アインズ様を怒らせたクズ男(改)   作:黒郎丸

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三国極秘会談

 

 「虫けらがッ!!」

 

 「ごへぇッ!?」

 

 

 モモンに馬乗りになっていたクズ男は、突然現れた謎の黒騎士に斧で吹き飛ばされてしまった。

 

 幸いにも 戦士長ガゼフや『蒼の薔薇』たちにはぶつからなかったが、周囲を固めていた兵士や冒険者たちが巻き込まれてしまった。

 クズ男の体に当たった者は絶命し、その後ろにいた者も重傷を負うはめになった。

 

 

 「アインズ様に対しての無礼……ッ! 許すものかぁああッ!!」

 

 「な、なんだぁッ!? なんなんだテメェはぁッ……!?」

 

 

 兵士や冒険者たちのことなど眼中になく、立て続けに攻撃をする謎の騎士。

 

 それを必死に避けるクズ男だったが、周りにいる兵士や冒険者たちを大勢巻き込んでしまう。

 

 

 「ちくしょうめぇッ! 調子に乗ってんじゃねぇぞゴラァッ!」

 

 

 不意打ちを仕掛けてきておいて、いいように攻撃してくる黒騎士に腹が立ってきたクズ男が反撃の拳を繰り出した。

 だが、多くの弱者を沈めてきた攻撃は、黒騎士の異様に硬い防御に阻まれ、たいして効いてはいないようだった。

 

 

 「甘いッ!」

 

 「う、嘘だろぉおおッ!?」

 

 

 黒騎士は、周囲への被害などお構いなしに、クズ男を絶対に殺すという執念の元、再び攻撃を繰り返した。

 

 

  ………。

 

 

 「アインズ様ッ!」

 

 

 さらに、赤い鎧を着た銀髪の美少女までゲートから飛び出してきて、モモンをお姫様抱っこした。

 

 

 「遅くなって申し訳ございんせん! さあ、早くゲートの中へ!」

 

 「シャルティア……!? し、しかし……」

 

 

 クズ男による暴行から助けられたモモンは何かを言いたげだったが、銀髪の少女に有無を言わさずゲートの中へと運び込まれた。

 

 メイド悪魔の死体も何者かによって、いつのまにか回収されたようだ。

 

 

  ………。

 

 

「チィッ、やってられっかよぉッ!!」

 

 

 自分には分が悪いと感じたクズ男は、たまらず逃走した。

 

 

 「逃がすかぁッ!!」

 

 

 だが、黒騎士はクズ男を見逃す気は毛頭ないらしく、漆黒の羽を広げながら飛翔し、周囲の建物をいくつも破壊しながら彼を追っていった。

 

 

 

            ■

 

 

 「各自、速やかに味方の救助に当たれ!」

 

 「大丈夫!? しっかり!」

 

 

 黒騎士がクズ男を追いかけ、別の方向へ飛んで行ったため、とりあえず、この辺りは安全になった。

 

 戦士長ガゼフが、無事だった兵士や衛生兵に指示を出し、重症者の救助に当たらせた。   また、『蒼の薔薇』もガゼフの指示に従い、彼らの救助に当たった。

 

 さらに、衛生兵や神官職の冒険者だけでなく、神殿から派遣されていた神官たちも治療に当たっていた。

 

 

 (あの黒い騎士、そしてアインズという名……、まさか……ッ!)

 

 

 先ほど、突然現れた黒い騎士と銀髪の少女は、モモンの事をアインズと呼んでいた。

 

 そこでガゼフは、自分とカルネ村を救ってくれた凄腕の魔法詠唱者(マジックキャスター)がモモンの正体なのではないかと思い至った。それに、よく思い返してみれば、声も同じだったなと今更ながらに気づいた。

 

 

 「私は、陛下の無事を確かめてくる!」

 

 「はい! ここは任せてください!」

 

 

 ガゼフは救助の指揮を副官に任せ、自身が忠誠を誓う王の無事を確かめるために動こうとした。

 

 

 「その必要はない、戦士長。私なら無事だ」

 

 「陛下! ご無事でしたか!」

 

 

 馬にまたがった国王ランポッサ三世が、ガゼフの前に姿を現した。ガゼフは、王の身が無事であったことに深く安堵した。

 

 

