エアプタシンおじさん   作:てとるマン

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初投稿です。


失意の日、その男の心には何が宿る?

 

 

 

 

 私はまた・・・友を失った。

 

 

 

 ナルが息をしていない事を確認した私は涙を堪え、ナルの首に掛けてあった反晶の濃度高め固めたペンダントと私が昔送った結婚祝いのペンダントを外す。

 

 

 

 二つのペンダントとナルから渡された鍵をポケットに入れ、物言わぬ屍となったナルを抱き上げて担ぎ、ゆっくりとだが歩き出す。

 

 

 

 私は竜都の跡形に隣接した地域・・・ワイルズでは[氷霧の断崖]と呼称される場所を目指す事にした。

 

 

 

 その目的はナルの遺体の保存であった。

 

 

 

 今の私個人ではナルの遺体を保存する方法を持ち合わせていない為、自然の力を借りる事にしたのだ。

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 私はただ歩く、背中に担いだ友の熱が冷めていくのを直に感じながらも、私の心は空虚であった。

 

 

 

 

 

  ◯

 

 

 

 

 その後数時間を掛けて、見渡す限り銀世界の場所に辿り着いた私はナルの遺体を下ろし、その遺体に以前護竜の繭から採取し作った布を包ませていく。この布は下手な防具よりも丈夫でしなやかな為、ナルの遺体を優しく包み外敵から身を守ってくれる。

 

 

 

 私は布で包んだ遺体を小さな洞穴に隠してモンスター避けの処置をし、里へと戻った。

 

 

 

 里に帰り先ず私はラナーさんの家に行った。家に着いた後、ラナーさんにナタの容体について聞いた所、どうやら薬草が効いたらしく体調も安定している様で、早ければ三日程で完治するとの事。

 

 

 

 あの二人の忘れ形見が無事なのを確認できた私はナル事についてラナーさんに伝えた。最初は驚いた様子であったが「辛かっただろう」と言いながら私を抱き寄せる。

 

 

 

 その心遣いに対しても私の心は動く事はなく、心ない謝罪しか出来ないまま、逃げる様にその場を後にした。

 

 

 

 ラナーさんの家から出た私は里の人間達にナルが亡くなった事を伝え、遺体に関してはリオレウスが持ち去った為、何処にあるか分からないという事にした。

 

 

 

 遺体がない事もあり、ナルの葬式はナタの病気が回復してから行われる事となった。

 

 

 

 そうして迎えた葬式の日、皆が最後の別れをナルの墓にしていき、その中にナタもいたがその表情はナルの・・・自分の父親の身に何が起きたのか理解できていない様であった。

 

 

 

 私の番が回って来た。イタの時の同様、墓標に私が作ったペンダントを掛け、一言別れの言葉を言おうとするがその場に立ち尽くす事しか出来なかった。

 

 

 

「・・・・・・・・」

 

 

 

 私はその場に立ったままでは里の住人達が不審がるだろうと、頭では理解しているのに口を動かす事も、その場を立ち去る事すらしない・・・いや出来なかった。

 

 

 

 何もする気が起きなかったのだ・・・イタの時の様な自身を責める感情に飲まれるわけでもなく、古代人に対しても抱いた怒りを抱く訳でもなく、心の中身が抜け落ちてしまったかの様な感覚だ。

 

 

 

 そんな状況でも頭では計画を遂行する為には動かねばならないだとか、ナルの遺体を有効活用せねばと言う思考が流れてくるが、その全てが心に開いた穴から抜け落ちてしまう。

 

 

 

 そうやって私は何も出来ず、どれ程の時間がたったかは分からなかったが背後から弱々しい声が聞こえて来た。

 

 

 

「タシン・・・おじさん」

 

 

 

 

 私はその声の主の方にゆっくりと振り返り、声の主・・・ナタに目線を合わせる為に腰を落とし、問いかける。

 

 

 

「・・・何だい、ナタ」

 

 

 

 私はナタに問いかけながら周囲を見やるが里の住人はナタを除き、誰もいなかった。大方、私の様子を見て私を一人にさせてくれたという事だろう。

 

 

 

 私はそんなどうでもいい事を考えていると、ナタがゆっくりと口を開き私に訊ねる。

 

 

 

「おとうさんは・・・どこに、いったの?」

 

 

 

 ああ、やはりこの子はまだ自分の父親が亡くなった事に気付いていないのだろう・・・だがまだ小さなこの子が知るには酷な事・・・そう思った私は小さな子供に亡くなった人の事を言い聞かせる時に使う決まり文句を吐く。

