アインズ様を怒らせたクズ男(改)   作:黒郎丸

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謎の女戦士

◇ ────共同墓地地下 邪神殿

 

 

 アインズは、自分を崇拝するために集った敬虔な邪教徒たちに向けて演説を行っていた。

 邪教徒である彼ら帝国貴族は、アインズの演説を熱心に傾聴していた。

 

 アインズは、自分への信仰を熱烈に捧げる彼らに、まずは褒美を与えてやることにした。

 

 

 「さて、お前たちの信仰に対する褒美を与えよう。何が欲しい?」

 

 「若さを!」

 「不老不死を!」

 「もう一度、あの頃の青春を味わいたいのです!」

 「我々はそれを切に望み、邪神様への信仰を捧げてまいりました!」

 「邪神様! 我々に、どうか若さと永遠の命を!」

 

 

 この場にいる者は仮にも貴族。そこらの平民とは違い、美食や異性など、ありとあらゆる快楽を享受してきた。

 それらを老いによって喪失するのを惜しんでいた。

 

 だからこそ魔法に手を出し、薬物に手を出し、そして信仰に身を染めたのだ。

 

 

 「分かった分かった」

 

 

 アインズは騒がしい彼らにうんざりした様子で手を振って窘めた。

 

 

 「さて、お前たちの望みが永遠の若さだというのは、よく理解した。だが、今はまだすべては与えてはやれん」

 

 

 その言葉に動揺する貴族たちだったが、アインズが構わず話を続けた。

 

 

 「今はまだ、お前の働きが私の望む水準には達していない。ゆえに、全ては与えられんが、若さだけならばくれてやろう。お前たちの望む若さまで戻してやろうではないか」

 

 「ははぁっ、邪神様! それだけでも我ら一同、存外の喜び! 今後は、さらに御身のご期待に沿えるよう、粉骨砕身で尽くします!」

 

 

 念願の不老不死は与えられなかったが、それでも自分たちの望む若さに戻してやると言われたのだ。

 若返りさえすれば、何でもできる。若返って取り戻した力と膨大な時間を使えば、きっとアインズの期待通りの働きだって出来るはずだと、彼らは興奮しながら今後の人生設計を考えていた。

 

 

 「では、これより、我が至高なる魔法を授けてやろう。とくと見るがよい」

 

 「おお、偉大なる邪神様! ついに、ついに我らが悲願が……ッ!」

 

 

  アインズが彼らに向けて手をかざし、魔法を使おうとした、その瞬間──、

 

 

 「アインズ様、お取込み中、失礼いたします」

 

 

 その時、アインズの護衛として付いてきていたアルベドが入室してきた。

 

 

 「……なっ、なんと美しい!」

 「女神だ……」

 「ゴクリ……ッ」

 「ぁぁっ、うぁぁっ……! ふぅ………」

 

 

 突然、不意打ちで姿を現した絶世の美姫の姿に、男性貴族たちは一斉に目を向けた。

 淫靡の香の作用で性欲が高まっていた彼らは、アルベドの服の上からでもわかる極上のスタイルを見て、一様に興奮してしまった。

 儀式のために全裸であったため、一物がそそり立ったのが丸わかりだった。

 さらには、堪えきれずに精液を垂れ流す輩さえいた。

 

 

 「………チッ!」

 

 

 それが嫌でも目に入ってしまったアルベドは、床に散らばった生ゴミでも見るかのように思いっきり顔をしかめるが、今は醜悪な汚物などに心を割いている場合ではないと無視を決め込み、アインズに耳打ちするために近付いた。

 

 

 「アインズ様、見張りの者から知らせが入りました。どうやら、あの下賤な人間どもがここへ来たようです」

 

 「………そうか。まさか、こんな場所まで来るとはな。あのクズども……!」

 

 

 アインズは、さそかし面白くないといった様子で報告を聞いていた。

 

 

 「いかがいたしましょう? 守護者を召集し、迎え撃ちますか?」

 

 「いや、今はまだ、その時ではない。この場は撤収する事にする。異論は認めん」

 

 「……かしこまりました」

 

 