 「うむ、破壊された建物の破片が私の方へと危うく降りかかったのだが、こちらの御仁によって救われてな」

 

 「………」

 

 

 国王の視線の先には、白金の鎧に身を包んだ騎士がたたずんでいた。

 

 彼(?)は、クズ男を追った黒騎士が向かった先を静かに眺めていた。

 

 

 「私は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ! 陛下の身をお助け下さり、感謝する!」

 

 「私は、リク・アガネイア」

 

 

 その白金鎧の騎士は名を告げ、自分の事はアガネイアと呼ぶようにと言った。

 

 

 「なんだ。お前もここに来ていたのか。だったら助けてくれても良かっただろうに」

 

 

 そこへ、『蒼の薔薇』のイビルアイが、白金の騎士アガネイアに話しかけた。どうやら知り合いのようだ。

 

 

 「すまない。敵の新たな手札を警戒していてね」

 

 「どうして、この国にきているんだ?」

 

 「ああ、キョーヤと名乗る者の行動が気になっていてね。この国を遠くから監視している間に、この悪魔騒動が起こったと言うわけさ」

 

 

 アガネイアは、前にひと悶着あったクズ男が、王国で何をやらかすのかが気になっていて監視していたという。 

 

 

 「イビルアイ殿。お知り合いか?」

 

 「ああ。この鎧の身元は一応保証できるぞ」

 

 「その紹介の仕方はどうなんだい? かえって怪しく聞こえるのだが」

 

 

 この国の貴族令嬢であるラキュースがリーダーを務める『蒼の薔薇』。

 そのメンバーの一人であるイビルアイと親しげにしている白金の騎士の事を、ガゼフは信用に値すると判断した。

 

 

 (しかし、アガネイアだと?)

 (ああ、とっさに思い浮かんでね。どうか、私の事は内密に頼むよ)

 (それは構わないが、よりにもよって、リクという名前を用いるのはどうなんだ?)

 (……そこも黙認してくれると助かるね)

 

 

 イビルアイとアガネイアが知り合いなのは本当らしく、二人で親し気に内緒話をしていた。

 

 

 「本当なら、キョーヤ殿を助けに行くべきなのだろうが、あの黒騎士の相手は常人が務まるとは到底思えない。悔しいが、キョーヤ殿の無事を祈るしかあるまい……。陛下、私は家屋の倒壊に巻き込まれた兵士たちの救助の指揮に当たらせていただきます」

 

 「いや、それは、やめてもらえるかな?」

 

 

 国王に許可を求めるガゼフを、白金の騎士アガネイアが止めた。

 

 

 「アガネイア殿!? なぜ、そのようなことを言われるのだ? 陛下を救ってくれた貴殿には感謝しているが……」

 

 「強力な魔物がひしめいている。それも何体もだ。気を悪くしないでほしいんだが、キミでは太刀打ちできない。さらに言うと、詳しい事情を知っているであろうキミは、真っ先に狙われる危険がある」

 

 「うむ、そういうことであれば、今は分散せず、ここに留まる方が最善であろう」

 

 「……っ。かしこまりました。陛下」

 

 

 自分の主君にも嗜められた以上、ガゼフは自分に言うことはないと判断した。ふがいなく思う気持ちを抑え込み、代わりの指揮を引き続き副官に任せることにした。

 

 

 「して、貴殿はどこの国に所属する騎士殿であろうか?」

 

 「私は評議国から来た。白金の竜王の使いとでも思ってくれればいいさ」

 

 

 国王の誰何にアガネイアが答えた。

 アーグランド評議国出身の騎士であり、その国の永久評議員の一人である白金の竜王ツァインドルクス=ヴァイシオンの使いの者だという。

 かの国は亜人で構成された国家であり、この騎士もまた人間ではないのだろう。

 

 

  ………。

 

 

 「父上! ご無事でしたか!」

 

 「おお、ザナック! お前も無事なようで、なによりだ!」

 

 「よぉ、ガゼフ! 大変なことになっちまったな」

 

 「ブレイン! お前も無事だったか!」

 

 

 兵士や冒険者の集団が近づき、その中にいる第二王子ザナックと剣豪ブレインが代表して、国王とガゼフに話しかけてきた。

 

 

 「はい父上。私の担当地域の悪魔たちは掃討できましたので」

 

