エアプタシンおじさん   作:てとるマン

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こんにちは・・・主です。


Othuyeg様、誤字指摘ありがとうございます。




追憶の彼方に 其の二

 

 

 

 

 そこには[白]がいた・・・そう答えるしかない・・・いや、出来ない?

 

 

 

 俺はただ呆然と、側にいる筈のイタや先程まで会話していた耳の方の事等は全て認識から滑り落ち、ただそれだけを見つめる事しか出来ないでいた。

 

 

 

「・・・あら?思ったよりも耐えるのね?おかしいわ・・・普通なら発狂するか、死に物狂いで逃げだしたりするのに?」

 

 

 

 その空間にいる[白]はまるで自分達の方が常識から外れているような物言いをしながら、俺達を吟味するかの様に言葉を続ける。

 

 

 

「貴方達にも英雄の素質があるのかしら?それとも私の知らない別の何か?気になるわ気になるわ気になるわ気になるわ。ねぇ・・・貴方達の事・・・もっと教えて?」

 

 

 

 俺はその言葉に恐怖を覚える事も、怒りを覚える事も、悲しみを覚える事も、喜びを覚える事もなく、ただその伸ばされた何かに身を任せるだけ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が君・・・お戯れもそこまでに・・・」

 

 

 

「あら、ごめんなさい。でもこの子達が悪いのよ?私の興味を引く様なモノを持っているのだから」

 

 

 

 [白]は笑う素振りをみせ、自らを咎めた耳の方に何かを言っているが、それすらも俺には理解出来なかった。

 

 

 

「しかし、余り時間がないのも事実・・・どうか此処はお見逃しを・・・」

 

 

 

「・・・しょうがないわね。良いわ、そろそろ始めましょう」

 

 

 

 [白]は何かを呟き、その声を聞いた俺は唐突に足が震え出し、その場に立つ事さえ叶わなくなり、地面に横たわってしまう。

 

 

 

「今はただ眠りなさい・・・・次に目覚めた時、全ては泡沫に消える」

 

 

 

 俺の瞼は徐々に下がって行き、強い眠気に襲われ抗う術もなく、夢の世界へと誘われる。

 

 

 

「・・・それで?あの子は何処にいるの?」

 

 

 

「確か・・・あちらに住んでいた筈です・・・」

 

 

 

 夢の世界に落ちる最中に見た耳の方の指差す方向は、確かに親友の家がある方向に向いていた。

 

 

 

 

 

  ◯

 

 

 

 

 

「・・・ん?何だ俺は・・・眠ってたのか?」

 

 

 

 

 夢から覚めた俺は現実を認識し始めると先程の事を思い出し、慌てて周囲を確認する。

 

 

 

「い・・・いない・・・」

 

 

 

 どうやら先程いた何かは既に何処かへと消えてしまっていた。安心したのも束の間、俺の隣に幼馴染がいた事を思い出してそちらも慌てて確認するが、安らかな寝息を立てて眠っていた。

 

 

 

「よかった・・・無事で・・・」

 

 

 

 だが、俺の胸中にはまだ不安が消えずにいた。理由は分からないが

もう一人の親友の事が心配で仕方がなかった。

 

 

 

 

「ごめん、必ず迎えに来るから」

 

 

 

 

 俺はイタを門番の部屋にあるベットまで運び、タシンの家に向かって走り出した。

 

 

 

「・・・くそ、何でこんなに不安なんだ?」

 

 

 

 俺の胸中の不安に疑問を抱きながらも目的のタシンの家に辿り着く。

 

 

 

「タシン!!ラナーさん!!」

 

 

 

 俺は家の扉に飛び付くと家の中にいるであろう二人に呼び掛ける。

 

 

 

「はいはーい、うるさいなぁ・・・どなたですか?」

 

 

 

 面倒事は嫌だ嫌だと言わんばかりのセリフを言いながら出で来たのは、何とタシンであった。

 

 

 

「何だ、ナルじゃないか?どうしたんだ、そんな鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔をして?」

 

 

 

 俺が驚いて言葉を失っているとタシンがよく分からない事を言っていたが、驚きから立ち直った俺は慌ててタシンに聞く。

 

 

 

「お、おいタシン・・・怪我はどうしたんだ?」

 

 

 

 そう、あれ程重傷だった筈のタシンの身体には、何処にも傷跡一つ残っていなかった。

 

 

 

「それにラナーさんは?今外に出でいるのか?」

 

 

 

 いつもなら家を訪ねたときに応対してくれるのはタシンではなく、ラナーさんだった為、俺は目の前の状況を受け止めきれないなか、タシンに聞く。

 

 

 

「はあ?お前さっきから何言ってんだ?寝ぼけてるのか?」

 

 

 

 タシンは俺の質問に対して否定を・・・というより、何故そんな的外れな質問ばかりするんだと言いたそうな言葉を返してくる。

 

 

 

「なんでって・・・だってお前の母親だろ!ラナーさんは!!」

 

 

 

 俺は当然の事を言った・・・その筈だった、だがタシンの答えは

 

 

