アインズ様を怒らせたクズ男(改)   作:黒郎丸

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娼館に入り浸るクズ男

◇ ────竜王国 最高級娼館

 

 

 「やはり、キョーヤ様は素敵ですっ!」

 「キョーヤ様こそ、この世界の救世主ですわ!」

 

 「がっはっは! この狂也様なら、こんくらい屁でもねぇぜ!」

 

 

 クズ男の頭空っぽな自慢話に、娼婦たちが熱狂した()()をする。

 いつもの光景だった。

 

 竜王国で一番とされる高級娼館のことをクズ男はいたく気に入り、毎日貸し切りにして、もはや我が家も同然のように住み着いていた。

 

 

 さらに、娼館住まいとなることで、わざわざ冒険者ギルドに足を運ばなくても、あちらから職員が来訪し、その日の依頼書と前回分の報酬を渡しに来てくれるようになっていた。

 

 

 貧しい小国とはいえ、最高級の娼館を貸し切りにするのに必要な資金を捻出するのは決して容易ではない。

 

 それでも、この男が毎日貸し切りにできるのは他の冒険者に比べて稼ぎが良すぎるという理由だけでない。

 この国の女王がクズ男に大人しく仕事をさせるために、また、他の客との間で大きな問題が生じないように、娼館への支援を行っているからだ。

 

 

 その資金繰りに女王は結構な苦労をしているのだが、このクズ男に理解できるはずもなかった。

 

 

              ■

 

 竜王国の娼館は、他国のと比べて安いが、嬢は粒ぞろいだった。

 ビーストマンとの戦いに駆り出され、殉職した兵士や冒険者の未亡人や娘が大勢勤めているからだ。

 殺される男が多いほど、つまり娼婦志望者が多くなるほど、娼婦全体の質も上がっていくのは皮肉なことだった。

 

 

 また、主に男たちが優先的に殺されていくので、この国では常に女余りだ。

 数が少ない男たちの中で、さらに娼館に通えるほどの懐に余裕のある上客を奪い合わなければならない。

 よって、女余りでも娼婦の全体数はそれほど多くはないが、その分”美女の上澄み“がそろっていた。

 

 

 国民は食糧不足で醜くやせ細っているが、ここは国一番の娼館なだけあって、クズ男が入り浸る前までは裕福な貴族や大商人、他国の要人までもが足しげく通っていた。

 そのため、彼らによって食糧が多めに融通されていた。

 

 同じように、他の娼館も上位のランクであるほど融通される機会が多くなり、高位の娼婦たちは極上の美しさを維持することができていた。

 

 そんな“美女の上澄み”たちであっても、ビーストマンに家族を殺され、打ちひしがれている身の上という事情もあってか謙虚かつ健気な嬢が多く、決して高飛車な態度を取らぬよう自らを律していた。

 

 また、ビーストマンと命を懸けて戦う男たちの姿を幼いころから見続けてきたため、男性への敬意を忘れない気立ての良い女性へと成長していくものが多かった。

 

 

 顔も性格も素晴らしい娼婦たちが、数少ない客を喜ばせるために精一杯もてなす努力も怠らないのだ。

 必然的に竜王国最高の娼館は、世界屈指の娼館でもあった。

 

 

              ■

 

 「そんじゃ、今夜はリーナちゃんとシャロンちゃんの二人と寝ちゃおっかな~~」

 

 「私ですか! 嬉しい! 光栄です!」

 「キョーヤ様のために頑張っちゃいますわ!」

 

 (私たちは今日は非番か……)

 (昨日は激しくて疲れてたから良かった……)

 

 

 クズ男がこの娼館を貸し切ることで、以前と違って客一人だけを相手にすればいいので嬢たちの負担もかなり軽減された。

 また、クズ男は自分が楽しむためとはいえ、娼館内の設備や物資、嬢たちの美貌や健康のための美容品や医薬品などを充実させるために多額の寄付をしている。

 

 

 その結果、世界()()の娼館は、世界()()の娼館へと発展した。

 

 

 もっとも、この国の北西に位置するリ・エスティーゼ王国の名物『違法娼館』のようにアブノーマルな行為はできないので、特殊というか異常性癖の持ち主にとっては世界一とは言えないのだが。

 

 

 「えっ!? こんなに頂いてよろしいのですか!?」

 

 

 クズ男は行為が終わった後、機嫌が良ければ『お小遣い』を嬢に渡すこともあった。

 

 

 「いいっていいってw 民を大事にするのも『力を持つ者の責任』ってやつだからなァw」

 

 

 クズ男は薄っぺらい言葉を吐きながら、決して安くない小遣いを彼女に渡していた。

 

 

 (まあ、俺様の民であることは間違ってねェんだがな。あの幼い女王も、あと3年も経てば食べ頃だろうからなァ。いずれ、あの幼女と結婚して俺様が竜王国の王になってやるぜっ!)

 

 

 クズらしく不遜な妄想に酔いしれていた。

 この国の政治体制に一切の興味がないクズ男は、王配に過ぎない者が国王となることなど不可能だということを知らなかった。

 

 

 

            ■

 

 

 世界最高となった娼館に入り浸っているクズ男だが、嬢からは意外と人気があった。

 

 性格はクズだが、おだて上げて積極的に奉仕すれば優しくしてくれるし、金払いが良く、お小遣いとして大金をポンとくれる気前の良さも人気の一つだった。

 

 

 父や夫を亡くし、将来に不安を覚えていた嬢たちにとって、この『お小遣い』は退職後の大事な生活費になるし、子持ちの娼婦にとっては養育費の足しになる。

 

 中にはクズ男に身請けされたいと本気で願う嬢も少なくなかった。

 

 

 ちなみに、この男が一つの娼館を貸し切りにしているため、そこを利用できなくなった常連客が他の娼館へ流れるようになり、結果的に多くの娼婦が救われることになった。

 

 

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