岡崎がワグナリアを出た日の放課後も、ワグナリアは通常営業中だった。岡崎の行動がいつもと違ったように、こちらもいつもと違う展開が起こっていた。
「……はぁー」
「ぽぷらちゃ~ん?あっちのお皿下げてもらってもいいかしら~?」
「あ、はーい……」
元気がトレードマークの種島が、明らかに沈んでいた。彼女の元気の無さは店全体に伝染していて、同僚の伊波と小鳥遊も種島の様子を見て不安になっていた。
「種島さん……」
「今日の先輩、元気がないですね」
「っひぃ!」
バキィッ!
「んぐっ!?」
恐ろしく早い右拳、小鳥遊でなければ吹っ飛んでいた。
「ご、ごめんなさい! 急に話しかけてくるからぁ……」
「ま、まぁ今のは僕にも非がありますし。よしとしましょう」
「ホッ」
「それにしても……」
「……はぁ」
種島はずっと落ち込んだままだ。伊波が心配そうに見ている中、小鳥遊は――。
「気落ちしている先輩、いつもより小さくなって更に可愛いなぁ……!」
「ってそこじゃないでしょ!?」
小鳥遊の中で種島への心配は勿論ある。しかしそれはそれとして可愛いもの好きが発動していたのである。
「種島さん、いつも元気なのに……心配だなぁ」
「そうですね。昨日はいつも通りでしたよね。昨日の今日で一体何が……?」
「そこなんだよね。さっき、更衣室で私が話しかけた時も何か上の空だったし……」
え、と小鳥遊が伊波の顔を見る。
「つまり、今日のアルバイトが始まる前には、先輩は既にあのテンションだったと」
「あ、うん。確かに、そうなるね」
「ちょっと伊波さん、その時点で気づいてなかったんですか?」
「うっ。……今日は男の人来ませんように、ってお祈りしてたから」
朝二人があった時、種島が空返事だった中伊波も同様に上の空だったのである。それを聞いた小鳥遊は徐にため息をついた。
「全く。鈍いというか、なんというか……。後それ叶ったら売り上げ半減しちゃうので駄目です」
「う、うるさいっ! 小鳥遊くんに鈍いとか言われたくないもん!」
「失礼な! 僕は最初から先輩が変だなって可愛いって気付いてましたし!」
「そ、そこじゃないよ!……もういい!」
「あ、ちょっと……! 何なんですか一体……」
伊波は頬を膨らませながら仕事に戻っていった。結局何も手がかりが無い事にモヤモヤが残る小鳥遊に、いつの間にか背後で仁王立ちをしていた彼女が突然大声をあげた。
「はっはっはー! ここで山田の出番です!」
「おわぁっ!?」
今日も研修中のバッジが光っている山田だが、本日不調の種島よりも割った皿の枚数は上回っていた。先程佐藤に絞られた直後なのだが全く引きずっていない様子だ。
「おはようございます、小鳥遊さん。私も長いながぁーい眠りから覚めましたよ。だからあまり元気ないです。心配してください」
「理由が意味わからん。大体、休憩から上がっただけろ」
「寝起きって、元気なくなるじゃないですか?」
「それがどうした、さっさと仕事に戻れ」
「なっ!? 山田は心配するに値しないということですか!? 侵害です!」
「そういう意味でもないっ! 全く、今先輩が大変な状況なんだからお前に構ってる暇は……」
無いんだよ、と言いきる直前に山田はちぇー、とどこかわざとらしい態度を見せる。これ以上は時間の無駄だと思いその場を離れる小鳥遊だったのだが。
「もし山田の心配をしてくれたら、小鳥遊さんにちょっと耳よりな種島さん情報を提供しようかなー、と思いましたのにー」
「先輩の、耳よりな情報?」
意味深な山田の発言によって、足を止めざるを得なかった。
大きな変更点は無い、はずです。
文字数の関係で変な切りどころになってしまいました。