 

「ラナーさんが母親?いやいや、何言ってるんだお前・・・確かにあんな人が母親なら俺も嬉しいが・・・」

 

 

 

「お、お前こそ何を・・・言って・・・だってお前はラナーさんとは二人暮らしで・・・」

 

 

 

「だから!!俺は今までずっと一人暮らしなんだよ!!ラナーさんだって近所には住んでるがあっちも一人暮らしだぞ!!どうしたんだナル?俺が怪我したとかも言ってたが・・・調子でも悪いのか?」

 

 

 

 タシンの言葉を聞いていく内に俺は段々と、先程自分が言っていた発言がおかしいと思い始め、何故あの様な事をタシンに言ったのか・・・俺自身、分からなくなっていた。

 

 

 

 

「いや・・・悪いなタシン・・・俺の方がおかしかったな・・・すまん」

 

 

 

 

 俺はこの日を境に、その日より以前の記憶は書き換えられ、歪められた認識の世界で生きていく事になった。

 

 

 

 

 

 

  ◯

 

 

 

 

 

 ある日の事。

 

 

 

「ナル!お願いがあるの!」

 

 

 

 その日は門番の役目が終わり家に帰ろうとした時、幼馴染のイタに俺は呼び止められた。

 

 

 

「なんだよ?面倒くさい事ならやらないぞ」

 

 

 

「そのね、実はさっきタシンの家に掃除に行って来たのだけど・・・掃除道具、いくつか忘れて来てちゃったの。代わりに取ってきてくれない?」

 

 

 

俺は断ろうとしたが家の手伝いで取りに行く暇が無く、母親の掃除道具を借りた為、どうしてもと言われ仕方なく、俺は了承する事にした。

 

 

 

「ああ!忘れる所だったわ!はいこれ」

 

 

 

 イタはそう言う首に付けていた鍵付きのネックレスを俺に渡して来た。

 

 

 

 俺はおうと一言言ってそれを受け取ると声が聞こえた気がした。

 

 

 

『あの子を助けてやってほしいさね』

 

 

 

「うっ・・・」

 

 

 

 声が聞こえた瞬間と同時に起きる頭痛に俺は頭を押さえる。

 

 

 

「ナル、大丈夫?」

 

 

 

「・・・ああ」

 

 

 

 俺は頭の痛みを堪えつつ、先程聞いた声を忘却していく。

 

 

 

 

 

  ◯

 

 

 

 

 

 俺はタシンの家に行き、家の中に入ると目的の物は直ぐに見つかり帰ろうとした時、部屋の奥の床に違和感を覚えた。

 

 

 

「・・・ん、もしかして」

 

 

 

 心当たりのあった俺は部屋の奥に敷いてある絨毯を捲るとそこには地下に続く扉を見つけた。

 

 

 

 少し前にタシンが大量の土を捨てている所を見ていた為である。タシン的には、上手く隠しながら作業をしているつもりの様だった為、温かい目で見守っていたものだ。

 

 

 

 俺はタシンが何をしているのか気になっていた事もあり、俺は地下室に入る事にした。

 

 

 

「なんだこりゃ?」

 

 

 

 地下室に入った俺の目に映ったのは大量の本と里の外から採取してきた植物や生物・・・後は簡易的な机と椅子、その机の上にある本と紙の束であった。

 

 

 

 俺は取り敢えず机の上に置いてあった紙束を手に取りそこに書かれていた内容に目を通す。

 

 

 

「・・・[護竜リオレウス]・・・その生態について?」

 

 

 

 どうやら紙束の横に置いてあった本は図書館に貯蔵してある古代人の手記だったようで、紙束はその手記をタシンが翻訳したものであった。

 

 

 

「・・・あいつ、古代語・・・読めたのか・・・」

 

 

 

 里の大人でも古代語の解読は難しいと言っていた筈だが・・・まあ、気にする必要はないだろうと俺は様々な護竜の名称や生態が書かれた紙束を見続ける内に時間を忘れる程に夢中になっていたらしく、気がついた時にはかなり時間が経っていた。

 

 

 

 慌てて俺はその場を立ち去り、イタに遅いよ!!と少し怒られしまった。まあ、この時見た資料のお陰で里付近に出てくる護竜の名前や習性などを理解し、色々な状況に対処できたものであった。

 

 

 

 それからと言うもの、あいつは度々里の外に出ては俺やイタを困らせ迷惑した事だが、外面が変わってもあいつの芯は・・・心の在り方は昔から変わらず、誰かの助けになりたいとする行動に俺達はその支えになりたいと思った。

 

 

 

 そして俺はイタと結婚し、子供を授かり・・・そしてイタは病気になった。産婆にイタを診せた後、俺とイタは話し合い、それでも子供を産もうと二人で決めたのだ・・・本音を言えば、俺はどうしてもイタには生きて欲しかった・・・彼女と一緒にいるだけでも俺は幸せだった。

 だがその思いはイタの決意を無駄にしてしまう・・・だからこそ、俺はその思いを抑え込み、イタの出産に望んだ。

 

 

 

