川尻浩作、Fly High with キヴォトス 作:堂廻り 眞くら
「【シャーレの先生】って何人くらいいるんでしょうか?」
奥空アヤネのふと湧いて出た疑問に、ホシノは首を横に振って応えた。
「さァねぇ~。規模も目的もまるで不明だからねぇ」
「でも、シャーレなら、もしかしたら私たちの【借金問題】にもまともに取り合ってくれるかもしれません……」
「うーん。……どうかな」
砂狼シロコは渋面を浮かべて唸った。無理もないのだが、アビドスの衰退を、誰もが知らんぷりをして見過ごしてきた。あの連邦生徒会でさえ。その点、連邦捜査部シャーレはすさまじい即応だったので感心ではある。
「……」
しかし、期待はしない。何故なら相手は大人だからだ。奴らは息を吸って嘘を吐くイキモノだ。
私は言外に遺憾の意を示して見せたが、言外にも言内にも遺憾フルマックスの女がいた。黒見セリカである。
「あんなボケナスみたいに薄ぼんやりした奴、到底信頼できないわよ! 信頼できるのは対策委員会のみんなだけ……」
ズドンッ
「借金の問題は、私たちの力だけで解決するのッ! これまでだってそうしてきたんだからッ!」
「……」
そうだね。
私も気持ちは同じだよ。
でも、もう限界かもね。
ゴメンね。皆。
〇
川尻浩作はアビドス校の外で、シッテムの函を使ってアビドス校廃校対策委員会らの携帯電話を通じて、彼等の雑談を盗聴していた。
「……フンッ」
それから、リュックサックから日焼け止めを取り出すと、それを全身に隈なく塗布する。もちろん、背中までしっかり成分が届くノズルのついたスプレータイプである。
「きれいごと並べてニコニコしてるんじゃァないぞ、負け犬共が」
それから、日焼け止めを再び几帳面に元の位置にしまった。スプレータイプだ。
「あんな頭オアシスなガキ共のことはどーでもいい。どうせ【九億の借金】も返済できるわけがない。アビドス校は何れシャーレが裏で掌握してやるとして、目下の問題は奴らに借金を課して学校を乗っ取ろうとしている【カイザーPMC】の方だ」
言いながら、川尻浩作は手元のタブレット端末を操作する。シッテムの箱である。画面には、資料と共にとあるオートマトン(人型ロボットのような奴らである。キヴォトスにはこいつらがゴキブリみたいにそこら中に蔓延っている)が映し出されていた。
「カイザーPMCの理事長……こいつか」
「私の第一の能力【キラークイーン】は能力の射程がせいぜい数メートル程度。暗殺には向かない……」
「ここは第二の能力【シアーハートアタック】で必ず爆死させる」
「私の安穏のためにも、【先生】の【色彩《テクスチャー》】は絶対に譲らない……。それは【確定事項】だ」
川尻浩作はシッテムの箱を起動。箱に内包されていた【像(ヴィジョン)】を召喚した。
「だが【優先事項】は別にある。まずはカイザーに出し抜かれないためにも、あのバカガキ共の身の安全をある程度確保しなければなァ……」
ズルズルと蛇が這いずるような音が、タブレット端末から川尻浩作の腕、背中、脚を伝って地面に広がってゆく。
「ドーレ。【シッテムの函】の実力とやらを拝見させてもらうとするかな」
音はやがて川尻浩作の影の中に吸収されて、やがてそこから人影の様なものが高速で飛び出していった。
「一人でも生き残ってりゃ構わんぞ。とにかく私が理事長を始末するまで、アビドス廃校対策委員会をカイザーから守っておけ」