 「そうか。ご苦労であった……」

 

 

 国王は、愛する息子との再会を喜び、その功を労った。

 

 ガゼフも、友人である剣豪ブレイン・アングラウスに、ここへ来た訳を尋ねた。

 

 

 「ブレイン。お前は、クライムたちと一緒ではなかったのか?」

 

 「そうだったんだが、なにやら激しい戦闘が起きてたようだったんでな。いてもたってもいられなかった。それにクライム君のいる方は、とりあえず安全なはずだ。脅威となる敵も、ここらへんに集中しているようだったからな」

 

 

 ガゼフは、気に掛けていた少年クライムのいる地区が安全だと知り、安心した。

 

 ここに集った者たちも、主立った者たちが全員無事なことに安堵した。

 

 いまだに国難が去ったわけではないにせよ、少しだけ緩やかな空気が場を包んでいた。

 

 

  ………。

 

 

 「失礼、私も話に加わってよろしいでしょうか?」

 

 

 その時、兵士や冒険者たちの治療に当たっている神官団にいた一人の男性が、国王に話しかけてきた。

 

 

 「構わぬが、そなたは?」

 

 「私はスレイン法国から、とある任務により派遣されたナナシという者です。ランポッサ陛下。ひとまず、目立たぬ場所へ移動を……」

 

 「スレイン法国の……」

 

 

 おそらく偽名であろう名を用いて自己紹介をした神官。

 

 それに対し、とある事件によって法国に因縁があったガゼフは、思うところがあるようだ。

 だが、両国間の関係が悪化したとはいえ、戦争状態に入っているわけではないので、平静を装うことにした。

 

 ナナシは、何者かによる盗聴などを警戒し、全員を安全な場所へと移動させるよう提案したが、白金の騎士アガネイアから止められた。

 

 

 「安心したまえ。すでに周囲には結界を張っている。ここでの会話は見ることも聞くこともできないから、隠し事をする必要はない」

 

 「それは、ありがたい」

 

 

 評議国と法国も互いに仲が良いとは言えないが、大悪魔の襲来ともなれば ひとまずその悪感情を抑え込むことにした。

 

 ナナシは、自分がこの場にいる理由を説明した。

 

 

「実は、竜王国の英雄であるキョーヤ殿の後を追って参りました」

 

「キョーヤ殿の? それは、いかなる任務で?」

 

「彼は竜王国を出立する前に、知り合いの女性たちに話をなさっていたそうです。世界を揺るがすほどの強大かつ邪悪な波動が、この王国から伝わってきたと」

 

「なんと、それはまさに……!」

 

 

 クズ男が入り浸っていた娼館には、法国の神官が治療士として派遣されていた。

 娼婦たちの健康面だけでなく、妊娠の有無を調べるためである。クズ男との行為で妊娠したことが分かった娼婦は引退させられ、法国で手厚く保護されていた。

 

 今回、クズ男から話を聞いた娼婦たちの口から治療士に伝わり、法国の上層部まで報告が行ったというわけであった。

 

 

「はい。私は、その不吉な言葉を危惧した我が国から、事実を確認するようにと密命を受けて行動していたのです。どうやら英雄殿のご慧眼は正しかったようですな」

 

「そうだったのか。キョーヤ殿はご自身の強い正義感に従い、この国を救いに来て下さった……。なんと高潔で、慈悲深いお方なのだ……!」

 

 

 ガゼフは、クズ男の高潔な精神に感動していた。

 あのチンピラのような態度は、敵を欺くための仮の姿だったのだと、ようやく確信を持つことができた。

 

 そんなクズ男を英雄視するガゼフを見て、『蒼の薔薇』の面々は微妙な表情を浮かべていた。

 

 

  ………。

 

 

 役者が揃い、互いの無事も確認し合ったのを見計らい、白金の騎士アガネイアが代表して発言した。

 

 

 「さて、各々積もる話もあるだろうが、そろそろ本題に入ろうじゃないか。まずは事件の発端から話してもらえるかな?」

 

 




 ・前作とは違い、陽光聖典がカルネ村をちゃんと襲っています。

 ・アインズは、自分の声を知っているガゼフとは話さないように立ち回るつもりだったようですが、クズ男のせいで会話せざるを得ませんでした。
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