「飛ぶ鳥よ・・・
「運命・・・ですか?」
「ああ、貴方のこれから辿る先・・・何が起こるかは私にも分からない・・・だけど、貴方が今尚忘却しているあの日について、何が起きたかを知らないのは流石に不公平だからね。その事を伝えにきたというわけさ」
あの日・・・私が私という事を自覚した15歳頃の事を言っているのか?だが・・・
「耳の方・・・私は貴方に何度も昔の事でお聞きしたい事があると言ってきました。ですが・・・貴方はいつも話をはぐらかすばかりではなかったですか、何故今になって?」
私の言葉に[耳の方]の表情に、昔見た陰りが生まれる。
「それについては申し訳ない事をしたね、
あの[耳の方]が逆らえない程の相手?一体・・・
「さて、此処じゃあ人目に付くかもしれないね。歩きながら話そうか」
[耳の方]は私にそう言うと、その見た目以上に力強い足取りで里の外に繋がる道に向かって歩き出す。
「ちょ・・・お待ち下さい!」
私は慌てて、[耳の方]の追って走る。私が追いつくと[耳の方]は先程の続きを話す為に口を開く。
「あの日、私はあるお方と一緒にこの守人の里を訪れた・・・それが貴方の運命の始まり・・・」
○
私はあるお方・・・そうだね、此処では[
「なんだい?どな・・・[耳の方]!?わ、私の家に何か様でも?」
家を訪ねた時、最初に会ったのはラナー・・・
要件を言おうと私が口を開こうとしたが、それを[白]様に遮られてしまってね。ラナーに術を掛け家の外に追い出してしまった。何故そうしたか聞いたら「
そうして、私と[白]様は貴方と対面したのさ。その時、私が抱いた印象は・・・翼をもがれ、巣から落ちて親鳥に助けを求めて囀る小鳥の様だったよ。
以前の貴方は・・・そうね、
・・・余りに気の毒なその姿を[白]様は不機嫌そうにこう告げた。
「・・・期待して損したわ、これじゃあ入り口にいた
その言葉を聞いた貴方は自分の親友達の事だと気付き、酷く憤っていたわね。
その後は家にいた筈の母親の事や私には分からない事を言っていたわ。でもその中で
「あら?貴方・・・私の事を知っているのね?少しだけ興味が湧いたわ」
[白]様はそう言うと、私が瞬きをして目を開けた時には既に貴方の前にいて、意味のない抵抗をしようとする貴方の頭を掴み、心の内側・・・記憶を読み始めたようだった。
「・・・予想通り、
そうして[白]様が記憶を読みながら呟く言葉を私は聞いていた。
「検索・・・動画サイト?此処で私の事を知ったのね・・・ん?何かしら」
そうして記憶を読み続ける中で[白]様の興味を引く物を見つけたらしいわ。
「えあぷ・・・タシンおじさん、語録?・・・ふふっ」
唐突に笑みを浮かべ笑い出す[白]様は貴方から手を離して、先程とは打って変わり上機嫌になっていたのさ。
手を離された貴方は呼吸を忘れていた様で大きく咳込み、何とか息を整えようとしていた・・・そんな状態に構う事なく[白]様は言った。
「面白いわ!面白いわ!貴方、
[白]様の言葉に貴方は理解が追い付いていなかったみたいで、何も言わない貴方に事の真意を告げたの。
「私は今まで数多の英雄達を見届けてきたわ。でも、
貴方に言葉を発する権利はない・・・そう言わんばかりに[白]様は話続けた。
「勿論、
そう言うと[白]様は自身の手首を切り裂き、流れる血を貴方の身体に浴びせると痛々しい傷痕を全て癒してしまったわ。
「な!?傷が!!」
「私の術で癒す事も出来たけど、
終始困惑気味の貴方に対して、[白]様は不適な笑みを浮かべ、冷酷に告げた。
「さあ、
「ま、待て!!僕はまだ!!」
「だめよ?だめだめ・・・貴方は既に
[白]様は手を翳すと貴方は意識を失った様に項垂れ、[白]様の思うがままになった。
「そうね・・・先ず要らない記憶は消してしまいましょう。次に思考誘導ね、これで私の望む者になってくれる・・・そうそう、認識も歪めてしまいましょう!そうすれば、里の人間の行動に違和感を持っても記憶の齟齬は生まれないでしょう。後は、貴方が行動する際にあの母親がいると邪魔そうだからそこの改変も必要ね」
