誤字指摘をして頂いたアレベラ様、マグネット様、ありがとうございます。
自分も何度か見直していますがどうしても見落としがあり、とてもありがたい事です。
あ、本日少し長めです。
やぁみんな、タシンおじさんだよ。
古代人の悪行にブチ切れていたおじさんさ・・・
いや、何・・・流石に安全を確保していた場所であったとはいえ、あの場所は深層・・・あんな大声で喚き散らしていれば、いつ護竜に襲われてもおかしくは無かった・・・私の運は本当に良いのだろう、悪運がだろうが。
さて、あれから私は古代人と同じ轍は踏まないと決意をしたまでは良かったが、実験は全くといい程上手くいかなかった。
護竜の血の比率が悪いのかと思い、原種の遺伝子の比率を多めに投与すれば、変化が起こる事なく素体の過剰な免疫反応で検体が死亡してしまった。
ならばその逆はと思い、護竜の機構を比率多めに投与してみれば、一部の変貌が見られるがそこまで、こちらの検体もまた死亡・・・というか爆散する。
私は何故検体が弾けてしまうのか考えるが恐らく、護竜の機構が検体の細胞を変貌させようとした際、細胞側が許容限界を迎え自壊・・・その反応が検体の身体全体で起きる為、観察者の目には弾けている様に見えて、実際は崩壊現象が発生したのだと推測する。
ならばと、私は自らの腹の皮膚の一部を切り出し、その皮膚に護竜の血を投与する実験を行った。
結果は私の皮膚は完全な変貌を遂げた・・・皮膚が鱗に変わったというべきか。
しかして、ほんの数分で他の検体の様に崩壊してしまった・・・ここから考えるに、私の身体はどうやら一般人よりは適合していたが、適合者としては不十分という事だろう・・・時間ならまだある筈だ・・・ゆっくりと、だが確実に前に進むとしよう。
◯
そうして古代人の実験記録を発見してから2年程の時間が流れた。
実験はというと失敗の連続であったと言っておこう・・・あれから様々なパターンで実験をし、試せるだけ試したのだがどれもイマイチ成果が出ず、既に万策尽きた状況だ。
「あ〜くそぉ〜やる気が出ん・・・」
余りに成果が出ない私は現在、自宅の部屋にあるテーブルにうつ伏して不貞腐れていた。
勿論、全く研究が進まなかった訳ではない。護竜の血に手を加えても余り効果が無いとなれば、素体の方を弄ればいいのでは?という発想が浮かんだ為、その実験もやってみた。
そちらの方は捕獲した生物は全滅・・・だが、私の身体には少なからず成果があった。
これは私が[人体の改造術について]という、下手したら前発見した手記よりも凶悪な物を発見したが、此方は自らの身体を使った実験という別のベクトルでトチ狂っているくらいでまだマシだっため、参考に使わせて貰った・・・二度とやろうとは思わんが・・・
成果の内容としては、前回は数分で崩壊現象が起きていたが、改造後は数十分迄伸びたのである・・・ウ◯トラマンよりマシになったとは言え、あれだけの思いをしてこれだけか・・・と落胆したものである。
まあ、この結果から計画のサブプランの発動が可能となった為、最悪護竜を操る術が手に入らなくとも問題は無いと判断した。
そうやっている内に二年も経っていた事に驚いた為、久々に頭脳労働は休もうと家で堕落を過ごしていたのだ。
「・・・しかし堕落を満喫しようとは思ったが何をすれば良いか分からん・・・」
これまで探索実験探索実験実験実験・・・と過ごして来たこの身体では堕落を過ごすには少々遅すぎたのではと内心焦りが出る。
昔は何をしていたかな?とナルとイタと共に過ごしていた頃の思い出をほじくり返そうとした所。
「おーい、タシーン!!いるかー!!」
何やら自宅の外から声が・・・いや、分かっている。呼び鈴があるのに声を上げて私を呼ぶ奴は一人しかいない。
「たく・・・呼び鈴使えって前から言っているのに・・・」
私は愚痴りつつも身体を起こし、のそのそと玄関まで歩き、鍵を開け扉を開く。
「どうした?何か用か?」
「なんだ?寝てたのか?悪い悪い!!」
私の予想通り・・・予測するまでも無い。玄関を開けた先には私の幼馴染にして親友のナルがいた。
全く謝礼の意のない謝礼を言いつつ、用件であろう何かをからっているバックから取り出すナル。
「実はさ、こいつの弦が切れちまってよ、直してくんない?」
取り出したのはいつぞや私が作った射出機であった。
「ほう・・・見せてみろ。」
私の返答にナルは射出機を渡す事で応じ、それを私は受け取り状態を確認する。
「うむ・・・大分年季が入ってるからなぁ。一回バラしてみないと分からんな。」
どうやらナルは昔私が教えていた通りにメンテナンスをしていた様で全体的に外部には損傷している箇所は無く、弦が切れているだけにしか見えないが内部構造の方はバラしてみない事には判断が出来なかった。
