「やってらんないよねー全く!英邦の試合なんか見たって自信なくすだけだっての…」パクッ
「今頃練習しようとか言い出してたりして…w」
「……あのー」
『?』
俺が恐る恐る声をかけると相楽先輩と沢先輩がこちらに視線を向ける。
「なんで俺までここに……?」
総仕上げの投げ込みをしようと一足先に球場を後にすると、相楽先輩と沢先輩も球場を出てきて2人に連れられファストフード店へと連行された。
「そりゃー可愛い後輩を練習怪人の“大吾”から守るために決まってるでしょ」パクッ
「そうそう」
「明日投げるんで調整したかったんですけど…」
美味しそうにポテトを頬張る相楽先輩と、爪にせっせとマニキュアを塗る沢先輩。
「それにしても、今日もホームランとは……なかなか派手に暴れてくれるじゃない?」
「いやーほんとほんとー!7回のダブルプレーといい轟は覚醒してたね!」
「守備はいつも通りやっただけですよ!ホームランも一球目が外れて甘く入ったストレートを待ってたらちょうどいいところに来たんで…!」
「その“いつも通り”ってやつがなかなか難しいのよ?」
2人は俺なんかを煽てて何かするつもりなのだろうか…?お金はそんな持ってないからカツアゲはやめてください……。
「はぁ〜でも、、このままじゃ中学で野球の思い出しか残らないよ…もっと青春したいなぁ」
そんな時、相楽先輩がそんなことをこぼす。
「部活に打ち込むっていうのも青春なのでは?」
疑問に思いそう言うも…
「いやそうだけどー、なんかもっとこう……」
「ああ言う感じでしょ?」
沢先輩の指差した方にはポテトを食べさせ合う男女が…。
「あれがいいんですか?」
「あーいうのもいいよね〜、高校生になったときにまだ彼氏できたことないとか恥ずかしくて言えないよ~」
「そ、そういうものなんですね…。ポテト、ひとつもらっていいですか?」
「んー?別にいいけど〜」
「ありがとうございます」
ポテトをひとつもらい、相楽先輩に差し出す。
「ん?なに?」
「俺で良ければ食べさせてあげましょうか……?」
落ち込む相楽先輩を励まそうと顔の前にポテトを持っていく。
「え…!?あ…うん、、ありがと…///あー……」パクッ
「ひゅー、あついねぇー(棒)」
沢先輩は爪を整えながら棒読みで言う。
「餌あげてる気分になりますね…」
俺も苦笑いしながらそう言う。
「ちょっ!?弥生は棒読みだし2人とも扱い酷くなーい!?」
「良かったじゃん、これを機に連絡先交換しちゃいなよ〜」
「ちょ…!弥生!?」
戸惑う相楽先輩。
「あ、そういえば初日に聞いてくれたのにすいません…ぜひ交換しましょう!」
すっかり忘れていた…。
野球が楽しくて楽しくて頭から抜け落ちてた。
そう言って俺はスマホをいじり、グループのメンバーから相楽先輩とついでに沢先輩の連絡先も追加する。
「…よし。お2人とも追加しておきました!」
すると相楽先輩にジトっとした視線を向けられる。
「本当は弥生の連絡先が欲しかっただけでしょー?」
「……あ、お家に帰らなきゃー(棒)」
「ちょ、待てぇーい!!」
俺は自慢の足ですぐさま退散するのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「まったくもう〜!」
頬を膨らませながらもう一度、太鳳は席に着く。
「ああして見てると可愛い後輩なのに、グラウンドに立つとすごいのがギャップよね〜」
「…弥生は轟のことどう思ってんの?」
「うーん、別になんとも?まあ私が最推しなのは見る目あると思うね…w」
「…っけ、自慢かよ!」
「さっきの感じだと大吾と同じくらい鈍そうだけどねーあの坊や……それと、連絡先もらえて良かったじゃん」
「うるさいなぁ〜、別にそんなんじゃないってばー!」
「あーんされるときとか顔赤くしちゃってねぇ〜w」
「だぁー!!うるさぁーい!////」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
帰宅途中に大雨で猛ダッシュで帰宅した俺です。
今は風呂でぬくぬくしている所。
「最近ストレートしか投げてなかったから、変化球投げようと思ってたんだけどなぁ……」
まぁ、仕方ない。
今日はゆっくり休んで、明日の短い投球練習の時に……。
「……あっ、、茂野先輩に変化球投げれること言ってないや」
俺のスローカーブと、チェンジアップがあればリードしやすいと思ったけど……。
