川尻浩作、Fly High with キヴォトス   作:堂廻り 眞くら

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川尻浩作は先生で殺人鬼 その4

 

 

「いやね? これを【記事にさせてもらいます】……と言いに来ました」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴゴ。

 

 

「先生がこの女子生徒に【何かした】にせよ、しなかったにせよ。どちらにしても、【一生徒の私室】に【責任ある大人】たる先生がズカズカ入り込んでいるのは問題でしょう。ですから私はこの映像を添えたネット記事を投稿しようと思います。私の私的な見解も含めて。近々ね。それを見てどう思うか、どう考えるかは読者の自由です」

 

 

 川尻浩作はここから千里万里もかけ離れた、つまらぬ感傷にでもとりつかれた、みたいな顔を浮かべながら、

 

 

「ふーん、そうかい」

 

 

 とだけ言った。心底つまらなさそうであった。それから、

 

 

「文春じゃ、適当な芸能人の浮気現場を抑えりゃ一発で数億の売り上げをたたき出せるって話をどこかで聞いたことがある。そんだけ稼げるんだから、記者ってのは犯罪紛いの盗撮なんかも【平気のへの字のへっちゃらりん】なんだろうなァ。ネット記事の場合は、どれくらいの売り上げをたたき出せるんだろうねェ」

 

「……」

 

「ところでその映像、随分鮮明だね。そのデジカメで撮ったのかい?」

 

「オーッとォ」

 

 

 話の途中で不意に手を伸ばした川尻浩作を、大げさすぎるほど大げさに避けると、田岡は後ろに後ずさった。

 

 

「ダメェ~~~~」

 

 

 

 シュゥッ!! と手に持ったデジカメを左右にブンブン振り回す。宛ら闘牛にムレータを振り回す闘牛士の様相である。

 

 

 

「ダメダメダメダメェ!! デジカメには触んないでください。駄目ですよぉ。ルール違反です先生ェ~~」

 

 

 チッチと人差し指を振りながら、田岡は「そしてェ」と吠えた。

 

 

「記事にさせてもらいますッ! 許可の申請でなく、これは報告ですよっ! 義務ではありませんが、本人とか事務所に記事を出す前に報告しとくッてのが一応、ウチの慣習なので」

 

 

「……」

 

 

「これが私の考えている通りなら……ものすごく大問題ですよ」

 

 

「……」

 

 

 

 川尻浩作は、ゆっくりと、口を開いた。

 

 

 

「……キミは、私を脅してるのか?」

 

 

 

 

「……ええ、そうですッ!」

 

 

 ビシッ! 田岡は指を差すッ! その目に戸惑いはない。

 

 

「着任早々で申し訳ないですがねェ! ですがジャーナリストの端くれとして到底看過できませんね! 徹底的に調査させてもらいますっ! 覚悟の準備をしておいてくださいッ!!」

 

 

「……」

 

 川尻浩作は何の前触れもなく、突然、腰かけていた椅子からスッくと立ち上がった。それから、ネクタイをほんの少しだけ緩めながら、田岡に全く目を合わせようとせずにこう言った。

 

 

「君、一人かね。仲間は来ていないのかね」

 

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