リナとオーウェンが、戦場に現れた。
ハロルドは、目を疑った。
(なぜ、ここに……!?)
王都に残したはずの二人が、戦場へ来る理由がわからない。
「お前たち……どうしてここにいる?」
ハロルドが問いかけると、リナが静かに答えた。
「……生きるためよ」
「生きるため?」
オーウェンが唇を噛みしめながら、口を開いた。
「……スラムは、もうない」
「……何?」
「焼かれたんだ、スラムのすべてが。貴族たちが”浄化作戦”と称して……何もかも燃やした」
ハロルドは息を呑んだ。
(そんなことが……)
スラムの虐殺——。貴族が王都の治安維持の名目で、スラムごと反乱の火種を潰したのか。
リナの表情には怒りも悲しみもなかった。
(……いや、違う)
その目の奥に潜むのは——暗い闇。
燃え落ちるスラムを見た彼女は、何を思ったのか。
「それで、ここに来たのか?」
「……他に行く場所がないもの」
リナの声は冷たい。
彼女にとって、スラムは”地獄”だったはずだ。それでも、そこが消えたことで”何か”が生まれている。
(……リナ、お前……)
ハロルドは、彼女の変化に気づきながらも、今は問うべきではないと判断した。
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戦場の現実
「敵軍、接近中! 全軍、戦闘準備!」
陣地に響く号令。
バジルス軍が前進し、戦闘の幕が上がる。
「ハロルド、行くぞ!」
「ああ!」
ハロルドは剣を抜き、前線へと駆け出した。
目の前の敵兵が槍を構え、突撃してくる。
(来い……見えてる!)
剣技Eの効果で、敵の動きが読める。
槍を受け流し、懐へ踏み込む——。
「はっ!」
剣を振り下ろし、敵の首元を切り裂く。血が飛び散り、敵兵が崩れ落ちた。
その隣では、ロバートが二人の敵を相手にしながら、豪快に斬り伏せている。
戦場は混沌としていた。
一方、リナとオーウェンは後方にいた。
「リナ……やっぱり、俺たちは——」
「私は戦う」
オーウェンの言葉を遮るように、リナは短剣を抜いた。
「リナ……?」
「生きるためよ」
その言葉には、過去の名残があった。
スラムで生きるために、彼女は——“何か”をしていた。
(リナ、お前……)
オーウェンは、彼女の瞳に宿る冷たさを感じ、戦慄した。
その時——
「——ッ!」
敵兵がリナを見つけ、剣を振り上げた。
(やられる!)
オーウェンは恐怖で動けなかった。
だが、リナは一瞬の隙を突き、短剣で敵の喉を裂いた。
「がっ……!」
敵兵は血を噴き出しながら倒れる。
オーウェンは、戦慄した。
(この動き……)
リナの殺しの動作は、素人のそれではなかった。
(リナ、お前……本当に……)
彼女の過去が、オーウェンには理解できなかった。
「……さ、次よ」
リナは冷たく言った。
戦場の地獄は、まだ続いていく——。