「そうか!じゃあ、頼めるか?」
「ああ、良いぞ・・・その代わり蜂蜜を取って来てくれ、役目だろ?」
「はぁ!?ふざけんなよ!前に俺がどういう目にあったか忘れたのか!?」
「ハッハッハッ!!冗談だよ冗談!!」
少し前に蜂蜜を採取しようとして返り討ちにあった親友の顔面が腫れ上がり、里に帰ってきたナルの顔を笑った事が未だに根にもっている様でナルはまあまあ切れ、私は思い出し笑いを少々しながらナルの頼みを了承する。
「少しの間預からせて貰うぞ・・・そう言えばナタはどうした?」
「ん?ああ、俺はさっきまで門番をしててな。ラナーさんの所で見て貰ってるんだよ。」
「成程、それなら安心だな。」
あの人の育児スキルならまず間違い無いだろうと私は思い、私はその後もナルとたわいもない会話をする。
ああ、だが神様がこの世にいるとすればきっと今の私を見てこういうのだろう。
「はぁ・・・はぁ・・・ナル!!タシン!!」
誰かの走ってこちらにやって来る声が聞こえ、声がする方向を見るとそこにはラナーさんがいた。
「おや?どうされました?そんなに慌てて。」
私の質問を聞いてなのか、息を荒くしていたラナーさんは勢い良くナルの両肩を掴み告げる。
「いいかいナル!!よくお聞き!!」
その並々ならぬ気迫に圧倒された私達は黙って頷く。
「ナタが・・・あんたの息子が高熱で倒れた・・・」
お前の運命に安寧は無いと・・・
◯
その後、私とナルはナタのいるラナーさん家に向かった。
ラナーさんの家に着き、中に入るとベットの上で苦しがりながらうわ言を言うナタとラナーさんが呼んだであろう、里唯一の薬師の男がいた。
「流行り病だな、間違いない。」
どうやら既に診察を終えていたらしく、ナタが患っている病名を断言する・・・だがそれはおかしい・・・
「おかしいだろ!その流行り病は先月終わった筈だろ!?」
ナルの言う通り二ヶ月程前から里全体で子供を中心に流行った病気で大人の罹患率は少なく、薬師や私を含めた大人達の協力もあり、僅か一月で終息したと思っていたが・・・
「この病気の元になったのはネズミだったのはお前らも知ってるだろう?・・・どうやら、根絶した筈が生き残りがいた様だ・・・そいつはもう潰したが、運悪くこの子に罹ったらしい。」
「そ、そんな・・・」
薬師の言葉に落胆してしまうナル、本来ならこの病気は[耳の方]が持ち込まれる薬草さえあれば、完治が可能だ・・・しかし
「なぁ・・・薬草は残ってるよな・・・そうだと言ってくれ・・・」
「・・・お前も分かってるだろ?在庫は全て先月使い果たした・・・今はもう無い。」
「・・・・・・」
そう、既に薬草はなく私の手持ちも全て渡した為、この里には何処にも無いのだ。
それを理解しているナルは誰も責めることが出来ず、ただ強く拳を握っている。
「・・・・・・」
私はただ、そっとナルの肩に手を置くが・・・彼をどう励ませば良いか、今の私には分からなかった。
◯
薬師の診断から三日たったが、ナタの病状が改善する事は無かった。
幸いにも大人にはかかりにく病気の為、私とナルで交代で看病しラナーさんがフォローに入る形となっていた・・・因みに最初はナタを家に連れ帰ろうしたがラナーさんが
「あんた、一人で見れる訳ないさね!!」
とナルを一喝し、そのままラナーさんの家で看病する事になったのである。
そんな中、薬師はと言うと薬草が生えて無いか探してくると里の外に出ている・・・だが期待は出来ない、現在の時期は荒廃期・・・実りが遠いこの時期では新たな命が芽吹く事はなく、仮に残っていたとしてもそれはナタの病気を治す事は叶わないだろう。
[耳の方]が来る時期でも無い為、このままではナタの命は時間の問題であろう。
私はそんな最悪な状況が頭を過ぎながら、ナタの額の汗を拭ってやる。
「うぅ・・・・」
ナタの苦しむ姿を私はただ眺める事しか出来ないまま、時間が過ぎて行き気付けば交代の時間になっていた。
「タシン、疲れているだろ?家に帰って休んでこい。」
「すまないな、恩に切るよ。」
「おいおい、それはこっちのセリフだぞ・・・バカ・・・」
そうして私は一旦自宅に戻り仮眠をする事にした。
「・・・一体どうすれば・・・」
自宅に戻った私は眠る前にこれから対応について考える為、前回の休憩の時に弦を張り直したナルの射出機を手で弄りながら考える。
「何かいい方法は・・・ん?」
何か無いかと考えながら射出機を眺めているとある違和感に気付く。
「あ〜あ、本体と機構を支える骨組みにヒビが入ってるな・・・これじゃ持って一回撃てればいい方か?」
これでは新しく作り直すか、骨組みを一式替えるしかない・・・確か材料は仮拠点のほ・・・うに?
「そうだ!!仮拠点だ!!」
クソ!!今まで忘れてたなんて私はなんて間抜けだ!!
