ほとんど自己満足ですが、よろしければお付き合いください。
春原のアイロンがけが終わった後、俺と春原はとりあえず登校することにした。一時間目に間に合うなんていつ以来だろうか。
「ふぁぁ……」
「どうした登校早々ナメクジみたいな顔をして」
「いやアンタが朝からたたき起してくれたからなんですけどねぇ!?」
俺が春原の部屋に入った時は熟睡していた。早く服を洗ってほしかったので、開いていた口に塩を大さじ一杯入れてみた。そしたら蒸せながら飛び起きたとさ。めでたし、めでたし。
「何もめでたくねえよ!」
「そう怒るなって」
「……ったく……。僕は寝るから、昼休みまで絶対に起こすなよ」
「逆だ、お前が何をされても絶対に起きるなよ」
「何する気だよ!? もう口に塩は絶対止めろよ!?」
何をしてやろうかと考えたほんの数秒の間で、春原は寝息を立て始めた。寝る速度は恐らく一生かけてもコイツに叶わないだろう。別に争う気もないが、なぜか負けた気になってしまった。
「……さて、どう時間をつぶすか」
いつもなら俺も同じく顔を埋めて寝ているところなのだが、今日はなぜか全く眠く無かった。昨日から今朝にかけて本当に色々ありすぎた。溜息をついたところで、ふと視線を感じた。
「……ん?」
教室を見回すと、同じクラスの奴と目があってしまう。
「……っ!」
そして、思い切り目をそらされる。いつも通りだ、と思われているのだろう。頭に包帯を巻いた状態で学校に来ているのだ。昨日は一体何をやらかしたんだんだ、と注目を浴びても仕方のない事だろう。
俺だって分かっている。進学校であるこの場所に、俺みたいな奴がいちゃいけないなんてことは。
「っ」
「んがっ!?」
考えると余計にこの場所が窮屈になってくる。これ以上居続けたって、良いことなんか何もない。幸せそうな顔で寝ている春原の椅子を小突いてから、俺は教室を後にした。
「あ、朋也。おはよう」
「……お、おはようございます、岡崎、君」
廊下に出て早々、委員長姉妹と鉢合わせてしまった。俺が一体何をしたというのだろうか、と柄にもなく天を恨んでしまう。藤林が頭の包帯を気にしているが、聞いてくるわけではなかった。
「春原なら、教室に居るぞ」
「あ、アンタ挨拶くらい返しなさいよ……。アイツはもういいの。昨日の内に四個くらいタンコブ作らせたから」
「お姉ちゃん、やっぱりちょっとやりすぎだったんじゃ……」
藤林が心配しているみたいだが、今朝のあいつを見ていると全くそんな事は無さそうだった。
「あいつ、何をしたんだ?」
「あのバカ、椋に変な宗教みたいな曲を聴かせてきたのよ! 本当に危ない奴!」
以前に駄曲を教えてあげる、と言っていたのを本当に実行してしまったらしい。それは殴られても当然だと思った。
「あ、あの……別に、悪くはない曲だと、思ったんだけど……その……趣味に合わなかったというか……」
「椋、そういうのはハッキリと『気持ち悪かったから聞きたくもなかったのに無理やり聞かされた』って言っていいのよ」
「そ、そんなんじゃ……うぅ……」
実際そうだったのだろう。藤林はどうも気を使いすぎるタイプのようだ。ちょっと乱暴だが、これは杏の意見に賛同せざるを得ない。
「ていうか岡崎、またサボるわけ?」
「っ!」
「いや。他の教室の授業を見学して来る」
「知ってる朋也? 授業中に教室の外にいることをサボるっていうのよ?」
「そうなのか、知らなかった」
「……あんたも春原と同じお仕置きを受けたいの?」
「お、お姉ちゃんっ!」
ただでさえ体がボロボロなのに、杏のげんこつまで受けたら致命傷になりそうだ。早々に二人から離れることにした。二人は俺を追うつもりは無いようだった。
「全く……朋也! サボってばっかりいないでちゃんと出ること! 椋を困らせたら承知しないからね!?」
「わ、私は大丈夫だから……」
杏の忠告を背中で聞きながら俺は教室から離れた。藤林は別に俺の件が無くてもいつも困っているように見える。その一言が頭に浮かんだが、頭の中にしまっておくことにした。
今回はネタをちょっと入れましたが大きくは変わっていないはず。