 

 

 

「ナタ・・・君のお父さんはね、遠くに行ってしまったんだよ」

 

 

 

「とおくに?つぎはいつあえるの?」

 

 

 

「そうだね・・・君が大人になった時、必ず」

 

 

 

 会えるから私はそう言おうとした・・・だがその言葉は私の右頬に強い衝撃を感じた事で中断される。

 

 

 

「・・・・・?」

 

 

 

 何が起きたか理解の出来なかった私は、私を殴った何者かを確認しようするがそこには誰もいなかった。

 

 

 

 では幽霊が私を殴ったのか・・・いや違う。今私を殴ったのは・・・私自身だ。

 

 

 

 その結論に至ると殴られた右頬と殴った右手からジワジワと痛みが走ってくるが、それと同時に自分が今何をしようとしていたかを悟る。

 

 

 

 私は今・・・何を思い口走ろうとした?またいつか会える?ナタが大人になった時に真実を告げればいい?

 

 

 

 ナタが大人になれる保障など何処にある?私が明日も生きていると何故分かる?この世界は物語だから原作が始まるまで命の保障がされている?・・・・・違うだろう。ここは物語の世界でも無ければゲームの世界でもない・・・此処は残酷で理不尽が溢れ返り、私やナタがいつ死んでもおかしくない現実の世界だ。

 

 

 

 

 そんな世界で答えを先送りしていいのか?・・・

いい訳がない!!!!

 

 

 

 

 私は先程述べた言葉を訂正する為、改めてナタに告げる。

 

 

 

「ナタ、すまなかった。先程言った事は忘れてくれ」

 

 

 

 私の言葉にナタは案の定困惑の表情を浮かべる。それはそうだろ、目の前で話していた人物が突然自分自身を殴り、訳のわからない事を言ってくるのだ・・・困惑するなというのは土台無理な話である。

 

 

 

「そ、それってどういう・・・」

 

 

 

「ナタ、お前のお父さんはね。死んだんだよ・・・もう会う事は出来ないんだよ」

 

 

 

 私の告げた決定的な言葉に先程まで困惑していた顔が、段々と悲しみで溢れてくるのが分かる。

 

 

 

「もう・・・あえないの?おとうさんにあえないの?」

 

 

 

「ああ、そうさ。もう会えないんだよ」

 

 

 

 だが此処で終わらせてならない、いや!伝えなければならない!!

 

 

 

「ナタ、何でお前の父さんが死んだが・・・分かるかい?」

 

 

 

 泣きじゃくる顔でナタは考えている様だが、何も思いつかずただ頭を横に振るのみ。

 

 

 

「お前の父さんはね・・・ナタ、お前を守る為に死んだんだよ」

 

 

 

「ぼくを・・・まもるため?」

 

 

 

「ああ!そうだよナタ!!病気で苦しんでいたお前を助けようと身体がボロボロになろうとも必死に抗って抗って・・・そうして帰ってくる事が出来なかった」

 

 

 

 ナタに伝わっているかは分からないがそれでも言葉にして、思いを形にして伝えなければいけない、お前の父親がどれ程偉大な存在であったかを!

 

 

 

「それでもお前の父親は・・・人の親として立派な最後だったよ」

 

 

 

 私の言葉を受けたナタは顔を伏せその表情を窺う事が出来ずに私がいると・・・一言、私に問いかけてくる。

 

 

 

「タシンおじさん・・・」

 

 

 

「何だい?」

 

 

 

「ぼくのおとうさん・・・すごかった?」

 

 

 

「ああ、すごかったよ・・・親友として誇れる程に・・・」

 

 

 

 その答えを聞いた直後、ナタの涙腺は崩壊し洪水の如く流れ出す。

 

 

 

 私は泣き叫びながら父の事を呼び続けるナタをそっと抱き寄せ、少しでもその悲しみを和らげようとする。

 

 

 

 そうして私は・・・いや、俺は決意する。

 

 

 

 今までの様にただ前世で気に入らなかった物語を是正しようとする考えを捨て、俺の腕の中で泣いている小さな男の子・・・俺の親友達から託されたこの子をあの小さな英雄達にも負けない、偉大な英雄として育てようと・・・この子が英雄となる為の障害・・・

 

 

 

 

 エアプタシンおじさんになる事を!!