そう、仮拠点には研究道具以外にも物資をある程度貯蓄してあるのだ・・・勿論[耳の方]の薬草も・・・
「量は・・・そんなに無かった筈だがナタを治す分には十分な筈だ!そうと決まれば急いで行かなければ・・・」
私は軽く身支度を済ませ、急ぎ出発するのであった。
◯
全く・・・運が悪い!!よりにもよって何でこんな日に奴と出くわすのだ!!
私が里を出で半日・・・本来なら数時間で往復出来る距離なのだが、最悪な事にあのタコ野朗事[暗器蛸シーウー]の触手が最短ルートを塞いでいたのである。
普段ならポンチョ被って横切れば問題なのだが、慌てて出た為にポンチョを忘れてしまい、遠回りのルートになってしまった挙句そのルートも落石で塞がっており、更に遠回りとなってしまった。
お陰で現在深夜一歩手前という状況だが、何とか無事里に着く事が出来た・・・後はこれをナタに飲ませれば万事解決だ・・・
そうとなれば善は急げと言わんばかりに私はラナーさんの家まで直行し、玄関をたたく。
「すいませーん、タシンです!開けてください!」
そう私が呼び掛けると玄関が開き、ラナーさんが顔を覗かせるが少し動揺しているのが伝わって来た。
「タシン・・・?あんた、ナルに合わなかったのかい?」
「・・・?いえ、会っていませんが?あいつがどうしました?」
私の質問に彼女は少し言い淀みながら答える。
「いやね、私もよく分からないけどさね・・・少し前にナルが何か思い出した様な顔したかと思えば、私にナタを頼むって言って何処かに行こうとしたから何処に行くんだい?って聞いたらナルの奴、お前の家に行くって言ってたからね。」
その時、私の胸中は嫌な焦燥感に駆られ、何故か分からないがナルを追えと言っている気がしてならなくなった。
「ラナーさん、ナタにこれを飲ませてやって下さい。自分はナルを探しに行って来ます!」
「探しに行くって何処へ・・・ってお前!これはどうしたんだい!?」
「先程里の外で見つけたんです!!では!!」
私は適当な理由で薬草をラナーさんに託してその場を後にし、急いで自宅へと向かった。
自宅に到着したがナルの姿はなく、玄関を開け中に入る。
「・・・思い過ごしだったか・・・」
玄関の鍵も閉まったままだった為、私の勘違いかと安心し、何気なく部屋を見渡した時だった。
「ん?・・・なにか・・・」
違和感を感じた私はもう一度部屋を見渡した時、違和感の正体に気付く。
「な、ナルの射出機が無くなっている!?」
そう出掛ける前に確かにテーブルの上に置いて来た筈の射出機が無くなっていたのだ・・・私はそれに対して酷く動揺する。
「一体どうやって家の中に・・・」
いや、今はナルがどうやって私の自宅に入ったかなどは重要ではない・・・重要なのは、ナルがわざわざ射出機を持って何処に行ったかだ。
「・・・・・」
射出機が必要なのは里外に出て護竜に遭遇した際に対処する為・・・しかし里の外に出て遭遇する護竜といえば最近ではセクレトかリオレウスぐらい・・・リオレウス?
『・・・まぁ、いいさ。それよりもリオレウスの縄張り、思ったより近かった・・・早く帰ろうぜ。』
ふと、昔彼が言った言葉を思い出した・・・そう、よくよく考えればおかしいのだ。
彼は何故あの時、リオレウスの縄張りを把握できたんだ?
リオレウスのマーキングを見つけたのか?それとも他に狩られて獲物がいたのか?いや違うそんなものではない・・・まさか?
「まさか・・・あの時、巣を見つけていたのか?リオレウスの・・・」
もし、巣の位置があの場所から近かったのならナルの発言に納得がいく・・・しかし、リオレウスの巣とナル行動に結びつく点等・・・
「・・・もしも、巣を見つけた時にあれも一緒に見つけていたとしたら?」
もしそうなら、ナルの行動に説明がつく・・・護竜に遭遇する可能性が高くてかつ、今ナルが一番欲している物・・・それは
「リオレウスの巣に薬草が生えている!!」
そうと分かれば私は急ぎ、ナルの元へと走った。
◯
「く、くそぉ・・・以外と遠いぞ・・・」
里から出て三十分程走ったが、今日丸一日活動していた為か普段なら疲れない距離で足がもたつき思う様に動けない・・・そんな身体をよそに私の心は未だに焦燥に駆られる。
「み、見えたあの位置の筈だ!!」
私が昔、深層のルートを探索する際に割り出したリオレウスの行動半径から大まかな奴の巣の位置は割り出していた・・・時刻は既に深夜、ナルが奴と遭遇していなければいいが・・・
と考えていると夜闇を切り裂く光が前方で瞬く。
「ま、まさか!?あれはナルの射出機の閃光弾!?」
不味い!不味い!急げ!!私の足!!動けぇ!!
既に限界だった足を無理矢理動かし全力で走る。そうやって走っている内に短い洞穴を抜け、開けた広場の様な場所に出る。
「・・・ああ・・・」
そうして私が見たのは怒り狂うリオレウス
血の海に沈む幼馴染