アインズ様を怒らせたクズ男(改)   作:黒郎丸

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ケモノを虐待するクズ男

◇ ───竜王国 某戦場

 

 

 「二、人間風情ガァァア!!」

 

 「はいはい、ご労様。」

 

  バキッ! ゴシャッ! ズガァアッ!!

 

 

 たかが人間だと侮り、次々に襲い掛かるビーストマンの群れ。

 それをなんでもないように、ただひたすら殴り殺す()()()()()冒険者・狂也。

 

 

 「戦士ノ誇リニ、カケテェ!!」

 「ウオォォォオッ!!」

 

 

 相手の強さが分かっても、戦士の誇りとやらに突き動かされながら突貫していく。

 

 

 (逃げ出さないのは、楽でいいな!)

 

 

 その勇敢さを、色々な意味で好ましく思った男は近づいた個体から始末していった。

 

 

 その光景を、他より一回り大きなビーストマンが呆然と眺めていた。

 彼は急いで檻に駆け寄ると、ディナーとして残しておいた子供を引きずり出して人質にとった。

 

 

 「ウ、動クナ! コイツガドウナッt……!」

 

 

   ボゴォンッ!!

 

 

 そんなことには一切構わずクズ男は一瞬で肉薄し、人質もろとも蹴り殺した。

 

 

 「ウワァァアッ!?」

 「二、ニゲロォォ!!」

 

 

 隊長格が戦死したことで統率を欠いたビーストマンの中で、臆病な個体から一目散に逃げだしていく。

 

 クズ男は焦ることなく、ゆっくりと携帯した袋から石を取り出し、形の良いフォームで次々と投げる。

 

 

   ブオォンッ!!

 

 

 投げた石は途中で分裂し、数匹のビーストマンをまとめて撃ち抜いていく。

 

 

 「「「グハァァアッ!!?」」」

 

 

 実力的にはアダマンタイト級であるが、ミスリル級に甘んじている冒険者・狂也。

 この男は、近接型の戦士職(モンク)だが、遠距離の攻撃手段がないわけではない。

 

 以前の仕事で、石を投げれば強烈な圧力により分裂して散弾銃のように攻撃できることを、村人を実験台に発見してからは狩りの効率が格段に上がっていた。

 

 簡単に言うと、戦士と弓手を兼任した戦い方を、さらに素早い動きで長時間行えるのだ。

 

 

  ……。

 

  ……。

 

 

 さて、ここからが彼にとっての『お楽しみ』だ。

 

 石による攻撃ゆえに威力が低く、ビーストマンたちは即死には至らなかったようだ。

 そのかわり、足や臓器をやられて動けなくなっている個体のもとへ残虐な笑みを浮かべながら、ゆっくりとどめを刺していく。

 

 

 「イデェ…、イデェヨォォ……」

 「イヤダァァアァ……」

 「ナ、ナンデ、ゴンナ目二ィィ……」

 

 「ひひひ、お前らだって人間様に対して、同じ事をしてきたじゃねぇかよォ」

 

 

 この『お楽しみ』があるから、ビーストマン狩りはやめられない。

 しかも魔物とは違い、恐怖と絶望の感情が伝わりやすい亜人であるのも『クズ男ポイント』が高かった。

 

 彼にとって、まさに趣味と実益を兼ねた仕事であると言えよう。

 

 

 「さぁてっと。早速だが裁判を行う。それでぇ? テメェらって、なんで人間様をいちいち狙うんだよぉ?」

 

 

 クズ男は幸運にも(?)生き残った三体に近付き、尋問を開始した。

 今の自分の力なら、大型の人型生物に重症を負わせて無様に平伏させることなど容易い。しかも、それを合法的に行えるのだ。

 元の世界では、決して味わえない快楽であった。

 

 

 「モ、モウ人間、襲ワナイ! ダカラ……ッ」

 「許シテクレェ……」

 「俺タチハ、命令サレタダケデ……」

 

 「エサが欲しいんなら、別の場所にもあっただろ? なーんで、わざわざ人里に来るかな~?」

 

 「二、人間ノ肉ハ、美味イカラ……」

 

 

 ビーストマンにとって、どうやら人間の肉は非常に美味のようだった。

 それは、一度味わってしまえば、もう他の肉など食べられなくなるほどの魔性の味であるらしい。

 

 

 「人間の味の感想なんか、どうだっていいんだよ馬鹿。それでぇ? 許して欲しいのか? まぁ、許してやっても良いんだけどよォ…。お前ら、また人間を食いに来るんだろ?」

 

 「モウ、シナイ! 許シテ、許シテェエエ……」

 

 

 そのうちの一体が遂に恐怖に耐えきれず、クズ男に向かって無様に土下座した。

 他の個体も同じく、それに続いた。

 

 

 「あれあれぇ~? お前らが食い続けた人間どもの命乞いも聞き入れたかァ?」

 

 「ソ、ソレハ……」

 

 

 このように言ってはいるが、別にこの男はビーストマンの所業に対して怒りは全く抱いていない。

 むしろ、感謝しているぐらいだ。自分が大英雄になる(かて)となってくれたことに。

 

 

 「なぁ? 俺様の事も同じように食おうとしただろ? 俺様が命乞いしてたら、お前らは許して見逃したのかよォ? ん~~?」

 

 「「「………。」」」

 

 

 ビーストマンたちは、何も答えることができかった。

 もちろん、そのような状況であったら絶対見逃さなかっただろう。だが、この男の前で下手なことを言って、機嫌を損ねる真似はできなかった。

 

 

 「ああ、言う必要ないぜ。お前らにも事情ってもんがあったんだろ? 俺様は慈悲深い! 条件付きでなら許してやってもいいぜェ?」

 