やば……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日…
「今日のラインナップを発表します!」
1(中)藤井千里
2(遊)相楽太鳳
3(二)沢弥生
4(捕)茂野大吾
5(右)仁科明
6(左)轟零翔
7(三)関鳥星蘭
8(一)丹波広夢
9(投)佐倉睦子
ベンチ、椛島アニータ
「アニータにはいち早く怪我を治してもらうためにも、無理はさせられないからベンチで。それで四番に俺と五、六番に最近当たりのいいライト仁科とレフト零翔くんにしました」
「初スタメンじゃねーか、良かったな」
「うん、やる気出てきた!」
仁科にそう言われ、武者震いが止まらなくなる。
「ウチ、スタメン外されてもた……」
「しょーがないでしょー?怪我、早く治しなさい!」
半泣きのアニータに厳しい千里だった。
「それと、アニータ」
「え、はい?」
そして突然また呼ばれ、驚くアニータ。
「問題なければなんだけど、肩作る時に零翔くんの変化球を見てあげて欲しい」
その一言に、風鈴野球部全員が固まる。
『……へ、変化球!?』
皆が声を揃えて驚き、俺の方を一斉に向く。
「あはは……実は投げれることすっかり忘れてて、、」
「そーゆー大事なことは早く言えよ!!」
仁科にそう突っ込まれてしまう。
「何が投げれんの…?」
「えーっと、スローカーブとチェンジアップ…まぁでも自信はないから数球程度の見せ球ぐらいにしかなりませんよ…w」
「まあ、その2つやったらすぐ取れるか…」
アニータに聞かれ、正直に2つ答えるとほっと一息つくアニータ。
「分かった。茂野先輩、コイツはうちに任せとき!」
「頼みます!睦子には3回投げてもらったらあとは零翔くんに交代してもらうから、3回の裏の攻撃の時から肩作り始めてください」
「了解です!」
「さあ、気を引き締めていきましょう!!」
『オォー!!』
1回の表……
先頭打者と二番を危なげなく三振に抑えるが、三番と四番を雨によるグラウンドの状況が悪いせいで相楽先輩と沢先輩のエラーで出塁。
続く五番のバッター、バットに当てられるもセンター前の討ち取った当たりとなる。
だが、同時オーライで千里と相楽先輩と沢先輩がお見合いしてしまい1点を失った。
だが、しっかりと立て直し続くバッターを三振に討ち取り1回の表が終了した。
1回の裏……
千里が出塁するも相楽先輩がボール球を引っかけゲッツーとなる。
続く沢先輩も、ボール球を引っかけてサードフライとなった。
「佐倉先輩」
「ん?どうしたの轟くん」
「疲れの方はどうですか?」
今日登板する試合と言われ、早く投げたいという気持ちが先行する俺は佐倉先輩に声をかける。
「あぁ、うん!まだ全然大丈夫だから!3回の攻撃の時までは肩作らなくてもいいよ!」
「そ、そうですか…!良ければ3回から投げたいなと思ってたんですけど…」
俺はそう佐倉先輩に伝える。
「え?」
「佐倉先輩も午後の試合のために余力を残した方がいいと思いますし…」
「うーん、、気にしてくれるのはありがたいけど…大吾は、零翔くんに午後の試合も投げてもらいたいって言ってたから、なるべく私が投げるよ!」
「…!?そ、そうですか…分かりました!じゃあ、4回から投げることにします!余計なこと言ってすいません」
「ううん!零翔くんのためにも、もう一点もあげないように頑張るから!」
そう言って、佐倉先輩はマウンドへと向かっていった。
午後の試合も投げるのか…。
まあ、これくらいの相手だったら球速抑えても打ち損じてくれるだろうから、丁寧に投げるようにしよう…。
そして2回と、3回の表が特に何か起こることも無く終わる。
「よし、アニータ!肩作るの手伝って!」
「了解!」
俺はグローブをもってブルペンへと向かう。
マウンドをいい感じにならして、キャッチボールを始める。
パシンっ!
「お、気合十分やな!」
「当たり前でしょ!初公式のマウンドに登るんだから!」
俺は左腕を回しながら、答える。
「雨なのがちょっとあれだけど……まあ俺のストレートで雲を割って晴れにするわ!」
「んなアホなこと言っとらんで肩作ることに集中しいや!」
パシッ!
「はい、よ!」
パシンっ!
十球ほどキャッチボールを繰り返し、アニータを座らせる。
「それじゃ、力抜いていくからねー!」
俺は、脱力してゆっくりと投球動作に移る。
力を入れるのは……
この!リリースの瞬間……!
ビュン…!
