川尻浩作、Fly High with キヴォトス 作:堂廻り 眞くら
問題を解決するというのは、その困難の度合いに関わらず、存外に難しいものだ。問題を解決するためには、まず問題に真正面から向き合わなければならないという前提があるわけだが、これが難しいのだ。何故ならば、大抵の問題は未来の現象であり、未来を認識するというのは非常に高度な概念であるからだった。過去に起きた出来事を振り返る、つまりは内省したり、現在という確かに存在する者を大切にするのと同じ様に未来を強く想うことはとても大変なことなのだ。
問題解決に取り組むというのは、すなわち未来に全霊の力をもって立ち向かうということだ。そして、もし仮にそうした上で問題を解決することができなかった場合、その者は、十指十目のいかなる弁明も避けることのできない醜態を被ることとなる。だから人は、明らかに解決しなければならない問題に対し、しばしば盲目になる。それは、努力によって生じる甚大な不利益の可能性を恐怖しているからだ。
だからこそ、真の思想にはそれを解決し得る優秀な叡智よりも寧ろ恐怖を克服する勇気が必要なのだろう。
そう言う意味では、黒見セリカは尊敬に値する人物だった。彼女は借金返済のために、即日実行可能かつ具体的な行動に従事しているからだ。
それは、柴関ラーメン店でのバイトなど、である。
たかだか高校生のバイト如きが、九億の借金返済という問題解決に直結するのかと言われるとそれは極めて微妙ではある。が、しかしそれがほんの一助でもなる限り、ほんのわずかでも問題が解決に向かっている以上、彼女の行動は解決能力をもった真の思想を伴っていると言える。
「アイドルで稼ぐなんてそれこそアニメの世界の話よ! それと、お店であんまり騒がないでッ!」
「あ、セリカだ」
「エプロン似合ってますねぇ」
対策委員会がこの柴関ラーメンを行きつけにしている主な理由はそのコスパの良さと店長である柴大将の人の良さに付け込んで長時間居座ることができるから、という理由の他にも、柴関ラーメンでバイトしている黒見セリカを冷やかすという目的も兼ね備えていた。つまり、彼等は後輩のバイト先に出しゃばる、ろくでもない先輩連中だった。バイト先に冷やかしに来る先輩……絶対嫌だ!
「ふざけたアイデアばっかり出してないで、もっと現実的にでっかく一発を狙わなきゃ」
威勢のよい黒見セリカに対して、「その【でっかく一発】っていうのが非現実的だから困ってるんだけどね……」と奥空アヤネはぼやいた。