 

 急に親身な態度になったクズ男を見て、ビーストマンたちの気持ちが一気に明るくなった。  

 その条件とやらを満たせば、きっと恋しい我が家に帰れるのだと安堵した。

 

 

 「そうだなぁ……。じゃあ、お前ら三匹で殺し合え」

 

 「「「………エ?」」」

 

 

 緩やかな雰囲気から一転、ビーストマンたちは、まるで時が止まったように感じた。

 

 

 「めでたく最後の一匹になった奴は、その健闘を称えて見逃してやるよ! ほらっ、頑張れ頑張れぇ~!」

 

 「「………。」」

 

 

 前側にいた二体が大きく動揺している隙に、後ろにいた一番冷静だった個体が素早い動きで前にいた者の首に嚙みついた。

 

 

 「ウギャァアアアアアッ!?」

 

 「グルルルゥ……ッ!」(ゴメン! ゴメン……ッ!)

 

 

 それを見た横にいた者が我に返り、噛みついている個体の、さらに後ろから首に噛みついた。

 噛まれた個体の力が緩んだことで最初に攻撃された個体が動けるようになり、最後に攻撃した個体の体に噛みついた。

 

 その結果、三体が揉みくちゃになりながらの乱闘へと発展し、その滑稽さをクズ男は哄笑しながら眺めていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 

 「ゼハァ、ゼハァ……ッ! コ、コレデ、許シテクレルノカ……?」

 

 

 どうやら、乱闘に決着が付いたようだ。

 大けがを負いながらも生き残ることができた個体が、クズ男に許しを求めてきた。

 

 

 「おおッ! よくやった、偉いぞぉ! うんうん、偉い偉いッ! さて、約束の件だったな! そうだなぁ…………」

 

 

 だが、不幸なことに、ビーストマンという種族は大多数が嘘に慣れていなかった。

 強者には盲目的に従う性質を持つため、嘘をつき合う必要がなかった。他に言葉を交わせる存在と言えば、家畜として飼われている人間たちだけ。

 

 この個体もクズ男の姑息な嘘に、まんまと騙されてしまった。

 

 

 「人間様がケモノ風情と本気で約束なんて…………、交わすわきゃねぇぇぇぇぇだろぉぉぉおッ!! ぐひゃははははははぁッ!!」

 

 「エ……? ソ、ソンナッ! オ、俺、チャント約束ヲ……ッ」

 

 

 その言葉を聞いた最後のビーストマンは、一気に絶望に落とされた。

 

 クズ男は彼の首根っこを強引につかむと、空高くジャンプした。 

 

 

 「ぎゃははははははぁ~~~ッ!!」

 

 「ヒィッ、ヒィィイイイッ!?」 

 

 

 そして、地面に思いっきり投げつけた!

 

 

     グシャッ!!

 

 

 叩きつけられたビーストマンは、そのまま大地の染みと化してしまった。

 

 

          ■

 

 

◇ ───竜王国 最高級娼館

 

 

 「おはようございます。キョーヤ様。こちらが前回分の報酬となります」

 

 

 クズ男が住み着いている、この国一番の娼館に来訪したギルド職員から、今回の依頼書を渡す前に前回分の報酬を支払われた。

 

 現地民の一般冒険者であれば、何の犠牲も払うことなく稼ぐには無理があるほど高額な報酬だった。

 

 

 「おう、ご苦労さん、と言いてぇところだが、ちょっとばかし少なくねぇか?」

 

 「そ、それは…、あの場にいたビーストマンの集団が弱小の部隊だったからですわ!」

 

 

 しかし、意外かもしれないが、もらっている報酬は倒したビーストマンの数の割に高くはない。

 なぜなら、悪さをするたびにペナルティとして報酬が減額されているからだ。

 

 

 男が疑問を抱いたこともあったが、本当の理由は言わず、その時に倒したビーストマンが弱い個体だったからと説明したら、あっさりと騙されてくれた。

 

 

 この世界では強すぎるがゆえに、ビーストマンの隊長格と一般戦士の強さの差が分からないクズ男であった。

 

 

「まあ、このくらいであれば問題ねェ。娼館代には十分とどくしな」

 

「そ、そう言っていただけると、助かりますわ……」

 

 

 だが、そんなことは特に問題でもない。

 

 普通の冒険者であれば、装備の点検や交換、薬品の調達に結構な金がかかる。

 そして移動だけでも、かなりの時間を要するし、それだけ疲労も溜まり効率も落ちる。

 さらに、疲れが溜まらないように三日に一度しか仕事ができない。

 

 そして、この国では仕事量を制限する必要もない。

 例えば、リ・エスティーゼ王国の『蒼の薔薇』や『朱の雫』などの高位の冒険者は、他の冒険者の仕事を奪わないように仕事を制限することも多いが、この竜王国では積極的に仕事を行うことが推奨されている。

 

 それらの欠点をクズ男は一切抱えなくて済むので、ミスリル級なのにも関わらず金が貯まる一方なのだ。

 

 

 「それで、今回の依頼を聞こうか?」

 

 「はい、今回は少々、遠出をしていただくことになるのですが……」

 

 「なぁに、俺様の足の速さなら、5分もあれば大抵の場所には辿り着けるから大丈夫だぜっ。お高い報酬の依頼であればな!」

 

 

 その圧倒的な身体能力に任せて森や建物を飛び越えられる上に、川面まで走ることができるため最短距離で到達することも可能だった。

 

 

 「普通なら、片道で2時間かかってしまうのですが……」

 

 

 小さくつぶやいた職員の声は、男には聞こえていなかった。

 

 

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