 もちろん、ここに守護者を全員集め、なりふり構わず戦えば、あのクズたちには勝利できるだろう。

 だが、アインズとしては準備が不十分の段階で、一人の犠牲も出すわけにはいかない。それに、ここで暴れることで地下神殿が崩壊し、邪教団との繋がりが外部に漏れ出る事も避けたかったため、躊躇うことなく撤退する事を選択した。

 

 

 「あ、あの、邪神様……? 如何いたしましたか?」

 「何か問題でも……?」

 

 

 アルベドに見とれている男性陣をよそに、女性陣がアインズに声を掛けた。

 突然儀式を中断されて不安で堪らないようである。

 

 

 「ああ、お前たち、どうやら城から取り調べの者が派遣されたようだ」

 

 「なんと! くぅっ、こんな時に!」

 

 

 これには、呆けていた男性陣も冷や水を被ったかのように気を取り直した。

 彼らからすれば、せっかく自分たちが崇拝する神が顕現し、さっそく悲願である”若さ”を手に入れる絶好の機会を賜るはずだったのだ。

 その長年の夢がこうして台無しになろうとしているのだ。当然、冷静ではいられなかった。

 

 

 「そういうわけで、儀式は中断だ。今からお前たちを転移で逃がす。その前に、その生贄についてだが……」

 

 

 アインズは、目の前に並べられた十個の大きな袋に目をやった。

 

 

 「それは、お前たちに返す。受け取る事はできん」

 

 「わ、我らの供物がご不満でしたでしょうか……?」

 

 「いや、そうではない。対価を与えることなく、それを受け取ることはできないというだけだ。信者は神を信仰し、神は信者に応えて願いを叶える。それが信仰する者とされる者の正しい関係というものだ」

 

 「ああ、邪神様。我らの如き矮小な存在に対し、そのような慈悲深いお言葉を掛けて下さるとは!」

 

 

 今まで、邪神という存在は決して慈悲深い存在ではなく、死をもって救済する恐ろしい神であると認識していた。それが想像を良い意味で裏切り、これほどまでに慈悲深い存在であったと理解した貴族たちは感動に身を震わせ、アインズへの信仰心が一気に高まっていった。

 

 

 「では、邪神様、すぐに後始末を致します。少々お待ちを」

 

 「……? うむ」

 

 (え、後始末?)

 

 

 アインズが困惑した様子で固まっている隙に、神官は配下の者たちに命じた。

 

 

 「やれ」

 

 

 命じられた従者と思しき者たちが、生贄の子供たちを袋ごとナイフで無慈悲に突き刺し始めた。

 その作業が妙に手慣れているためか、それほど時間をかけることなく、すぐに血まみれとなった十個の袋が出来上がってしまった。

 

 

 「……ゴホンッ。神官よ、何故殺したのだ?」

 

 「も、申し訳ありません。私めが何か粗相を……?」

 

 「いや、そうではない。ただ、殺した理由が気になってな」

 

 「そういう事でしたか。いえ、大した理由ではございません。持ち運ぶのも不便ですし、生きていると余計なことをしゃべりかねません。ですので、後腐れがない様に始末した次第です」

 

 「……なるほど、たしかに口封じは大事だな」

 

 「それと、死体はこのまま捨て置く事に致します。どのみち、拠点の存在が発覚した以上は放棄せざるを得ません。ですので、邪神様。後日、また改めて代わりの贄をご用意いたします」

 

 「そ、そうか、お前たちの忠誠を嬉しく思うぞ。……よし、では、準備はできたようだな。シャルティア、聞こえるか?」

 

 「はい、アインズ様」

 

 

 アインズがこめかみに指を当てると同時に、近くに黒いゲートが出現し、中からシャルティアが姿を現した。

 

 

 「おおッ、これが邪神様の御業!!」

 

 

 アインズではなくシャルティアの技なのだが、信仰で頭が沸騰している彼らにはアインズの偉大な技に見えるらしい。

 アインズとしても説明が面倒なので、教えてやることはなかったが。

 

 

 「アインズ様、コイツらを一旦、その公爵の所有する別荘まで送ればよろしいでありんすか?」

 