そうして翼をもがれ、嘆いていた小鳥が
◯
「その後は里の人間達の記憶を消し去り、改変を施して[白]様は去ってしまわれた」
私が語られる事はそれだけ、と言わんばかり口を閉ざす[耳の方]を余りの情報量で思考回路が機能不全を起こし掛けていた私は何も答える事が出来ず、沈黙が広がっていく。
そんな私の様子を見兼ねた[耳の方]が私に問いかけて来る。
「貴方は過去を知った。なら次にやる事を一つ・・・選択する事」
「・・・何を、ですか?」
「決まっているじゃない、
その言葉を聞いた私はある疑問が浮かぶ。
「そもそもが今回の件、その[白]という方はご存知なのですか?聞いた限りでは私の今の状況は強制的で選択する余地などない筈・・・」
私の疑問に対して耳の方は
「そうさ、今私が伝えた事を含め・・・全て私の
そう話す[耳の方]の話す声色には後悔と懺悔の様な物が混じり、私に伝わって来る。
「だからこそ、私は決めたのさ。いつか来る日・・・タシン、貴方の計画が進みある程度の目処がついた頃。真実を伝え
それは・・・確かに悪い話では無い。[白]という恐らくこの世界では人が抗う事が出来ない
「ありがとうございます。ですが私はあの子を・・・ナタを引き取った時に道は決めたんです。私が進むべき、
私の言葉の聞いた[耳の方]は目を瞑り、一言溢す。
「分かった・・・見守っているからね」
◯
月明かり照らされた道、その道を歩く[耳の方]只一人。その顔は少し晴れやかの様で、だがそれ以上に
私は結局、傍観者だった・・・たった一人の子供を犠牲に私が長をしている交わりの峰、いや西側の国では禁足地と呼ばれる
そうして[耳の方]はこれまでの事を振り返る。
始まりはそう、いつもの様にあらゆる地域で起きる事象を眺めていた。そんな中、守人の里で変わった事をする子供を見つけた。
最初は只、見守っていただけだった。しかし、その子供を見ている内に偶にこの峰に訪れるあの方の言葉が蘇った。
『
我が君と敬う[白]様の言葉を思い出した私は、以前教わった連絡手段であの子供について教えた。
それから直ぐには特に何も無かった。だが、[白]様がいつもの様に不意に訪れ、私に起こる・・・いやこの地域全てに起こる残酷な運命について語られた。
「もう直ぐ[
そう言われた私は直ぐに[白]様に問い返した。今思えば、何たる不敬かと自分を戒めるが[白]様は私に罰を与える事なく、答えをくれた。
曰く、[黒]様は異世界から来た[
ならば我が使命は[転生者]の抹殺、そう自らの運命を定めた[黒]様はこの世界に[転生者]が生まれる事を是とせず、これまで生まれてきた者は全て彼の方の劫火によって焼き尽くされてきたらしい。
そこで疑問が一つ生まれた、ならどうしてあの子供は今まで生かされてきたのか?その答えが[竜灯]から始まるこの地域全体に伝わる竜乳のエネルギーが[転生者]の魂を上手く隠してくれていたらしい。それも
だからこそ、今まで関わる事すら出来なかった[白]様が介入する余地が出来たのだと言われていた。
ではこれからどうするのかと私は[白]様に訊ね、そのお顔に笑みを浮かべ答える。
「
◯
そうして私は一人の子供を犠牲に
後悔はある、当たり前だ。本来なら分け隔てなく守るべき命・・・その命を守れない後悔は、今からでも遅くないと私の心に語り掛け、来た道を戻ろうとする。
『ナタを引き取った時に道は決めたんです。私が進むべき、
あの子の・・・タシンの言葉を思い出し、戻ろうとするのをやめて月明かりに満ちた夜空を見上げる。
タシンが決めた道を・・・
「タシン・・・貴方の行く末を、最後まで見守るわ」
あの命を最後まで私の目で見守る、私がそう決めたのだから。
追記:傍点振りとルビ振りを覚えたのでこれまでの話にも随時追加していきます。前書きのコメントに関しては投稿から三日後を目処に削除させて頂きます。