川尻浩作、Fly High with キヴォトス   作:堂廻り 眞くら

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川尻浩作は先生で殺人鬼 その6

 

 耳鳴りがする。遠くの方で

 

 右? あの男は何を言っているんだ。左手は問題なく動く、感覚はある。右手だって動く。感覚でわかる。

 

 

 それを無性に確かめたくなって、手を顔の前に持ってくる。左手は在る。右手は……。やっぱりおかしい。右手が見えない。感覚はあるのに。透明になっている。見えない。いや、おかしいのは手じゃなくて、目なのか?

 

 

「えっ? えッ!?」

 

 

 右手の感覚がないので、仕方がなく左手で、目を触った。左目はある。触れる。だけど、右目に触れない。感覚がまるでない。

 

 

「ま、君には私の能力の【像《ビジョン》】が見えていないわけだし、説明するだけ無駄かな」

 

 

 耳鳴りが酷い。男の声が遠くに聞こえる。

 

 

 周りを見渡して、先ほど右手に持っていたデジカメが足元に落ちているのが見えた。

 

 右手を伸ばして、デジカメを取ろうとして、そういえば右手の感覚がないことに気が付いた。

 

 

 違う。何かがおかしい。左手で右手をを触ろうとした。触れない。おかしい。感覚はあるのに、左手で右手を触ろうとすると、()()る。触れないのだ。透過してしまう。

 

 

「何を―――されたの? いったい?」

 

 

 全身に力が全く入らない。ほんの少しだけ顔を持ち上げて、そこで初めて田岡は、【右手だけでなく右半身全てが透明になって見えなくなってしまっている】ことに気が付いた。

 

 

 いや、違う。

 

 

 ようやく気が付いた。透明になっているのではない。ないのだ。

 

 

「ど、ど……」

 

 

 無いッ!! 右手も、右脚も、右の脇腹も、右目も、右顔もッ! 全て無くなっているッ!!

 

 

「どーーーーなってるどォーーー!!? うわぁぁぁぁッ!!!」

 

「だから【キラークイーン】だよ」

 

 

 川尻浩作の声が遠くに聞こえる。

 

 

「触れたものはなんでも【爆弾】に変えられる。さっき君の【デジカメ】を爆弾に変えたんだ。そして好きな時に【右手のスイッチ】さえ入れれば、任意のタイミングで【爆弾】に触っているものを内側から粉々に【爆破できる】。君の場合デジカメに触っていた右手を起点に、右半身が木っ端みじんに消し飛んだんだよ」

 

 

 何を言っているのかさっぱりわからない。到底受け入れられない。田岡は左手を床に押し付けて、這いずった。

 

 

「た、た、た」

 

 

「ん~~?」

 

 

「助けてぇ~~~!! 誰かぁーーー!!」

 

 

 田岡は叫んだ。だが、田岡が懸命に左手を動かして這いずっていくのを、川尻浩作は先回りして左手を軽く足蹴にしてせき止めた。

 

 

「オーッとォ。ダメェ―ー!

 

 

 ダメダメダメダメダメダメ! 君は死ななくちゃならないんだ。君は私の平穏を脅かす【トラブル】なんだ。君が生きてるってことは私は夜も眠れない【不安】に襲われて【安眠】できなくなる。睡眠の質は健康に重要だって散々世間でももてはやされてるじゃないか」

 

 

 田岡は、あの、始終落ち着いた雰囲気で、平凡なサラリーマンの風貌であった川尻浩作が、まるで別人になったかのような気配を感じた。

 

 

「第一、君はもう手遅れだろォ? 右半身が無いんだからなァ。出血がないのは傷口が焼け焦げちまってるからだが、どちらにせよすぐ死ぬのは変わりない。ちょっと早いか遅いかの違いだよ」

 

 

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