 「そうだ。頼んだぞ、シャルティア」

 

 「かしこまりんした、アインズ様」

 

 

 命じられたシャルティアは上品にカーテシーをし、自分に付いてくるように貴族たちに指示を出した。

 

 

 「では、邪神様。我らはひとまず失礼いたします」

 

 「うむ、後ほど、お前たちに話がある。使いの者を寄こすので、その時まで待機せよ」

 

 「ははぁッ!」

 

 

 ウィンブルグ公爵が代表して挨拶を行い、他の貴族たちも続いて恭しくお辞儀しながらゲートの中へと入って行った。

 

 彼らを送り出した後、一人残されたアインズは深いため息を吐き、盛大に舌打ちした。

 

 

 「………ふぅ、それにしても、あのクズどもめ。まさか、こんな場所にまで現れるとは。どこまでも不快にさせてくれる奴らだ」

 

 「はい、本当に忌々しい下等生物どもです。特に、あの男は以前、王都で私たちに敗北した事も忘れ、性懲りもなくアインズ様に歯向かうとは……!」

 

 

 アインズは、アルベドと一緒にクズ男に対する愚痴を言いながら転移を使おうとしたが、その前に血まみれになった袋が視界に入った。

 

 

 「このまま捨て置くのは少々もったいないが、仕方がないか……」

 

 

 生贄の死体を勿体なく思ったが、今日は既に死の騎士(デス・ナイト)の一日の作成上限を使ってしまっていたので、これらの死体は有効活用できない。

 

 ナザリックには人間を食料にする配下は多いが、わざわざ持ち帰るというのも手間だ。

 どのみち魔導国にいる死刑囚はまだまだ大量にいるので、そこまで惜しむ必要もないかと思い直し、そのまま死体の入った袋を放置し、転移でナザリックへと帰還していった。

 

 

 

             +

 

 

 

◇ ────共同墓地 地下通路

 

 

 一方、その頃──、

 

 クズ男たちと二手に分かれたマリアンヌとレイナースの二人組が地下通路を進んでいた。

 だが、前を歩いていたレイナースが何かに気付いて立ち止まった。

 

 

 「マリアンヌ様、前方から何者かが走ってきています」

 

 「邪教徒でしょうか?」

 

 

 レイナースがそう言って、マリアンヌも足を止めた。

 

 

 「はぁ、はぁ……ッ! なんだって、あの時の化け物がこんな場所に出現してんだよ! まさか、本当に邪神がいて、しかもそれがアタシを殺した奴なんて! そんな偶然、普通は有り得ねぇだろ!」

 

 

 前方から走ってきているのは、金髪をたなびかせた猫目の女だった。

 黒い全身マントを羽織っているが、今は激しく走っているため、そのマントの下にある戦士の装いが顕になっている。

 どういうわけか、かなり焦っているようだ。

 

 

 「止まれ! 貴様は何者だ!?」

 

 「……っな!? 何もんだ、テメェら!?」

 

 「それは、こちらの台詞だ! ここに帝国を蝕む邪教団が潜伏しているとの情報があり、私はその調査のために参った騎士、レイナースである!」

 

 「レイナースだって……?」

 

 (レイナースっていえば、帝国最強の四騎士かよ。……ちっ、こちとら復活したてで弱体化してるってのに、間が悪いなぁ)

 

 

 その謎の女戦士は、元帝国四騎士であるレイナースの名を聞き、警戒心を持った。

 帝国最強の四騎士の一人、”重爆”のレイナースの名は広く知られている。

 とはいえ、彼女がすでに四騎士を引退している事までは把握していないようである。

 だが、彼女の無知を責めるのは酷というものだ。他国の目を気にしたジルクニフが、四騎士に一人欠員が出たという情報を、秘匿まで行かずとも、あまり積極的に喧伝しようとしなかったのだから。

 それより、自身に仕える事になった元アダマンタイト級冒険者であるイビルアイのお披露目に力を注いでいたため、それ以外の負の情報が一様に霞んでしまったという事情もある。

