川尻浩作、Fly High with キヴォトス 作:堂廻り 眞くら
〇
栄光と、繁栄を忘れてしまった 都市の乾いたアスファルト
全てが陽炎に揺らいで 何も見えず
増えすぎた砂のこすれる音で 何も聞こえず
降りそそぐ太陽光が唾液を蒸発させて 何も言えず
在るのは どこまでもオートマチックな罪と罰だけ
多分 私たちはゆっくりと滅んでゆく
触れ合えないまま 見つめ合うこともなく
すぐに消える かすかな体温
ただ無気力に 裁かれる日を待っている
ああ
全て海の中に沈んでしまえばいいのになぁ
〇
砂漠とは、地球上でも屈指の過酷な環境である。
昼間は強い日差しが降り注ぎ、夜は砂が冷えやすいために極寒。
また、降水量よりも蒸発量の方が多いため、飲み水を手に入れるのが非常に困難であり、辺り一帯は砂と岩石に覆われてほとんど景色が変わらないため、迷いやすい。
「素人が砂漠で遭難した際に、最も生存確率の高い行動は【何もせずにその場で救助を待つこと】だ」
と言われるほどに、人が砂漠で生きて行くのは難しいのだ。
川尻浩作はこう言った。出勤直後のことである。彼は一人、シャーレの部室に備え付けの椅子に腰かけながらこう言った。
「砂漠地帯で活動するなら、最低でも飲料水十リットルは欲しい。砂漠は熱いから熱中症になりやすいし、それに人は食料を消化吸収するのにも意外なほど多くの水が必要だからな。食料をたくさん持ったはいいものの、脱水症状を引き起こしたんじゃ意味がないというわけだ」
川尻浩作はそれから、足元の大きなリュックサックを指さした。「だから私は水を最優先に携帯することにしたよ。食料の優先順位は結構低い。食わなくても数日は持つからな。もちろんこれらはあくまでも遭難した時の用心だ」
「これから旅費に飽かせて熱帯夜をラクダとランデブーする、なんて素人丸出しでドバイに来た成金みたいな馬鹿な真似をするわけじゃない。仕事に行くんだ。ちょっと砂漠地帯に用事があってね。まあ、でも君と乗るラクダは結構楽しいかもしれないねぇ」
そう言って、川尻浩作はデスクの上に置かれた【恋人】をさわさわと撫でた。
「そうそう。ラクダって結構早いらしいヨ。時速四十キロくらいで数時間は走り続けることが――」
〇
【アビドス高等学校】はかつて【キヴォトス最大の学園】として名を馳せていた。が、しかし時はさかのぼり数十年前。頻発し始めた大規模な砂嵐によって、学区の環境は激変。郊外にあった巨大なオアシスは砂に埋もれて枯れてしまい、進む砂漠化を食い止めようと多額の資金を投入するも焼け石に水。膨らみ続ける借金は留まるところを知らず、学園の経営は悪化。事態の好転の見込み無しと判断した生徒のほとんどが転校・退学し、人口の流出に歯止めかからず、結果的に学区は衰退の一途を辿った……。
『
古代に栄えた地から来た旅人に出会った。
その人は言った。
「胴体のない二本の巨大な石の脚が砂漠に立っていた。その近くの砂の上には、半ばうもれて砕けた顔があり、その不愛想な渋面、しわ寄った唇、そして冷酷に威圧する嘲笑は、その彫り師がモデルとなった人物の、こうした情感をよく読み取っていたことを告げている。
その情感は、この命のない石に刻まれることで、いまもこうして生き延びている。それを写し彫った手と、それを生んだ彫刻家の心によって。
そして台座には、次の言葉がある。
「我が名はオジマンディアス、王の中の王。
私が築き上げたものを見よ、汝ら力強い者よ、そして絶望せよ!」
しかし傍には何も残っていない。この巨大な残骸の周りには、ただ砂漠が広がっているだけだった」
』
「オジマンディアス」 パーシー・ビッシュ・シェリー作