英雄の影に生きる一般兵ハロルド   作:パパリア田中

12 / 44
闘技場

 朝の陽が差し込む宿屋の部屋で、ハロルドは武具の手入れをしていた。

 

 刃こぼれのある軍用剣の刃先を確認しながら、ゆっくりと砥石を滑らせる。

 

 (……さて、どうするか)

 

 金がない以上、どこかで稼ぐ必要がある。

 

 候補はいくつかあったが、最も手っ取り早く稼げるのは闘技場の試合だった。

 

 王都には、兵士や傭兵たちが腕試しをするための**「闘技場」**が存在する。

 

 正式な決闘ではないが、賭け試合も行われており、勝てば賞金が手に入る。

 

 ハロルドは剣を鞘に収め、宿を出た。

 

 

 

 闘技場の入り口には、試合を見物しに来た兵士や貴族の姿があった。

 

 内部では、砂塵舞う円形の闘技場で二人の剣士が戦っている。

 

 観客席では、兵士や商人たちが賭けに興じ、歓声を上げていた。

 

 「おい、ハロルドじゃねえか」

 

 入り口付近で、顔見知りの男が声をかけてきた。

 

 ラウル。同じ部隊の兵士で、賭け試合の常連だった。

 

 「お前、ここに来るのは珍しいな」

 

 「金がいるんでな」

 

 ハロルドがそう答えると、ラウルはにやりと笑った。

 

 「なら、いい試合があるぜ。お前、ちょっとした見世物になってみないか?」

 

 「……どういう意味だ?」

 

 「兵士どもが『無能力の兵士』とやりたがってるんだよ。お前、見た目は地味だからな」

 

 ハロルドは軽くため息をついた。

 

 (つまり、俺が雑魚役というわけか)

 

 賭け試合では、こういう話はよくある。見た目が弱そうな兵士を前座にして、客を盛り上げるのだ。

 

 「賞金は?」

 

 「勝てば銀貨十五枚。負けても一枚だ」

 

 ハロルドは考えた。

 

 (悪くない。勝てば半月分の食費にはなる)

 

 「いいだろう」

 

 ハロルドは剣を構え、試合場へと向かった。

 

 

 

 

ハロルドの対戦相手は、普通の兵士だった。

 

剣の腕前はハロルドと同じ剣技F。

 

「試合開始!」

 

ギィン!

 

互いに剣を交えるが、ハロルドはすぐに相手の癖を見抜いた。

 

(……剣を振るのが大きい)

 

相手の隙を突き、剣を弾く。

 

さらに、足を引っ掛けて転ばせる。

 

「ぐっ……!?」

 

剣を相手の首元に突きつけた。

 

「試合終了! 勝者、ハロルド!」

 

 

 

次の相手は、経験豊富な兵士だった。

 

(こいつは俺よりちょっと上だな……)

 

試合が始まると、すぐに強烈な突きが飛んできた。

 

ガキンッ!!

 

ハロルドは咄嗟に剣を合わせたが、力負けしそうになる。

 

(まずい……まともに打ち合うと負ける)

 

そこで、ハロルドはわざと後退しながら砂を蹴り上げた。

 

「ッ!?」

 

相手が一瞬ひるんだ隙に、ハロルドは懐に飛び込む。

 

バキィッ!!

 

拳を顎に叩き込み、相手を吹き飛ばした。

 

「試合終了! 勝者、ハロルド!」

 

 

 

三戦目、相手は明らかに場慣れした傭兵だった。

 

(やばいな……こいつは強い)

 

試合が始まると、すぐに猛攻が飛んできた。

 

「チッ……!」

 

剣を合わせるが、受けるのが精一杯だった。

 

(勝てねえ……!)

 

そこで、ハロルドは防戦しながら時間稼ぎをすることにした。

 

試合には時間制限がある。

 

相手はイライラし始め、無理な攻めをしてくるようになった。

 

(今だ!)

 

ハロルドはカウンター気味に体当たりを仕掛け、相手を場外ギリギリまで追い詰める。

 

だが——

 

「終わりだ!」

 

相手が最後の一撃を放とうとした瞬間、試合終了の鐘が鳴った。

 

「試合終了! 引き分け!」

 

(……助かった)

 

ハロルドは安堵の息をついた。

 

 

賞金獲得

 

引き分けでも、それなりの報酬は出る。

 

最終的に、ハロルドは銀貨35枚を手にした。

 

(しばらくは食いっぱぐれないな)

 

ハロルドは懐に金をしまい、闘技場を後にした。

 

 

 

宿に戻ると、リナが待っていた。

 

「おかえり……」

 

「ただいま」

 

「何してたの?」

 

「ちょっとした仕事だ」

 

リナはハロルドの服についた砂埃を見て、すぐに察したようだった。

 

「……怪我、してない?」

 

「大丈夫だ」

 

ハロルドは椅子に腰を下ろし、稼いだ銀貨35枚を袋に入れる。

 

「それ、お金?」

 

「ああ」

 

リナは袋の中を覗き込むと、目を丸くした。

 

「こんなに……!」

 

「しばらくは何とかなる」

 

リナはほっとしたように微笑んだ。

 

(この笑顔を守るためにも、次の仕事を探さないとな……)

 

ハロルドは剣を見つめながら、次の手を考えていた——。




参考までに一試合目の相手は無能力
ニ試合、三試合がベテランの相手
(とは言ってもRPGゲームで言うゴブリンに負けるような敵)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。