 さらに、最近では数日前に起こった闘技場消滅事件ばかりが話題に上っているので、今さら四騎士が一人減ったかどうかなど誰も注目していないのである。

 

 

 (後ろで守られている女は、ここ最近帝都を賑わせている聖女マリアンヌか。レイナースを補助や回復で支援されると厄介だな……)

 

 

 女戦士は、ここで二人を同時に相手するのは分が悪いと判断し、交渉から入ることにした。

 

 

 「……ふーん。調査に来たんだ~。言っとくけど、向こうには何も………、あ~、なんでもない。行きたいんなら行ってみればぁ? ほら、アタシは邪魔なんてしないからさぁ~」

 

 

 人を小ばかにしたような間延びした口調で話す女戦士は、ニヤニヤしながら通路の奥に進むように促した。

 その姿は秘密を隠しているようには見えず、むしろ相手に進んで欲がっているように思えた。

 

 

 「つーわけで、もういいかなぁ? そんじゃぁ、アタシはこれで失礼するね~」

 

 

 そう言って、女戦士は自分は無関係だと言わんばかりに二人の横を素通りしようとした。

 だが、そこにレイナースが待ったをかけた。

 

 

 「待て。貴様、どうにも怪しいな。詳しい事情を知っているようなので、ここで捕縛させてもらう」

 

 「……ッ!? ちょっとちょっと~、アンタらは何の障害もなく先に進めるんだよ? せっかく、アタシが気まぐれで素通りさせてやろうってのに、その気遣いを無下にするのも、どうかと思うけどなぁ~?」

 

 

 女戦士は少しばかり怒りを滲ませながら、そのような発言をしたレイナースを愚かだと見なし、彼女をなじった。

 

 

 「我々の目的は、あくまでも邪教団の調査と捕縛なのでな。関係者は一人残らず連行する。当然、貴様も例外なくだ」

 

 「チッ……!」

 

 

 女戦士は、この世で自分が最も恐れている怪物から無事に逃げおおせる事が出来ると思っていたが、そこに思わぬ妨害だ。

 焦りも合わさり、レイナースに向けて憎悪の視線を強め始めた。

 

 

 「この女の相手は、どうか私にお任せを」

 

 「レイナースさん?」

 

 「この者、私が見た限りでは相当な手練れのようです。もちろん貴女様には敵うべくもありませんが、私はこの者と戦い、これまでの訓練の成果をお見せしたいのです」

 

 「……そうですか、ではお任せします。どうか、お気をつけて」

 

 

 レイナースは、この数か月もの間、マリアンヌが召喚した天使を相手に訓練をしていた。

 そこに、目の前の女戦士という腕試しにはもってこいの相手が現れたのだ。

 彼女は、この女戦士と戦い、自分の力を試してみたいと思っていた。

 

 

 「……はぁ? テメェ、今なんつった? このクレ……ッ、コホンッ! アタシを相手に腕試し~!? ムカつくにも程があんぞ!!」

 

 

 その女戦士は、元々は各地の強者が集められた組織に所属していた身だ。当然、所属していない強者の情報であっても収集されていたため、レイナースだけでなく他の四騎士にも詳しかった。

 彼ら程度であれば、自分一人でも十分に太刀打ちできると、その組織からは判断されていた。

 

 その程度の評価しかされなかったのが帝国四騎士であり、さらに今この場にいるのはレイナース一人だけ。にもかかわらず、先程のような不遜な発言をしたのだ。

 それが、自身の強さにかなりのプライドを持っている彼女の心を苛立たせた。

 

 死ぬ前の、弱体化する前の彼女であれば、有無を言わさず強行突破していたのだが、今の自分の力量では苦戦する可能性があるため油断は禁物だった。

 だが、逆に言えば、油断さえしなければ十分に勝ち目のある相手とも見なしている。

 

 隣にいる女神官は戦闘には参加せず、戦う相手はレイナース一人だけ。

 

 四騎士全員がそろっているならともかく、たった一人だけなら、今の自分であっても余裕で倒せるような取るに足らない存在だと認識していた。

 

 

