川尻浩作、Fly High with キヴォトス   作:堂廻り 眞くら

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アビドスの夜 その3

 

 

 メンバーの一人、【砂狼シロコ】は「おお~……」と謎の感嘆を上げた後、ぼんやりとした小鳥遊ホシノの顔を見返した。それから、

 

 

「ん。ホシノ先輩は次に「うへぇ~、なんだか頼りない大人が来たなぁ。おじさん心配だよぉ~」と言う」

 

「うへぇ~、なんだか頼りない大人が来たなぁ。おじさん心配だよぉ~……ハッ!!?」

 

 

 小鳥遊ホシノは白々しく額の冷や汗を拭った。

 

 

「やるねぇ、シロコちゃん」

 

 

 砂狼シロコ。アビドス校の二年で、マフラーを巻いている狼みたいな娘だ。ウチのクールビューティ枠であり、ミステリアスな雰囲気も相まってまるでアニメの正統派ヒロインである。銀行強盗が趣味のキチガイ戦闘狂なのが玉に瑕。

 

 

「いや、容易に抵抗できた予言でしょーがッ! 初対面でいきなり失礼かまさないでくださいよッ!」と元気で騒がしいのが黒見セリカ。可愛い一年の後輩。ツインテールでツンデレの猫だ。「ヤバい奴らだって思われたらどーすんのよ……」

 

 

「すみません。先生……わざわざ来てくださったのに、先輩方が」

 

 

 奥空アヤネ。眼鏡っ娘の常識人だが、怒らせると怖い。あと謎の色気がある。川尻浩作に対してぺこりと頭を下げる。

 

 

「いや、構わないよ」

 

 

 対する川尻浩作はと言えば、これが特に変わった反応を魅せなかった。これだけキャラの濃い連中相手に、まるで私たちの会話が始めからなかったかのような態度だった。

 

 

「それにしても、随分な装備ですね?」

 

 

 川尻浩作の真っ白なスーツに、これまた白のターバンを見て、奥空アヤネが興味深そうにそう尋ねた。派手ではないが、コギレイな着こなしがそこはかとなく【大人】と言った感じである。

 

 

「バッグもすごく大きい。何が入ってるんです?」

 

「これは、遭難した時のための備えだよ。デカいのは飲料水6L。いざと言う時のための携帯食料。無線やその他もろもろ」

 

「手鏡にサングラス……日焼け止めまでッ!? 男の人なのにィ~?」

 

 

 と、黒見セリカが言った。不躾にリュックサックに取り付けられていた道具を手に取ってしげしげと眺める。

 

 

「手鏡は太陽光を反射させて。遠くの人間にサインを送るためのものだよ。救助隊にいち早く発見されるためにね。サングラスは紫外線から目を保護するため。そして日焼け止めは直射日光から肌や髪を守るためだ。こうしてターバンで保護しているとはいえ、長時間、直射日光にさらされるのは極めて危険だからね」

 

 

 そしてこれは当然なのだが川尻浩作の所持する日焼け止めはノズルが付いた、背中まで届くスプレータイプッ!!! 彼はあらゆる状況に備えが万全である。

 

 

「長時間の直射日光は熱中症を引き起しやすくなるし、火傷もしてしまう。特に私は【ヘイロー】の加護もないからね。何の備えもなく砂漠地帯を遭難してしまったら、三日もたないだろう。もっとも、長時間の直射日光は君たちにとっても危険であることは変わりがない。適度な水分補給が必須だね」

「……」

 

 小鳥遊ホシノは川尻の言葉に、ほんの一瞬だけ眉尻をピクリと反応させたが、部屋の誰にも悟られないように努めた。

 

 

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