アインズ様を怒らせたクズ男(改)   作:黒郎丸

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メイドを棍棒にするクズ男

 

 「だぁああらっしゃあああああッ!!」

 

 「ぶべら……ッ!」

 

 

 金髪のメイド悪魔は、あっさりと死亡した。

 彼女の体は物理攻撃にある程度の耐性を持つ粘液のようだったが、レベル差によるものか、あっけなく核となる部分まで撃ち抜かれてしまった。

 

 

 「……ッな!?」

 

 「どけッ!」

 

 

 続けて赤髪のメイド悪魔を肩で押しのけると、その先にいたオレンジ色の髪のメイド悪魔の胸倉を掴み、彼女をヤルダバオトの方へと勢いよく放り投げた!

 

 

 「……オラァッ!」

 

 「ぐっ……!?」

 

 

 突然の第三者の登場に驚くヤルダバオトは、自身の方へと投げ飛ばされた部下のオレンジ髪メイド悪魔を受け止めようとした。

 だが、その至近距離からの衝撃は凄まじく、それを和らげるために、やむを得ず後ろに大きく下がった。

 そして、その先にいた漆黒の英雄モモンが、ヤルダバオトの背中を優しく受け止めた。

 

 だが、そのせいで悪魔側の対応が遅れてしまった。

 

 

 その隙にクズ男は、次に黒髪のメイド悪魔を標的にするべく行動した。

 

 

 「邪魔だぁッ!」

 

 「ッぐ……!?」

 

 

 クズ男は黒髪メイドに近付き、彼女を遠ざけるために無造作に″突っ張り”をぶちかました。

 彼女は格闘戦が専門だったらしく、クズ男の放った″突っ張り”を、かろうじて両腕を使って受け止めることができた。

 

 だが、凄まじい衝撃によって彼女は遠くへと突き飛ばされてしまった。

 

 

  ………。

 

 

  ………。

 

 

 「武技っ……! 『六光連斬ッ』!!」

 

 

   ガギィィィィィインッ!!!

 

 

 黒髪メイドが吹き飛ばされた先には、周辺国家最強と名高い王国戦士長ガゼフ・ストロノーフがいた。

 タイミングを合わせて全力で放った六つの斬撃が、全て黒髪メイドへと命中した。

 

 

 「……ッ! カハァ………ッ!?」

 

 

 クズ男にばかり気を取られていたせいで、王国の兵士たちの事は全く眼中になかったのが仇となったようだ。

 王国の至宝である伝説の剣によって繰り出される必殺技を無防備にも背中から受けた黒髪メイドは、たまらずに倒れ込んだ。

 

 

  ………。

 

 

 「超技っ……! 『ダークブレードメガインパクトォォォオッ』!!」

 

 

   ズドォォォオンッ!!!

 

 

 追い打ちをかけるべく『蒼の薔薇』のリーダーであるラキュースも、黒髪メイドが動けなくなっている隙に自身の必殺技を全力で放った。

 

 黒髪メイドは、またもや無防備で攻撃をくらってしまった。

 

 

 「ぐっ……はぁぁあ……ッ!?」

 

 

 「「『不動金縛りの術』!!」」

 

 「剛腕剛撃っ……! 『超級連続攻撃ぃぃいッ』!!」

 

 

 さらに『蒼の薔薇』のメンバーであるティア、ティナの二人が黒髪メイドを忍術で縛り付け、戦士ガガーランが自身の最大の攻撃を加えた。

 

 その衝撃で黒髪メイドの首が取れてしまったが、どうやら彼女の正体は首無し騎士(デュラハン)だったらしく、首が取れてもなお動き続けていた。

 

 

 だが、首が転がった先には大勢の兵士や冒険者たちが待機していた。

 

 

 「「「「「この悪魔めぇぇッ!!! 」」」」」

 

 「「「「「くたばりやがれぇぇッ!!! 」」」」」

 

 「「「「「やっちまえぇぇぇえッ!!! 」」」」」

 

 

 首が取れても、なお動き続けるメイド悪魔を見た彼らは、仮面を付けた″首”に向かって一斉に殺到し、剣や槍で執拗に攻撃を加え続けた。

 中には、″首”の切断面や耳の穴に攻撃する気の利いた者もいた。

 

 

 首が取れた上に、予想外の攻撃をくらい続けた黒髪メイドは、アダマンタイト級の強者たちからの巧みな連携に翻弄されることとなった。

 

 

 

           ■

 

 

 黒髪メイドを突き飛ばしたクズ男は、すかさず赤髪のメイド悪魔へと肉薄した。

 

 

 「おらよぉッ!!」

 

 「……なッ!?」

 

 

 彼は赤髪メイドを強引に押し倒すと、その両足首をつかみ、ヤルダバオトやオレンジ髪メイドに向かって彼女の体ごとブンブン振り回し始めた。

 

 

 「俺様の『メイド棍棒』を食らいやがれやぁぁあッ!!」

 

 「うわぁッ!? や、やめろぉッ……!!」

 

 

 強烈な遠心力により、赤髪メイドのロングスカートが反対側へとめくれ上がった。

 それを眼福に思いながらも、彼は振り回すことを止めない!