 

 

 

 

 

  ◯

 

 

 

 

 

 

「あら?思考誘導解けちゃった」

 

 

 

 此処は人類が未だ到達出来ていない未踏の地、そんな場所にただ一人・・・[白]がいた。

 

 

 

「あはっ、凄いわ!凄いわ!凄いわ!掛かりが甘かったとは言え人の身で私の術を解いてしまうなんて!!」

 

 

 

 [白]は今まで誰も成しへなかった偉業を成し遂げた者達へと賞賛を送る。

 

 

 

「やっぱり、この世界の魂じゃないからかしら?だからその魂に長く触れ合ったあの子達も思い出す事が出来たのかしら?」

 

 

 

 そうして[白]は新たな英雄・・・いや、英雄と対を為す存在の門出を祝う。

 

 

 

「ふふっ、私の手助けがあったとは言え此処までくるとは思ってなかったわ。これ以上は[黒]も黙っていないし、私の出番はおしまい・・・さあ見せて頂戴、貴方達の物語の行く末を・・・私の退屈の凌ぎに足るのかどうか・・・ね?」

 

 

 

 

 









[白]が物語に於いて行った事



一つ目:守人の里の住人に対し、記憶の書き換え。

タシンにはそれに加え、怪我の治療、認識阻害と思考誘導(物語序盤からエアプタシンになろうとしたのはこの術の為)


二つ目:里付近での地震。

地震が発生した事により原作よりも早くに護竜が活動を開始、これによりタシンが大型の護竜の血を採取する事が出来た。


三つ目:遺物及び手記の提供

タシンの研究が行き詰まった時にその状況を打破する事が出来たのはこの為である。



Q.何で古龍である[白]が古代人の遺物を持っていたのですか?



A.あの遺物は元々私のではなく[赤]の所有物だったの。私が事情を話すと快く譲ってくれたわ・・・やっぱり持つべきは優秀で謙虚な家臣ね!!








Q.[赤]は何故古代人の遺物を所持していたのですか?何故[白]に快く渡されたのですか?



A.何?何故俺が古代人の遺物を持っていたか?だと。



ほう、今の俺にその質問が出来るとは余程の蛮勇かそれとも唯の死にたがりか・・・まあいい、その度胸に免じて話してやろう。



あれは千年ほど前か・・・竜都が栄えていた時期だ。俺はあの都に唄のネタがないか訪れ、偶々入った酒場で偶々隣に座った奴がいた。



そいつは故郷を離れ竜都に来たそうだが、見た目からして貧弱で俺の指一本どころか息を吹きかけるだけで死んでしまいそうな奴だったよ。



ただ、その男の心は違った。まだ、ハンターは存在していなかったとは言え、既に英雄と呼ばれる者達は存在していた。その英雄達にも負けない異質な魂、そしていつか龍や竜と人が平和に暮らせる世の中に出来たらいいなどと世迷言を垂れていたモノよ。だが、男が語る夢とその魂に俺は惹かれたのだろう・・・いつしかそれが友と呼ぶべき存在であったのだと俺は知ることになった。



だが、奴との交流はそれ程長く続かなかった。何故なら奴の故郷が[黒]の[劫火]により焼き滅んだからである。



どうやら奴の故郷では竜騎兵・・・イコールドラゴンウェポンなる兵器を開発し、それが[黒]の逆鱗に触れたのだ。それだけならまだ尚良かったのだろう・・・だが、故郷と共に最愛の妻と子供が焼き尽くされた男の心と魂は変わってしまった。



あの高潔な魂と平和を求めた男は死に、残った物は唯龍を憎み、狂気に塗れたモノのみであった。



後は貴様が知っている通りだ。奴の故郷同様、竜都も[黒]により滅び古代人の文明は途絶えた。



だが、俺は[黒]によって焼かれた竜都に於いて、奴の[劫火]から免れた・・・かつての友だった者の遺品を集め、誰の手にも届かぬ地に俺と酒を酌み交したあの男の思い出と共に封印したのだ・・・









その様な事情を知ってしか知らずか、俺の不意を突くように突然現れた[白]が「遺物、持っているのでしょ?出しなさい」と言いながら俺をボゴボコにし、俺の口から封印場所を吐かせると奴は俺の思い出ごと、封印をブチ破り全てを持ち去ってしまった・・・


チッ!思い出しただけで怒りが湧き上がってくる!!決めたぞ!今から奴の巣に隕石爆撃してやる!!憤怒の化身を相手に怒りを逆撫でさせた事を後悔させてやる!!




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