川尻浩作、Fly High with キヴォトス 作:堂廻り 眞くら
柴関ラーメンはアビドス校近隣に店を構えるラーメン店である。対策委員会の面々はよくここに訪れ、ラーメンを注文、そして啜っている。
学校帰りの夕方のことである。対策委員会はいつもと同じように柴関ラーメンに立ち寄って、もとい冷やかしにやってきていた。奥空アヤネ、砂狼シロコ、十六夜ノノミの三人である。
柴関ラーメンは某次郎系ラーメンの如く、どんぶり一杯に麺やらトッピングやらを乗せて運んでくるもんだから、食べきるのにやたらと時間がかかる。そのため、たった一杯を間食するのに数時間はかかる……というのは建前で、ほんの数百円程度の出費で数時間も居座って友達と駄弁るための口実としてもってこいの、対策委員会の憩いの場にされているのがこの柴関ラーメンなのであった。柴関ラーメンの店長もお人好しなので、カスほども金を落とさない、喧しい高校生が数時間店に居座るのを寛容に許容している。腹の底で何を考えているかは知らない。案外微笑まし気に見守っているのかもしれないし、実は頭の中で百回くらい虐殺しているのかもわからない。ただ個人的な意見を述べさせてもらうと、店長は非常に人情溢れる御方なので腹黒いということな無いと思う。そう思いたい。
バイ・ザ・ウェイ対策委員会の一人、奥空アヤネは早々に注文したラーメンを、どんぶりの底まで几帳面に食べきっており、また時間もかなり経過しているのか丼の底はすでに乾ききっていた。
「残りの借金、諸々も合わせて【九億六千二百三十五万円】……ですかぁ」
奥空アヤネは携帯を弄りながら独り言ちた。今自分たちが食べたラーメンの何千杯分もの金額。それが今のアビドス校に課された借金なのである。彼女は対策委員会に置ける会計のような役目を担っており、帳簿のようなものも几帳面に管理している。当然借金の管理もしっかり行っており、支出は携帯のメモアプリにしっかり記載して記録してある。
「うーん。……ううーん。これじゃ、返済どころか月の利息を払うので精一杯」
奥空アヤネの携帯を横からのぞき込んで、砂狼シロコも渋面を浮かべた。彼女はまだちびちびと名残惜し気にラーメンを啜っては箸に付着した汁をチロチロと嘗めており、その卑しさとみみっちさからは彼女の育ちの悪さが伺える。ちなみに彼女は別に小食だからちびちび麺を啜っているわけではなく、若干の猫舌であるため、少し冷ましてから食べているのだった。それから、一応「まだ食べています」ということを店側にアピールしているという側面もある。通いつめの柴関ラーメンでいまさらそんなことをしても別に意味はないのだが、以前に柴関ラーメンとは違う店でたらふく飯を食った挙句、店の中で牛みたいに横になって八時間ほど爆睡した結果、その店の店長にこっぴどく叱られた挙句外に放り出された経験があるので、彼女のこの行動は半ば軽々と本能による反射運動による自衛の側面を有していた。
「ん、ちょっと汁が冷めすぎてきた……」
「麺も大分伸びてきてますよ」と奥空アヤネがあきれ顔で砂狼シロコに告げた。