「あ、アンタ大丈夫そ…?」
「うん…よし、このまま…!」プルプル
ポロッ……
「あー落ちちゃった…」
俺は2人の女の子に見守られながらご飯を食べていた。
「左手じゃまともにご飯も食えないや…」
「私が食べさせてあげよっか??」
あー、と口を開けながら箸をこちらに向けてくる。
「ありがと千里。でも甘えるわけにはいかないんだ、ボールにノビと球威を与えるためにも」
でも、ご飯もいっぱい食べて身長も伸ばさなきゃだよな。
「せやでー、ここで甘やかせば零翔のためにならんよ?」
少し悲しそうに眉尻を下げる千里。
可哀想な気持ちになるよそんな顔されたら……。
「今日、字汚いって怒られたし…突き指したって言って何とかなったけど…」
道のりはまだまだ長いようだ。
「それにしてもあのキャプテンは何考えてるか分からんわ…!」
「茂野先輩?」
アニータは茂野先輩の方針に納得いかないのか、露骨に不満そうな顔をする。
「大会で仁科はマウンドにあげるつもりはないゆーてたし、零翔もバッティングええから外野中心で行くって…佐倉先輩だけやとキツイで!」
「多分目の前の試合に一喜一憂するより今の戦力でできることを試してチームの方針を決めたいんじゃないのかな…」
俺は試合で投げれる状態じゃないし、今の練習が一区切りつくまでは変に投げ込んで変な癖つけたくないしね?
「試合に勝たな意味ないやん!」
「俺はまだ戦力にはなれないし、まだ2年以上残されてるから今は無理するより、じっくり体作っておきたいかな」
「零翔もキャプテンと同じ考えなんやな…」
ガタッと音を立ててアニータは教室を出て行った。
「…千里はどう思う?」
問いを投げかけながら、再度弁当箱に箸を伸ばす。
「…アニータは負けず嫌いだから、零くんたちが試合の勝敗にこだわってるように見えないから怒ってたんだと思う」
「別にやれることはやるつもりなんだけどな…」
ポロッ……
「あ、また落とした〜」
はあ、大会に間に合えば投げさせるかもって茂野先輩言ってたんだけどね…。
でも、まだ周りに新戦力の存在がバレたくないと言う気持ちもあるって言ってたな。
キャプテンとして茂野先輩も結構考えてるんだろうな。
「んぐっ!?」
すると唇に何かを押し付けられた。
「ほら〜早く食べろー?」
千里とアニータのおかげで昼休み中は視線がすごく痛かったです。
大会まで2週間、ひたすら指先の感覚を磨くしかない…!
試合当日…
「零翔はスタメンじゃないけど、ベンチで応援よろしく!チャンスがあれば代打か中継ぎとして出すつもりだから準備しててね!」
「はい!みんな頑張ってきてください!!」
『おー!!』
こうして人生初の公式戦が始まったのだった。
1(中)藤井千里
2(遊)相楽太鳳
3(二)沢弥生
4(捕)椛島アニータ
5(投)佐倉睦子
6(三)関鳥星蘭
7(右)仁科明
8(一)丹波広夢
9(左)茂野大吾
ベンチ
轟零翔
試合は俺たち風林中が先攻の五木中が後攻となり、始まった。
千里の打席
初球の舐めた球をピッチャーに打ち返し、内野安打。
相良先輩の打席
初球を空振り、一塁の千里が盗塁。
続く二球目を強く叩くも、セカンドのダイビングキャッチに阻まれる。だが、送球の体勢が悪く内野安打となった。
そして、一塁に気を取られた五木中はホームを目指す千里に気づくのが遅れ、セーフとなり風林中に一得点目が入った。
続く沢先輩の打席ではホームランを打ち2点の追加点が入った。
だが、偵察で見なかったスライダーを使ってきたピッチャーに対応できず4、5、6番は凡退となった。
1回裏
佐倉先輩が制球難に苦しみランナーを2人出すも、一度タイムを狭むといつもの調子をとり戻して、続く打者をダブルプレーとピッチャーゴロに抑え無失点で切り抜ける。
その後エラーが目立ちピンチの場面もあったが無失点で切り抜け、6回表で7点差と次の守備を0点に抑えればコールドとなる場面で関鳥先輩に代わり俺が代打で出ることとなった。
ツーアウトでランナーが二塁にいる状況。
ふう〜……。
心を落ち着けバットを握る。
だが、初打席でワクワクが止まらない…!
