川尻浩作、Fly High with キヴォトス 作:堂廻り 眞くら
田岡は気を取り直して、とでも言わんばかりに、手持ちのバッグ(ボロボロで如何にもな安物)を大げさに漁った。
「それでですね先生ーっ。早速ですが本題に入りますね。レコーダー……入れますね?」
レコーダーがカチリと音を立てた。田岡の手に、ギリギリ収まらないくらいの長い機器が握られていた。それで、田岡は川尻浩作の眉がピクリと持ち上がるを見逃さなかった。
「ズバリ、尋ねます。先日、私はとある場所で私物のデジタルカメラを回していたんですけどねェ……」
手持ちのカバンから、デジカメと、タブレットを続けざまに出す。
田岡がパスワードをパパっと打ち込む(その際も、田岡は大げさに仰け反ってパスワード入力画面が川尻に見えないようにした)と、それから液晶の方をぐるりと川尻に向けた。タブレットには結構鮮明な映像が流れていた。どうやらどこかの住宅街であるようだ。
「なんとなーくで、窓の外をね。あ、SDカード差し上げます。コピーしたので」
「デジタルカメラが……なんだって?」
始終背もたれに身を預けていた川尻だったが、そこでようやく身体を起して、画面に顔を近づけた。田岡は映像を止めて、画像の一部分を指で拡大してみせた。手に持ったSDカードは机に放り投げた。
「ここに写ってる窓……あなたと、生徒の一人が向かい合ってますよね。なんだかいや~んな怪しい空気……特大スクープの予感ッ!! とか思ってたんですけど問題はその後。ほらっ! ここッ!!」
一時停止していた映像を再び進める。それから、キュルキュルと巻き戻す。
何度も巻きなおす。
川尻に見せつけるように、何度でも巻きなおす。
川尻が、その女子生徒に迫ったかと思った次の瞬間、女子生徒の姿が忽然と消える。
その過程が液晶越しに何度も巻き戻して繰り返された。
「人が丸々一人、まるで手品みたいに消えました。まさに人体消失マジックッ!!」
「ふーむ」
そこで川尻浩作は画面から目を離し、こめかみに手をあてつつ喉の奥を唸らせながら、田岡の顔をちらりと確認した。それから、興味を失したように脚と手を組みなおしつつ、こう口を開いた。
「それで、君は私がまるでデビット・カッパーフィールドだとかMr.マリックみたいだとかでも言うために、わざわざここにやって来たのか?」
「まさか」
田岡はここで顔をズイッと、川尻浩作の顔の傍に近づけた。川尻は全く視線を合わせようとしない。
「調べたんですけどねェ……。実はあなたが写ってる窓の部屋の持ち主――とある女子生徒なんですがね――先日から【行方不明】なんですよ」
「……」
川尻浩作はまるで澄み渡った鏡に向かっているかのような顔をして、ニヤリと冷笑を零した。
それからさも驚いたかのように「……で? 君は何が言いたい?」と返事した。
「いやね? これを【記事にさせてもらいます】……と言いに来ました」
ゴゴゴゴゴゴゴ。