 そうして生まれてきた赤ん坊・・・ナタを初めて抱いた時、俺は自分の抱いた思いに反省した。何故なら俺は否定しようとしていたからだ、昔から大好きだった父の意思を・・・親友の語った夢の断片を

 

 

 

 俺はタシンにも抱いて貰おうとナタをタシンに渡した時にイタから声を掛けられる。

 

 

 

「ねぇ・・・ナル?」

 

 

 

「何だい、イタ?」

 

 

 

 俺は涙を堪えながら、出来る限り平静を装ってイタに答える。

 

 

 

「ナタを・・・貴方に託すわ」

 

 

 

 

 イタはゆっくりと自分の首に掛けていた鍵を手に取ると俺に押し付ける。

 

 

 

「最後までこの鍵について・・・思い出せなかったけど・・・タシンを助けてやってね」

 

 

 

「・・・ああ、任せろ」

 

 

 

 俺の言葉に満足したの優しい笑みを浮かべた後、イタはこの世を去った。

 

 

 

 

 

  ◯

 

 

 

 

 イタがいなくなってからはナタの世話や役目に関して忙しく、タシンの方まで手が回せなかった時、あいつが里の外でモンスターに襲われたと聞いた。幸い、本人に怪我はなく里の住人に危険な場所やルートを教えていたが、俺はそんな姿を見てトラウマが蘇るような感覚に襲われ、しかしそれが何なのかは分からなかった。

 

 

 

 数日が経っても心が晴れない俺はラナーさんにナタを預け、タシンの後を付ける事にした。そうやってあいつが深層に潜り、拠点らしい場所で何かしているのを隠れながら見ていたが、深層の独特な気配に気を取られた隙にどうやらタシンが何処かに行ったらしく、暫く隠れたまま動けずにいる事一時間程、少し浮かれた様子のタシンが帰ってきた。

 

 

 

 タシンはそのまま拠点と思わしか場所に入り、それから少ししてからだろうか・・・あいつの怒声が響いてきたのだ。

 

 

 

「人間を・・・それも生きた素体での実験だと!!その様な事が罷り通っていたのか!!」

 

 

 

 タシンはその後も大声で叫び、しまいには拠点の外に出てきてもまだ大声を出し、怒り狂っている様である。そんな事をすれば当然、深層にいる護竜達がタシンを目指して近寄って来ていた為、俺は慌てて手持ちの反晶

を使い護竜達を追い払った。

 

 

 

 

 タシンが叫んでいた内容を要約するに、どうやら古代人がやっていた実験で人体を使ったやり方が横行、タシンの行っている実験にも人の身体を使うのは最適解だが、古代人のような獣畜生に堕ちる気はないと言うことらしい。

 

 

 

 

 そんな悲痛に満ちた親友の姿に俺は・・・何か助けられる事はないかとただ、眺める事しか出来なかった・・・

 

 

 

 

  ◯

 

 

 

 

 

 何故何だろう、今までは思い出そうとしたのに出来なかった思い出が・・・湯水の如く、頭の中を流れいてく・・・これが走馬灯というやつなのかもしれない・・・俺はそう考えながら、今尚俺を助けようとする親友を見る。

 

 

 

 俺は・・・こいつの助けになりたい・・・今の俺に出来る事・・・それは

 

 

 

「・・・た・・・タシ・ン・・・」

 

 

 

「な、ナル!!喋るんじゃない!!傷が広がってしまう!!」

 

 

 

「いい・・・から聞け、バカ」

 

 

 

 今逃すともう伝える事が出来ない・・・俺の意思を悟ったタシンの目が変わったのを見て、それに満足した俺は続きを語る。

 

 

 

「もう俺は・・・助からない。だからタシン・・・ナタを頼む」

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 勿論、親友にタダ働きをさせるつもりのない俺は見返りを示す。

 

 

 

「その代わりといっちゃ何だが・・・俺の身体・・・使えよ・・・」

 

 

 

「なっ!?・・・ナル、お・・・お前まさか俺の実験の事を知って!?」

 

 

 

「当たり前だろ・・・何年親友やってると思ってるんだ・・・」

 

 

 

 ああ、死ぬ間際だってんのに今までの人生でとても解放された良い気分だ・・・それに俺はただ死ぬんじゃない・・・

 

 

 

「お前に・・・俺の身体とイタの思いを託せるんだ・・・本望さ」

 

 

 

 俺は何とか腕を動かし、ポケットからイタから託された鍵を取り出し、イタがやった様にタシンに押し付ける。

 

 

 

「先にいってイタと待ってる・・・ゆっくり来いよ・・・」

 

 

 

 意識が遠のいていく・・・もう、終わりか

 

 

 

「ナル?・・・おい、ナル!!」

 

 

 

 じゃあな親友・・・お前の夢・・・叶うといいな

 

 

 

「ナルゥゥー!!!!!」

 

 

 

 

 

 竜都の跡形、そこに存在するのは最愛の友を失い嘆き悲しむ男が一人、そして物言わぬ亡骸のみであった。

 

 

 

 

 

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