今ならフルスイングで三振しても気持ちいいと言える気がする。
一球目インコース高めにストレートが外れる。
そして、続く二球目……
カキーンッ!!
疲れからか、甘く入りほぼ曲がらなかったスライダーを見逃さずフルスイング…。
今日一番の快音が球場に響き、打球はバックスクリーンへとぶつかった。
初めての公式戦、代打で出場した俺は試合初打席をツーランホームランで飾ったのだった。
そして6回裏、キャッチャーフライ、ピッチャーゴロ、ピッチャーフライに抑え風林中の初戦は9:0でコールド勝ちとなった。
こうして俺は最高の結果で初出場試合を終えたのだった。
「まさか公式戦初打席であんなとこまで飛ばすなんてね〜」
沢先輩がそう口にする。
今は沢先輩と相良先輩と帰宅中である。
余韻に浸ってて、気づいたら横に2人しかいなかったのだ。
「まぐれですよ…!スライダーが甘く入って曲がんなかったから……」
「ちゃんと球見えてるし、、素直に喜びなよ」
「そうだぞ後輩!!」
沢先輩と相良先輩はそう言ってくれる。
「球場で見てた人なら多分誰もピッチャーで、しかも130キロ近く投げれるなんて思わないだろうね〜」
沢さんは呑気そうにそんなことを言う。
「今日は茂野先輩の家で……」
ピロン!
ん?連絡が来た……。
『全員、試合の後で悪いんだけど学校集合で!』
「明日戦う清和中の試合を見て来たけど、足を生かしたプレーをするチームでした。チーム全員が次の塁を狙う意識が強く積極的にバントや盗塁をしてきます。なので、今からその対策をしようと思います!」
茂野先輩はみんなに向かってそう告げる。
「仁科や零翔くんはセットポジションできる?」
「余裕っすよ」
「俺もできます」
「なら良かった、2人にはなるべく投げさせたくないけど…まだ君たち2人は発展途上だから」
てことは佐倉先輩が次の一試合も投げるのか。
しんどいな。
「仁科、少しキャッチボールしよう。俺のボール見てくれない?」
「何だよ急に…まあいいけどよ」
「ありがとね」
ボールとグラブを持ちみんなが練習しているところから離れる。
「行くよー」
「おう」
シュッ……
パシッ
「お、球の回転綺麗になってるじゃねーか」
「でしょ?」
「球威もスピンもこの間よりいいぜ…よっ!」
パシッ
「成果は出てるみたいで良かった!少しずつ距離離していくからね?」
「何でだよ?」
仁科は首を傾げる。
「同じフォームで徐々に投げる力を強めていくためだよ」
「なるほど…」
そうして俺たちはキャッチボールを繰り返していく。
距離はライトからレフトぐらいまでになり、かなりの距離だが余裕を持って届くようになった。
この間までは、ボールに力がなくてライトからセカンドまでしか届かなかったけど。
仁科のボールも低い軌道でちゃんと俺のところまで届いている。
「よーし、そろそろ終わろっかー!」
“りょーかーい!”
そして俺たちは柔軟をして、その日はあがらせてもらった。
今日の感覚、結構いい感じだったな。
7〜8割くらいでもフォームと指先のタッチは崩れなかったし…。
あとはひたすら反復練習だな。
次の次の試合くらいには間に合うだろう。
評価と感想とアンケートとここすきがモチベです。
全て貰えるとやる気あがるのでお願いします。
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零翔くんと仲良くして欲しい人
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茂野大吾
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佐倉睦子
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相良太鳳
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沢弥生
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藤井千里
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椛島アニータ
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仁科明
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眉村渉
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眉村道塁
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茂野いずみ
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佐藤光
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郷田早苗