僕のトリップヒーローアカデミア   作:ヤストモ

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第1話

 

01

 

 

「そろそろ進学先を決めるか……」

 

 佐草清正は、都内の高級マンションのリビングで進学先の高校を選んでいた。中学生活も残り数ヶ月となり、そろそろ受験の準備を本格的に始める時期だった。

 

 彼は普通の中学三年生――と言いたいところだが、その実態は「普通」からは程遠い。中学一年の頃から株取引を始め、圧倒的な分析力と勘の良さで成功を収め、現在の資産は800億円にも上る。都内の高級マンションで一人暮らしをしているが、生活は意外にも質素であり、贅沢にはあまり興味がない。

 

 そんな彼が進学先の高校を検討している最中、突如として大きな地震が発生した。

 

「っ……! やばいな、この揺れ……」

 

 家具が揺れ、窓ガラスが震える音が響く。しかし、清正は冷静に耐え、地震が収まるのを待った。

 

 数分後――ようやく揺れが止んだ。清正はほっと息をつき、再び高校を検索しようとパソコンに向かった。しかし、そこに映し出された学校名に彼は目を疑った。

 

『雄英高校』

 

「……は?」

 

 清正は言葉を失った。間違いなく、それは『僕のヒーローアカデミア』の世界に登場する超名門校だ。だが、あり得ない。ここは現実世界のはずだ。

 

 慌てて部屋の窓を開け、外を確認すると、そこには見慣れたはずの都内の風景……ではなく、見覚えのあるヒーローたちが空を飛び、個性を駆使している世界が広がっていた。

 

「マジか……」

 

 冷静な性格の清正も、さすがにこの状況には混乱を隠せなかった。しかし、すぐに気付く。

 

 ――これはまさに、俺が読んでいた『僕のヒーローアカデミア』の世界そのものじゃないか。

 

 さらに驚くべきことに、スマホを確認すると、彼の戸籍や財産はこの世界にしっかりと存在していた。まるで最初からこの世界の住人だったかのように。

 

 そして、さらに不可解なことがあった。

 

「……身体が軽い?」

 

 違和感に気付き、外で軽くジャンプしてみると、普段の倍以上の高さまで飛び上がった。そして、拳を軽く振るうと空間が震え、衝撃波っぽいモノが出た。

 

「……個性、か?」

 

 全身に力を込めると、何かが体内で共鳴する感覚があった。直感的にわかる――これが自分の個性だと。

 

個性名:『衝撃(インパクト)』

 

 衝撃を自由自在に操る能力。攻撃だけでなく、衝撃の膜を作り防御もできる。逆に自分の全身や身体の一部に衝撃を溜め、好きな形で放出することも可能。

 

さらに、強力な個性に耐える為か身体能力も異常に高く、オールマイトの70%くらいのフィジカルを持っている。

 

「……俺、めっちゃ強くね?」

 

 冷静に考えて、これはチートだ。最強クラスの個性に、圧倒的な身体能力。そして800億円の資産。ご都合主義にも程がある。

 

「でも、これなら……」

 

 清正は拳を握りしめる。

 

――雄英高校に入るしかない。

 

 彼は決意を固め、まずはこの世界の情報収集を始めることにした。

 

 

翌日。

 

 清正は早速、雄英高校の受験要項を調べ、試験までのスケジュールを確認した。

 

「試験は約一ヶ月後……原作通り、実技試験がメインで、ヴィラン型ロボットを倒す形式か」

 

 原作知識がある以上、試験の内容は把握済みだった。ただ、自分の個性を完全に使いこなせるかどうかは未知数。そこで、清正はトレーニングを開始することにした。

 

 マンションの敷地内にある専用ジムで、パンチングマシンを試しに殴ってみる。

 

ドンッ!!

 

 瞬間、マシンが吹き飛び、壁に激突して大破した。

 

「やべっ」

 

 予想以上の威力だった。力の加減を間違えれば、相手を殺してしまいかねない。

 

「力を調整する訓練が必要だな……」

 

 こうして清正は、個性の制御と実戦に向けた鍛錬を始めるのだった。

 

 

そしてあっという間に雄英高校の受験当日。

 

 試験会場には、原作でお馴染みの面々――緑谷出久、爆豪勝己、麗日お茶子、飯田天哉などが集まっていた。

 

「おお……なんか感動」

 

 清正は心の中で感嘆しつつも、あくまで冷静に振る舞った。

 

 プレゼンターのプレゼント・マイクが試験の説明をする中、ふと隣にいた麗日お茶子が声をかけてきた。

 

「あの……君もヒーロー科志望?」

 

「そうだよ。君も?」

 

「うん! 緊張しちゃって……でも、頑張る!」

 

 清正は微笑みながら頷いた。

 

「大丈夫。自分の力を信じれば、きっといい結果になるよ」

 

「……うん!」

 

 何故か元々赤らむ頬っぺがチャームポイントの麗日が、さらに頬を赤らめたような気がした。

 

 そして、いよいよ実技試験開始が開始される。

 

「はい、スタート」

 

プレゼント・マイクの号令??が響き渡ると、試験会場のゲートが解放された。

 

 受験生たちは我先にと戦場へ駆け出し、次々とヴィラン型ロボットへ攻撃を仕掛けていく。

 

 だが、佐草清正はその場に残り、一瞬周囲を観察した。

 

(3ポイント、2ポイント、1ポイントのヴィランが散らばってる。まずは周りの様子を見ながら戦うか)

 

 彼はそう判断し、一気に駆け出した。

 

 目の前に現れたのは3ポイントのヴィラン型ロボット。清正は右拳に力を込めると、腕の周囲に青白い衝撃の波紋が発生する。

 

「まずは一発――!」

 

ドンッ!!