「!?」
パシーンッ!!!
「(いったぁ…!ゆっくりって言うから油断しとったら速い球投げてくるやん!)速い球投げるんやったら言ってや!」
「ごめんごめん!まだ6割くらいだからね…」
「は…?(ろ、6割やて!?今、体感120キロは出てたで?それに、この間までとは比べモンにならんくらいにいい球がキてる…!)」
うん…!結構感覚いい感じだな!
指先の感覚もベストのリリースが出来てる。
「まだ、8割くらいまでじゃないとスピンの聞いたいい球は投げられないから…!まあこの試合は5割くらいで投げ抜くつもりだけど…」
そう言って、五球ほどストレートを投げる。
「よし、変化球いくよ?スローカーブ!」
「よし、来いや!」
濡れた指先を服で拭いて水滴を取り、ボールを握る。
ストレートとなるべく変わらないフォームと腕の振りで、リリースの感覚で球速を緩める。
「!?(すっぽ抜け…!?い、いや!)」
クククッ……パシッ!
すっぽ抜けかと思われたボールは左バッターのインコースギリギリに入った。
「な、ナイスボール…!(めっちゃいい球や!速球との緩急がえげつないし、初見の左バッターやったら自分に飛んできたんかと錯覚するほどや!)」
「よし、なんか指先の感覚鍛えたおかげか変化球のコントロールも良い!」
久々に投げたけど…めっちゃいい感じだ!
変化球のコントロールがしやすい!
「つぎ!チェンジアップ!」
「おう!」
ビュッ!
ガクンっ…パシっ!
「ナイスボール!こんな変化球投げれるんやったらもっと早く言ってや!」
「いや、思ったよりも変化球も進化してて俺もビックリしてるよ…!」
ガキーン!!
すると打席の方からすごい打球音が聞こえてきた。
放たれた打球はホームランとなり、ダイヤモンドを回るのは沢先輩だった。
「あとラスト一球にしとこうアニータ!もしかしたら打席回ってくるかもだし…!」
「りょーかい!」
「気合い入れてとってね!ストレート!」
俺は振りかぶり、アニータの構えたミットに狙いを定める。
意識するのは、脱力からの………
リリースの瞬間に渾身の力を込めるだけ……!!
ビュンッ!!
「!?」
ズバーンッ!!!
「…っと、、よし戻ろう!」
「(い、今の球…何キロ出てたんや!?中坊の出していいスピードやないと思うんやけど!?)」
俺とアニータは駆け足でベンチへと戻った。
「あ、轟くん!次の打席回ってきそうだったから準備しといたよ!」
「あ、すいません佐倉先輩!じゃあ、行ってきますね!」
グラウンドに視線を向けると茂野先輩が出塁していた。
仁科も続いて出塁し、俺に打席が回ってくる。
打席に入りバットを構える。
パシっ!
うーん、遅いし微妙に動いてるから打ちづらい…。
これはホームランは厳しいな。
なら、強い打球を軽がすしかない…!
カキーン!!
よしっ!一塁線ギリギリ…!
“フェア!”
二塁まで行けるぞこれ!
俺は一塁を蹴って二塁を目指す。
よしっ!行けr……ズルンッ!!!
「え…?」
バシャーン!!
パシッ!…コツン
“あ、アウトー!”
足を滑らせた俺は、人生の中で最も不快で最悪なヘッドスライディングをした。
立ち上がるも全身びちゃびちゃの泥だらけ…。
気休め程度に顔を拭って、ベンチに戻る。
「お、おい…大丈夫か?お前……」
「……もうマウンド上がりたくない(泣)」
「ちょ!?泣くなよ!!」
「大丈夫零翔くん…って泣いてる!?」
その後、仁科と茂野先輩に励まされながらベンチに戻るのだった…。
評価と感想とアンケートとここすきがモチベです。
全て貰えるとやる気あがるのでお願いします。
評価https://syosetu.org/?mode=rating_input&nid=369980&volume=1
感想https://syosetu.org/?mode=review&nid=369980&volume=1#review
轟 零翔(左投げ左打ち)
中学1年(ピッチャー、外野)
体格
133キロ
コンD、スタC
スローカーブ2 チェンジアップ3
ノビB、対ピンB、緩急、重い球、リリース、投打躍動
×スロースターター
零翔くんと仲良くして欲しい人
-
茂野大吾
-
佐倉睦子
-
相良太鳳
-
沢弥生
-
藤井千里
-
椛島アニータ
-
仁科明
-
眉村渉
-
眉村道塁
-
茂野いずみ
-
佐藤光
-
郷田早苗