それにしても漫画原作のWorking!!に違和感なく地の文入れるの至難すぎる……。
「山田。その情報ってまさか、先輩が今あんなに落ち込んでいる事と関係してるのか?」
「ふっふっふっ、その通りですよ小鳥遊さん」
「あんなにも、佐藤さんに髪をいじられてても全く抵抗していない、……というか気づいてもいない、されるがままな先輩かわいい!」
「その通りですよ小鳥遊さん! 種島さん可愛いですね!」
彼女たちの視線の先では、佐藤が無表情のまま髪の毛で「スカイツリー」を完成させようとしていた。すでに展望台らしき部分が整い、さらにその横に「ヘリコプター」を模した細工まで作り出そうとしている。だが、種島本人はまったく気づいていない。顔には無関心と憂いの入り混じった空気が漂っている。
「くっ、先輩に一体何があったんだ!?」
「真相は山田の中に有り、ですよ」
山田はどこか悪戯っぽい笑みを浮かべると、自信満々に言い放った。背後から聞こえる「二人ともお仕事してね~」という八千代の声は、二人には届いていない。
「でも山田を構ってくれない小鳥遊さんには教えてあげません! それではっ!」
勝ち誇った表情のまま、山田はひらりと身を翻して逃げ出そうとした。
「待て」
「ぐぇっ」
小鳥遊は即座に腕を伸ばし、逃げる山田の服の襟を掴んで引き戻す。苦しげな声を上げて、山田はその場でストップした。
「そこまで言われたら知らないわけにはいかないだろ」
「……ひゅ~♪」
「できていない口笛はやめろ」
逃げるのを観念した山田はそれなら、とある提案をした。
「小鳥遊さん、等価交換です。私の心配をするのです、甘やかしてください!」
「まだそれかっ!」
「今はまさに情報化社会なのです! 情報にもお金や対価を設ける時代ですっ!」
得意げに胸を張る山田に、小鳥遊は頭を抱えた。種島のことは気になる、しかし山田を甘やかすのも癪に障る。そんな葛藤に悩んでいると――。
「なになにー? 何か面白そうな話してるねー」
「あ、お兄さん」
ふわりとした空気と共に、間の抜けた声が割り込んできた。現れたのは、何かとトラブルの火種に首を突っ込みたがる相馬だった。
「相馬さん、山田が何か知っているみたいなんですが中々口を割らなくて」
「山田さん、それは本当?」
「はい。でも、小鳥遊さんは私の逆鱗に触れたのです。うぅっ……」
山田は胸を張りながら、どこか芝居がかった口調で言う。あからさまなウソ泣きに相馬はなぜかうなずいている。
「あちゃー。それはダメだよ小鳥遊くーん。女の子には優しくしてあげないとー」
「お、お兄さん……!」
「相馬さん!? 山田の肩を持つんですか!?」
小鳥遊の抗議にも相馬はどこ吹く風。彼は基本的に、面白くなりそうな方に加担するのだ。
「ふふーん、心配してくれるお兄さんが味方なので、今の山田は無敵――」
「ところで山田さん、ちょーっと話があるんだけど……」
山田の言葉を遮り、相馬はやや影を帯びた笑みで山田に語り掛けた。
「はいっ! なんです――」
「――っ」
「はぅっ!?」
相馬からの謎のささやきを聞いた山田は、緊張に肩を震わせてぴしっと固まってしまった。
「お、教えますから! それだけは内緒にしてください!」
山田は泣きそうな声で、慌てて頭を下げる。そんな山田を前にしても相馬は全く動じない。
「えー? 俺は何も言おうとなんてしないよー? だけどそうだねー、種島さんに何があったのか教えてくれたら黙っていてあげようかなー?」
「はいっ、はいっ! 教えます! 教えさせてくださいっ!」
山田は一転して素直になり、頭を上下に振りまくっていた。
(相馬さん……)
小鳥遊はため息をつく。完全に脅しであるこのやり方は、相馬の常套手段である。すっかり縮こまった山田を見た小鳥遊は、内心で今回は相馬さんが味方で良かった、と安堵した。
そして山田は二人に事情を説明した。ワグナリア近くの公園で変な騒音男に絡まれたこと、それを岡崎という少年が助けてくれたこと、そしてそんな岡崎にちゃんとお礼が言えなかったのを気にしていること。すべてを聞いた二人は成程と納得した。
「その岡崎くん、って人にちゃんとお礼を言えなかったからあんなに落ち込んでる……ってことなんだねー?」
「は、はい。起きてからずっとあの調子で……。一旦家に帰る時もふらふらで、山田心配です」
「先輩、落ち込む理由も子供らしくてかわいいなぁ!」
小鳥遊は今回もブレなかった。
「それなら、改めてお礼を言えるような態勢を整えてあげれば良いのかな?」
「できるんですか!」
(さては相馬さん、知ってるのに敢えて山田に言わせたな)
山田が目を輝かせて相馬に詰め寄る。二人のやや後ろから小鳥遊は相馬を軽蔑の目で見つめている。
「一応、この街のことは色々知ってるからねー。ただ、この街の人じゃなかった時はもうどうしようもないんだけど……」
「でも相馬さん、探すと言っても情報が足りなすぎると思うんですが……。うちの従業員には闇雲に探す時間なんてとても……」
「まぁまぁ小鳥遊くん、こんなおもし……可哀想なこと、協力してあげないと」
「おい、本音漏れてるぞ」
サラッと言う相馬に、思わずため口でツッコみを入れてしまう小鳥遊だった。
「ちなみに山田さん、岡崎くんの事高校生だったって言ってたけど、何を根拠にそう思ったのー?」
「あっそういえば。岡崎さんは黄色っぽい制服着てました! ワグナリナのエプロンみたいな色でした!」
相馬の質問で、山田はハッと記憶を掘り起こした。黄色い制服となればそれなりに絞れそうではあるが、まだ特定とはいかないだろう。
「そうは言われても……学校の制服なんてわからないしなぁー」
「そうだねぇ。一筋縄では……」
相馬と小鳥遊が顔を見合わせ、困ったように首を傾げる。
「……あ」
その時、相馬の目が意味ありげに細められた。彼の中で、何かの糸が繋がったようだ。
「山田さん、一ついいかな~?」
「何でしょう? 山田は全て話したので、あの秘密はバラさないでくれますよね……?」
「はは、安心してよー。僕が大切な同僚のことを脅すなんてありえないじゃないかー」
怯えながらも返事をする山田に相馬は飄々と言う。けれど、相馬の口元は笑っていたが、目は笑っていない。
「は、はい……」
(いや、最初から最後まで全部脅しだっただろ……)
山田はあまり信じられないという目で、とりあえず返事をする。小鳥遊は冷静に心の中でツッコんでいた。
「と、ところで、何でしょうか?」
「あ、そうだったそうだった。ちょっと聞きたいんだけど」
相馬は芝居じみた動きで手をポンと打つと、にこにことした表情でこう尋ねた。
「ほら、山田さんの言う黄色い制服って……あれのことじゃないかな?」
「え? ……あっ!」
山田の顔に、再び困惑の色が浮かんだ。どうやら相馬の勘は当たっていたらしい。
かなり分量が膨らんでしまいました。
大きな変更点
・佐藤さんが種島の髪を観光地にしている
・心情描写をかなり多めに入れてみた