無暗に人を傷つける人はいない……はず。
ただ、改めて普通の人がいないなとは思いました。
バイトを終えた種島は、暗くなった道を一人で歩いていた。
「はぁ……飽きちゃったーって、ひどいなぁ杏子さんってばー」
そう少し悲しげにぼやく。白藤の爆弾発言によってひどい空気になった後、皆不満を抱きつつ退勤した。種島もやや引きずっていたのだが、でもと気持ちを切り替える。
「新しい人が来るのって、ワクワクするなぁ。小鳥遊くんや葵ちゃんみたいな良い子たちが来てくれると良いけど……あれ、もしかしてまた私が探すことになったりするのかな……?」
以前にも人員不足の問題があった際、種島が小鳥遊を勧誘する事で解決した。また自分が頑張るしかないのでは、と不安になったところで、何やら爆音で流れる趣味の悪い曲に思考が遮られた。
「――!」
「わ、何!? ……向こう側から、音と声がする?」
「――! ――ッ!」
「……時間は、まだだいじょぶ。行ってみよっ!」
騒音の元がする公園に入っていった種島は、ラジカセで音楽を大音量でズンズンと流しながらノッていた。妙に体格の良いガテン系の男の様子から、周囲の迷惑など考えているようには見えない。
「ひゃはは! アイツらまだか! この新型ラジオで早く騒ぎてぇのによぉ!」
「へ、変な人だ……」
公園を見渡してみると周囲に人気は無く、男と種島しかいないようだった。種島がどうしたものかと様子を見ている間にも、男のテンションは更に増していく。
「まだまだ音が小せぇなぁ? ひゃっはぁ!」
「ま、また音量を上げてる……。ちゅ、注意しにいかなきゃ、だよね? 近所迷惑だし、きっと言えばわかってくれる……よね?」
種島は一言かけるために男へと近づく事にした。大音量を流している男に声を届かせるためには、もう少し近づかないといけない。耳を劈く轟音に眉をしかめながらも、ゆっくりと近づいてみる。
しかし、話しかけられる距離まで行く直前に、事は起きてしまった。
バキッ。ザザザ……ザザ……ザ……ザザザザー……。
「あっ! ……え?」
種島の履いていた靴が少し硬い革靴だったため、それが災いして男のラジオを蹴ってしまったのだ。やや雑に扱われていたラジオはしばらく雑音を出した後、動かなくなってしまった。
「あぁ"!?」
「……っ!」
「何だ!? 誰だテメェ! ガキィ!」
「え、えと、ご、ごめんなさい!」
いい気分に水を差された男は、種島にズンズンと近寄り思い切りキレてきた。男のガラの悪さと図体の大きさに種島は思い切り怯んでしまう。
「謝るだけで済むわけねぇだろ! ……あぁああ! 壊れてやがる! 買ったばかりなんだぞ、テメェどうしてくれんだよ!?」
「え、ええと……」
「黙ってんじゃねぇぞごらぁ!」
「……う、うぁ」
恐怖で竦んでしまって声が出ない。何も言えない種島に男はとうとう痺れを切らし、握り拳を作ってさらに近づく。そして男は言った。
「とりあえず、一発ぶん殴ってから、決めてやるよ!」
「……!(や、やだよ! だ、誰か……)」
やっぱり関わるべきじゃなかった、と後悔してももう遅かった。助けを呼ぼうにも声にならない。種島は怖さのあまりしゃがみ込んで目を瞑る。これから来るであろう痛みを覚悟する。
「……っと!」
「っがぁ!」
しかし、痛みは来ず代わりにまた知らない男の声が聞こえてきた。鈍い音と男が殴られたような声、恐る恐る目を開けると、自分と男の間に誰かの影があることに気が付いた。
「……てぇなぁ! 誰だオラ!」
「さぁな」
「……へ。だ、誰……?」
自分と違う高校の制服、青い髪の青年が種島を背に拳を構えていた。顔は見えないけれど、知らない人なのは間違いない。とにかく種島は、自分が彼に助けられたという事だけを理解した。
話によって視点がバラついてしまうのはご容赦くださいませ。
大きな変更点
・話の順番を時系列通りに変更