けど完結までどうにかやり遂げたい。
「……はぁ」
小鳥遊は重いため息をつきながら、肩を落としてバックヤードへ戻ってきた。足取りは明らかに疲れきっており、心なしか背中も丸まっている。
「お疲れ様ー小鳥遊くん」
「どうでしたか、どうでしたかっ?」
相馬がいつもの軽い調子で声をかける。山田は目を輝かせて、小鳥遊の顔を覗き込むように前のめりになる。
「お客様にいきなりこんなこと聞くなんて……やたらと背中に冷や汗をかきましたよ…………」
小鳥遊は疲れ切った声で言いながら、額に手をやる。まるで全身のエネルギーを使い果たしたかのようだ。
「それは山田にジャンケンで負けた小鳥遊さんがいけないのです。まぁ山田はジャンケンの申し子と呼ばれるくらいの腕前があるので誰にも負けないのですが!」
「いや全然初耳だぞ」
自信満々に胸を張って得意げな表情を浮かべる山田。
「んー、僕が行っても良かったのにねー。二人が『なぜか』僕はジャンケン参加させてくれないからさー」
相馬がキラキラとした笑顔で言うと、小鳥遊と山田は同時に彼を冷たい目で見つめた。その視線に、相馬はまるで気づいていないかのように笑みを浮かべ続けている。
「それはそうとして、どうだったのかな?情報は聞き出せた?」
「えぇ。あの制服は坂を登ったところにある光坂高校の制服らしいです。でも、『岡崎』という名前には聞き覚えは無いと」
「そっかー。喧嘩に参戦する位だから不良だと思ったんだけどねぇ……。不良は学校でも有名になるもんだからねー」
(この人は相手が不良であろうとなんだろうと強そうだけどな……)
相馬は腕を組んでうーんと唸るように考えるが、どこかその言葉には悪ふざけの香りが混じっている。小鳥遊は内心でそう思いながら、相馬の涼しい顔に少しだけ引いていた。
「光坂高校ですか……」
「どうした山田?」
山田がぽつりと呟く。その様子を不審に思った小鳥遊が問いかける。
「いえ、何もないです。でも、近くでよかったですね」
「そうだね。見つけるのもそこまで難しそうではないかもね」
「でもあのお客様は女性でしたし、もしかしたら違う学校の制服かも……」
「そんなネガティブな考えはダメだよー小鳥遊くん。種島さんの為なんだから、がんばらなくっちゃー」
「そうですよ!大切などうりょーの為ですよ!小鳥遊さん!」
山田も負けじと声を張った。真剣な眼差しがその顔に浮かんでいる。
「相馬さんはともかくとして、山田、お前はそんなにやる気なんだ?」
「…………山田が起こせなかったせいで、種島さんが元気ないのは、山田、嫌です。だから、お願いします。小鳥遊さん、手伝ってください」
その言葉はどこか幼く、けれどまっすぐな誠意がこもっていた。小鳥遊は黙ったまま視線を下げる。山田の真剣な目がまっすぐに彼を見つめていた。相馬はそんな二人を交互に見つめながら、にこにこと笑っていた。
ついに観念したように小鳥遊はため息をついた。
「……そうですね、それじゃあできるだけのことはしてみますか」
「……っ!」
「そうこなくっちゃね、小鳥遊くん」
山田の顔がぱっと明るくなり、瞳が輝いた。相馬も嬉しそうに声を上げる。
「あくまで、先輩の為ですし、時間がある時だけですよ?」
「ありがとうございます小鳥遊さん! お礼に今度ジャンケンで勝たせてあげますね!」
「それはいらん」
「ひどいっ!」
山田は思っていたよりも本気で種島の心配をしている。それを知った小鳥遊は、動かざるを得ないかと仕方なく腰を上げたのだった。
「いや相馬さんも手伝ってくださいよ」
「えー?」
ちょいネタバレになっちゃうのですが、山田が光坂高校と聞いて引っかかっているのがなぜかわからないままなんですよね。
頑張って汲み取らねば。
大きな変更点は無いはず。