 

 

 「貴様ぁ、いい加減にッ……!」

 

 

 ヤルダバオトは棍棒にされた部下の身を案じ、彼女の体を受け止めることができなかった。

 オレンジ髪メイドの方も、得意の銃撃をためらっていた。

 

 

 クズ男はヤルダバオトに集中するためにも、まずはオレンジ髪メイドを遠く追いやろうと高速で接近し『メイド棍棒』を振り回した!

 

 

   ドガァッ!!

 

 

 クズ男に力も速さも劣るオレンジ髪メイドでは、その攻撃に対応できず、モモンたちがいる場所の、さらに後ろの方にまで吹き飛ばされてしまった。

 

 

  ………。

 

  ………。

 

 

 (……ッ! 今だッ!!)

 

 

 それを好機と見たイビルアイが、少しでも悪魔側の戦力を削ごうと動き出した!

 

 実はクズ男が現れた時から、長年の経験による素早い判断で魔力を練っていたのだった。

 発動時間のかかる技ゆえに通常の戦闘では使えない、自身の最大火力の魔法を発動させた!

 

 

 「魔 法 抵 抗 突 破 最 強 化(ペネトレイトマキシマイズマジック)っ……!! 《水 晶 騎 士 竜 槍(クリスタル・ドラゴンランス)》ッ!!!」

 

 

   ドッガァァァァアァァァァアッッ!!!

 

 

 アダマンタイト級冒険者の中でも最強クラスの魔法詠唱者(マジックキャスター)による、最大必殺の竜槍がメイド悪魔に迫った!

 

 オレンジ髪メイドは、とっさに魔法銃を胸の前に掲げ防御するが、衝撃を受け止めるには物足りず、軌道を少し逸らすことしかできなかった。

 

 魔法銃が弾き飛ばされながらも狙われた胸部は守れたが、腹部を貫かれ上半身と下半身が分かたれてしまった。

 

 

 「ゴボァ……ッ!?」

 

 

 オレンジ髪メイドの正体は自動人形(オートマトン)だったらしく、上半身だけになっても稼働し続けていた。

 だが、体内のオイルが切断面から大量に漏れ出していた。

 

 イビルアイは、彼女を確実に仕留めるべく、立て続けに連続で魔法攻撃を放った!

 

 下半身と魔法銃を失った彼女では対応する隙を一切与えられず、ひたすら腕で防御し続けることしかできなかった。

 その間にも体内のオイルがどんどん外へ漏れ出し、稼働力が急速に弱まっていく。

 

 もはや、彼女が破壊されるのも時間の問題であろう。

 

 

 

            ■

 

 

 その後も黒髪メイドの″体”は、現地勢最強格の強者たちからの、さらなる猛攻の嵐にさらされた。

 彼らの巧みな連携による手数の多さに加えて、飛ばされた首を兵士たちに一方的に攻撃されているために視界も上手く定まらない。

 首を失い満身創痍となった彼女ではろくな抵抗もできず、いいように嬲られることとなった。

 

 

 また、オレンジ髪メイドも、イビルアイによって様々な種類の魔法攻撃を放たれていた。

 やがて自身から漏れ出したオイルに炎の魔法が引火し、全身が火だるまになりながら攻撃を受け続ける事になった。

 

 

 一方のクズ男は、相も変わらずヤルダバオトに対して『メイド棍棒』をブンブン振り回していた……。

 

 

 

             ■

 

 

 「ああ……、やめてくれ……。もう、やめてくれ………」

 

 

 絶好の好機だというのに、なぜか漆黒の英雄モモンは動こうとせず、独り言をつぶやくばかり。

 彼の相方のナーベも、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべていた。

 

 

 「おいコラ! モモンッ! なに、ぼさっと突っ立ってやがるッ! さっさと、この悪魔野郎に攻撃しやがれってんだぁッ!!」

 

 

 その場から動かず、ブツブツ独り言をつぶやいてばかりの漆黒の英雄の姿に怒りを覚え、クズ男は怒鳴り声を上げた。

 

 その言葉を聞いたナーベが、憎悪の視線をクズ男に向けた。

 なぜかヤルダバオトまで、その言葉に怒気を発したように感じたが、クズ男は気のせいだろうと考え直した。

 

 

 「どぉぉぅりゃああああああああッ!!!」

 

 

 クズ男は、攻撃を避け続けるヤルダバオトに業を煮やし、一気に決着を付けようと渾身の力を込めて『メイド棍棒』を振り回した。

 

 だが───

 

 

   ブチィィィィイッ!!

 

 

 強烈な負荷が加わり、とうとう『メイド棍棒』は限界に達し、上半身が引きちぎれてしまった。

 

 そして、飛ばされた先にはモモンがおり、彼女の上半身を上手いことキャッチした。

 

 

 「ル……、ルプ………ッ!?」

 

 「ア…イン……さ………」

 

 

 上半身だけとなった赤髪メイドは、口から大量の血を吐きながら仮面で覆われた顔をモモンに向けていた。

 

 その視線を受け止めたモモンは動くこともせず、全身からオーラを出したり引っ込めたりを繰り返し続けていた………。

 

 

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