬間に生まれる熱意によるアウトプットもまた、同じかそれ以上に重要なのである。
実際、手癖で書いた勢い任せの〝ポニテ馴染〟は最終選考まで残ることができた。成功事例は模倣し、行動しながら改善を考える。俺が死ぬ気の執筆活動期間の五年で学んだことだ。
行より考。いやアミのオリ曲にならって〝行しながら考してこう〟といったところだろうか。
「やっぱりラキスケ要素は外せないな」
ラッキースケベ――直接的に言ってしまえば、エロは男性向けの小説において重要だ。
古今東西、エロは人の心繋いできた。
露骨にエロを全面的に押し出しているため表では有名になっていないが、売り上げはそこいらの作品など目じゃないほどに売れている作品などざらにある。
俺はキーボードに指を走らせながら、更衣室での出来事を思い返した。
ナイトとゴワスの言っていたことも、小説に置き換えて咀嚼すれば飲み込める話だ。
性癖を晒すことは、心の内を晒すのと同義。また一つ、小説の糧になった。
「ノーパン、美少女に揶揄われる、ぽっこりお腹……」
とりあえず、海でヨシノリに「えっち」と言われたときのやり取りで感じたドキドキ感を活かして〝オークは語らず、エルフを騙る〟に盛り込んでいこう。
エピソード的にはある程度親しくなったエルフ相手に起こるラッキースケベだ。オークの状態はできるだけラッキースケベを抜いた純愛感を出したいからな。
むしろ、エルフパートでのやり取りはルッキズムと性欲に塗れた感じを出すことによって、オークパートでの心が繋がっていく感じが際立つだろう。
「いや、下着だけが光って透けるのも捨てがたいな……」
そう考えながら、俺は再びキーボードに指を這わせる。活字が画面上に次々と打ち込まれ、頭の中の情景が形になっていく。登場人物が動き、喋り、自由に未来へと進んでいく。
エンディングはもう決めた。
最後はやっぱりヒロインの正体がエルフだったと明かして終わろう。それがいい。
見た目はきっかけに過ぎない。そして、その欲望も否定しないし、最後には手に入る。それでいいのだ。
ナイトと姫乃さん。俺とヨシノリ。
この二つの関係を見て気づけた。結局、人は見た目から好きになる。それは自然なことなのだ。
「はぁ……やっとペースが戻ってきた」
キリのいいところまで書くと、久しぶりの充実感が体に満ちる。人間関係も大事だけど、やっぱり俺にとって執筆は食事や呼吸みたいなものだ。やっていないと調子が出ない。
ふと、部屋の外から賑やかな声が聞こえた。バーベキューはまだ続いているらしい。ゴワスの豪快な笑い声と、愛夏の声がかすかに届く。
俺は視線を窓の外へ向けた。
こんなふうにみんなと旅行に来て、楽しい思い出を作って、それを小説の糧にする日が来るとは、一周目の俺には想像もできなかった。
いや、それをする努力を放棄していたのだ。
外の喧騒も作業用BGMとしては、流行りの曲を聞くのとはまた違った良さがあるな。
「ま、今はアウトプットの時間だ」
俺にとって、この瞬間もまた青春の一部なのだ。
再び指を動かす。ひたすらにキャラが歩む道を舗装し、導き続ける。
これは作家〝田中カナタ〟としての俺だけが味わえる最高の青春だ。