 「よし、決~めた! アンタをサクッと殺した後は、そこの女も殺してあげる! ううん、殺すだけじゃなくて、そのお綺麗な顔を人目に触れる事も出来ないようにズタズタにしてあげるから! キャハハッ!」

 

 「……下衆が」

 

 

 レイナースの心に怒りが湧き上がった。もちろん圧倒的な力を持つマリアンヌに対し、そのような愚行など不可能だが、それでも自分の主人を侮辱された事を許すわけにはいかない。

 

 

 「ところでさぁ~、さっきのアンタの言い方だと、そっちの聖女さまは戦闘には参加しないってことでいいんだよねぇ?」

 

 「……ッ!」

 

 「あのさぁ、その女の正体を隠そうと小細工したようだけど、そんなの無駄に決まってんじゃん。そこの聖女さまは、ただでさえ有名人なんだから。アタシも遠くからだけど、アンタと聖女が仲良く一緒に歩いているのを見かけた事あるし」

 

 

 レイナースは、目の前の女戦士になるべく情報を与えないようマリアンヌの名を呼ばないようにしていたが、さすがに無理があったようだ。

 

 

 「……バレているのであれば仕方がないわね。それと先程の話だが、もちろん私が一人で貴様の相手をするから安心なさい」

 

 「……へぇ、大した自信だねぇ。そうこなくっちゃ!」

 

 

 女戦士は、マリアンヌが戦闘に参加しないという取り決めが成立し、それによってレイナースに支援魔法を使われる事がなくなった状況に活路を見出した。

 一気にレイナースの喉笛を突き刺し、信頼する騎士が倒されて呆然となっているマリアンヌを仕留める。

 彼女は、即座にその作戦を思い付いた。

 

 

 (あのマリアンヌという女……。お優しい聖女だと評判らしいから、事前の取り決めを破ってでもレイナースを助けようとするかもしれない。けど絶対に、そんな隙なんて与えてあげないから!)

 

 

 女戦士は、レイナースはもちろんの事、マリアンヌも警戒していた。

 

 今まで数多くの魔法詠唱者(マジックキャスター)を殺してきた彼女だが、それは相手の隙をつき、何もさせずに刺し殺してきたからだ。

 

 逆に言えば、距離が離れており、さらに屈強な前衛に守られている状況下であれば、今まで簡単に仕留めてきたはずの魔法詠唱者(マジックキャスター)が一気に驚異的な存在へと変貌する。今の状況はまさにそれだ。

 

 

 (まずは、目の前のレイナースを一気に仕留める。そして、あの聖女と名乗る、いけ好かない女が呪文を唱える前に、スッといってドスッ! これで決まり!)

 

 

 レイナースと一対一(サシ)の決闘という取り決めにはなっているが、傷ついた彼女の姿に動揺したマリアンヌがどんな行動に出るか分からないのだ。

 だから、決して楽観的に構えることなど出来ない。一人目を仕留めたとしても勝利の余韻に浸ることなく、間髪入れずに二人目も確実に仕留める必要がある。

 特にこの女戦士の場合、打ち負かした相手を時間をかけて嬲る趣味を持つが、この状況においては足枷となる。そんな自身の性癖を今だけは戒めねばならない。

 

 

 「帝国四騎士の一人、”重爆”のレイナース。あんたの事は詳しく知ってるよ。少し前まで、各地の強者の情報を入手できる立場にいたからね」

 

 

 その女戦士はマントを脱ぎ捨て、露出度の高い戦士としての姿を顕にした。

 そして、スティレットと呼ばれる刺突武器を引き抜き、その先端を二人に向けた。

 

 

 「当然、実力だって把握済み。本来のアタシだったら、アンタら四騎士が束になっても敵わないくらい強いんだよ~? まあ、今は本調子じゃないけど、それでもアンタ一人くらいなら、ぜんぜん余裕だから!」

 

 

 そう吠えると身を低くし、地面に手を付いて雌豹の如き構えを取った。

 

 

 「これでも、かつては英雄の領域に足を踏み入れてたんだ。そんな私が四騎士ごときに! 負けるはずがねぇんだよぉッ!!」

 

 

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