 

 拳を振るった瞬間、空気が震え、強烈な衝撃波が発生。ロボットの胴体に直撃し、一瞬で粉々に砕け散る。

 

「うおっ! すげぇ!」

「一撃で3ポイントを……!?」

 

 周囲の受験生が驚きの声を上げるが、清正は気にせず次の敵へと向かう。

 

 試験が進む中、戦場のあちこちで悲鳴が響く。

 

「やばいっ……!!」

 

 1人の受験生が2ポイントのヴィランに追い詰められていた。その瞬間――

 

ドンッ!!!

 

 突如、ロボットの胴体が吹き飛び、爆風とともに崩壊する。

 

「大丈夫か?」

 

「えっ……あ、ありがとう!」

 

 驚く受験生の前に立っていたのは、清正だった。

 

「気をつけろよ。これは試験だけど、実戦みたいなもんだからな」

 

 清正は軽く微笑むと、次の戦場へと向かう。

 

 すると、近くで透明な影が走っているのを見つけた。

 

(あれは……葉隠か?)

 

 透明人間の少女、葉隠透が2ポイントヴィランに追われていた。彼女の個性は隠密には向いているが、戦闘系ではない。

 

「きゃあっ!」

 

 ヴィランの腕が振り下ろされた瞬間――

 

バシュッ!!

 

 清正は瞬時に駆け寄り、衝撃の膜を展開。ヴィランの攻撃を完全に防ぐ。

 

「大丈夫か?」

 

「あ、ありがとう! 助かったよ!」

 

「気にすんな。まだ試験は終わってないぞ」

 

 清正はそう言うと、衝撃を纏った蹴りを放つ。ヴィランは衝撃波に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

 葉隠は驚いたように声を上げる。

 

「すごいね、佐草くん! めちゃくちゃ強い!」

 

「キミもよく動けてるじゃん。でも、気をつけろよ」

 

「うん!」

 

 清正は軽く頷くと、さらに駆け出した。

 

 次に目に入ったのは、ギターのピックを握りしめた少女――耳郎響香。

 

(耳郎か……彼女は音の個性があるが、ヴィランを直接破壊するのは厳しいか)

 

 彼女は3ポイントヴィランと対峙していたが、個性の効果が薄いのか、思うように戦えていなかった。

 

「クッ……!」

 

 歯を食いしばる耳郎を見て、清正は即座に行動する。

 

「援護する!」

 

 清正は瞬時に駆け寄り、ヴィランに拳を叩き込む。

 

ドォン!!!

 

 圧倒的な衝撃波が発生し、ヴィランは粉々に砕け散った。

 

 耳郎は目を丸くする。

 

「……すっげぇ。マジでプロヒーローみたいじゃん」

 

「キミの音波攻撃も良かったぜ。まったく無駄じゃなかった」

 

 耳郎は少し頬を赤くしながら、口元を上げた。

 

「……サンキュー」

 

 そして試験終了間際、突如として巨大な影が会場を覆った。

 

「な、なんだ!?」

「デカすぎる……!」

 

 受験生たちは驚愕しながら見上げる。そこには、"0ポイントヴィラン"がそびえ立っていた。

 

 圧倒的な巨体に、多くの受験生が逃げ出す中、一人の少年が立ち止まる。

 

緑谷出久。

 

 彼の視線の先には、瓦礫の下敷きになった麗日お茶子がいた。

 

「助けないと……!」

 

 そう決意した瞬間、彼の中で何かが弾けた。

 

「SMAASH!!!」

 

 彼の拳がヴィランの顔面に炸裂する。

 

ドォン!!!!!

 

 一撃で粉砕。しかし、反動で彼の腕と両足はボロボロに砕け、落下していく。

 

「やばい……!」

 

 そんな彼の危機を察知した清正は、すぐに行動を起こした。

 

バシュンッ!!

 

 一瞬で空中へ跳躍し、緑谷の体を受け止める。

 

「よっと……大丈夫か?」

 

「えっ……? あ、君……」

 

 意識が朦朧とする緑谷に、清正は優しく微笑んだ。

 

「お疲れ。よくやったな」

 

 しかし、問題は終わっていなかった。緑谷が破壊した0ポイントヴィランの残骸が、無数の破片となり落下してくる。

 

 清正は拳を握りしめ、衝撃を纏わせる。

 

「ブレイク・インパクト!!!」

 

ドンッ!!!

 

 放たれた衝撃波が、巨大な残骸を弾き飛ばし、安全な場所へと落とす。

 

 試験終了の合図が鳴り響く。

 

 緑谷は、放心したように清正を見つめた。彼の姿が――

 

オールマイトと重なって見えた。

 

 全てをかけて戦い、他者を助ける。その姿はまさに"ヒーロー"だった。

 

 そんな彼に、清正は笑顔で言う。

 

「カッコよかったぜ、ヒーロー!」

 

 その言葉が、緑谷の胸に深く刻まれた――。

 

 

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