やってきましたカジノ! 豪華クルーズ船ゴールデンフリース号は、ミレニアムではない他の学園所有の船である。
このカジノ船でSランクを獲得すれば、ミレニアムから自由になれる。私は、コユキをそうそそのかして、彼女とカジノ船に来ている。
「コユキぃ。私、Sランク、当たっちゃったぁ」
「え!? 嘘! ちょうだい?」
「んー。ダメかな。これは私が使うから」
この船の中だけの限定的な権力だけれども、使い道は有る。例えば悪い大人とのコネクションを構築するための手数料とか。
コユキは今日もSランクを獲得すべく頑張っていた。私はちょっと暗躍している。マダムとは、良い取引が出来た。私はアリスの中にいる王女を。マダムは、ヘイロー破壊爆弾を譲ってくれるという。
ヘイロー破壊爆弾はチョーカーにしてもらった。送られてきたそれに似た、
「プレゼント? チョーカーか。なんかゴツいけど、まぁ貰っとくよ」
「コユキ、このチョーカーはヘイローを破壊する爆弾なんだ」
「んん? ぴぇぇぇ!? えええ!? これ爆弾なの!? 私死んじゃうのぉぉ!?」
「多分??」
「多分ってなに!!??」
「これが本物かは分からない。偽物かもしれないし、コユキのヘイローが破壊されるかも不明」
「……なんだぁ。良かったぁ。って! なるかぁ! なんで私の首に爆弾を巻いたのぉぉ!!」
「言う事を聞くかなぁって思って」
「聞くよ! だからこれ外してぇ!」
「全部終わったら外れるよ」
コユキは私の友達では有るし、便利な能力を持っている。しかし気まぐれなのだ。鎖が必要だ。ヘイロー破壊爆弾というのは、真っ赤な嘘だけれど、コユキは抜けているので簡単に騙された。
私の神秘が籠もった外れない呪いのチョーカーだ。殺傷能力は無い。友達に爆弾を巻き付けたくなかったし。
「げげっ! あれアスナ先輩じゃん!?」
「あ、本当だ。案外早かったね」
C&Cが、コユキと私を追ってきたらしい。ゲーム開発部も一緒だ。大人しく捕まるとしよう。
「爆弾のこと喋ったら爆発させるよ。黙ってて」
私が脅すとコユキは、こくこくと頷いていた。かわいいね。私の目的である悪い大人との取引は完了した。捕まっても問題ない。
「コユキ、チケットあげる。ほれ」
「あっ、風が。あーーー。海にぃぃぃ」
泳げないはずのコユキは、チケットを追って海にダイブしていった。
「ミテル! 今まで何をしてたの! 心配したんだよ!」
「んー? バカンス? それよりカナヅチのコユキが海に落ちた。このままだと死んじゃう」
「た、大変だ。助けなきゃぁ!」
モモイがバタバタしている間にC&Cがコユキを救助していた。流石C&Cだ。ゲーム開発部とは大違いである。
「ミテル、私たち友達だよね!? なんで勝手に居なくなったの?」
「バカンスに行くって言ったじゃん?」
「言ってません! アリスは聞いて居ません」
「ごめん。言ってなかったかも。でも、みんなのためだから」
「友達なら、もっと話してよね。秘密主義も大概にしてよね!」
「ごめんって。もうしないから」
友達に、怒られるのはメンタルに来るなぁ。しんどいぜ。
ゲーム開発部にこってり絞られてからユウカと先生が、私を叱りにきた。先生助けて! 集団ストーカーに襲われてます!
「先生、遅かったですね。みんなからすごく怒られましたよ。先生が助けてくれないからです」
「"みんなが、ミテルを心配してたんだよ"」
「先生も心配してくれてました?」
「"もちろん。突然いなくなって本当に心配した"」
「先生は来るのが遅いんです。大人で先生なんだから、あの子を救えたんじゃないんですか?」
「"…………あの子?"」
「そうですよ。こんな残滓じゃなくて、先生が救ってあげれば良かったんですよ」
「"ごめん。何のことだか分からないや"」
「そのうち分かりますよ」
先生にストレスをぶつけたらスッキリした。八つ当たりだ。
セミナー内での私の処遇が決まる日が近付いてきた。セミナーを追放されるかもしれない。調月リオ会長の決定次第である。
「リオ会長、エリドゥの建設は順調ですか?」
「……何のことだか分からないわ」
面談で、私がいきなり話を切り出しても、リオ会長は表情を崩さなかった。
「コユキに調べて貰ったんです。会長の横領と、資材の動きを」
「そう。何の話だか分からないけれど聞いてあげる」
「合理的じゃないですね。私は、事実を言っているだけですよ」
「事実は、人によって異なるものなの。あなたの主観が混じった時点で、私の認識している事実とは異なるわ。どうぞ、話を続けて頂戴」
リオ会長、面倒くせぇぇ。合理厨なのに、自分の敗北を認めないし、プライドが高い。
「貴方は、モモイのゲームガールアドバンスから、G.bibleに偽装されたkeyのデータを抜き出した。ところが、ゲーム部はそれを取り返してしまった。
本来ならば、keyはセミナーのデータ保管庫でスタンドアロン状態で保存されるはずだった。AL-1Sを単なる天童アリスで終わらせる予定だった」
リオ会長の、眉がピクリと動く。少し苛立っている様子だった。
「だったら何だと言うのかしら?」
「Keyを手にしてしまった天童アリスは、危険です。キヴォトスを滅ぼしかねない存在になります。私も会長と同じ考えです。トロッコ問題のスイッチを切り替える存在が必要だと思います」
「ええ。そうよ。貴方の考えに私も賛成するわ」
リオ会長がめっちゃウキウキしてる。適当に推測したが、これが本心だったとは。アリスを排除するなんて、絶対に出来ない。
輪廻ミテルは、友達を傷付けるくらいなら自分を殺すような性格だった。そうでなければ、前世の残滓である私はここにいない。悪い大人からヘイロー破壊爆弾を貰って正解だったかもしれない。
「輪廻ミテル。貴方のセミナー在職を認めます。セミナー庶務として励んでください」
「ついでにコユキもお願いします」
「分かりました。黒崎コユキは会長補佐にします。キヴォトスのために、一緒に頑張りましょう!」
私を仲間だと思ってて痛々しい。節穴なのかその目は……
「投稿者美少女糞土方。投稿日11月45日14時。今日は明日が休みなので、しこたま妖怪MAXを飲みながら……」
「コユキ、しっかりして!! 正気を取り戻して!!」
コユキは過剰労働のせいでおかしくなってしまった。ロボと一緒にエリドゥを建設してる。セミナー庶務と会長補佐と言っても、どうして現場監督になってるんだよ!!
「ふふ。よく働いているわね。キヴォトスのため、一緒に頑張りましょう!」
「ウッス!」
「そうね。どう言う意味なのそれ?」
「え? 特に意味はないですけど」
「そうなの」
「そうです」
リオ会長は、ちまちまDivi:Sionなるロボを狩っている。これとアリスが接触したらヤバいらしい。
しかし、リオ会長もみんなも節穴だ。外から来た存在なら目の前に居るのに。私の企てが成功してしまうじゃないか。良心が痛むが仕方ない。
待ってて、もうすぐこの身体を返してあげられるから。