俺の野球は5回から   作:疾風“はやて”

7 / 8
轟 零翔(左投げ左打ち)

中学1年(ピッチャー、外野)

体格

135キロ
コンD、スタC
スローカーブ3 チェンジアップ3
ノビB、対ピンB、緩急、重い球、リリース、投打躍動
×スロースターター


投手戦…!

3回裏……

 

仁科のスタミナ切れが懸念点だったが、しっかり抑えて二者凡退で、続く9番打者を討ち取り、3回の裏が終了すると思われた……。

 

カキーン!

 

仁科の投じたボールは、ライトにいる佐倉先輩の右側へと飛んでいき、グラブに収まる……

 

 

 

 

 

ステーン!

 

 

「……へ?」

 

佐倉先輩が滑って転んでしまい、ライトを抜けてフェンスまでボールがころがっていく。

 

カバーに入った千里がすぐボールに追いつき、ランナーを2塁にとどめることは出来た。

 

「大丈夫か……?佐倉先輩」

 

俺はそう呟きつつ、レフトの守備位置に戻る。

 

ツーアウト2塁で上位打線……。

 

これ以上仁科が投げることになればスタミナ切れもおかしくない……。

 

「頑張ってくれ……仁科!」

 

 

 

キーンッ……!

 

そう思っていたのも束の間、、ライトとセンターの間を抜ける長打。

 

……まずい。

 

掲示板の大尾中の所に“1”の数字が掲示される。

 

「ここだけでもいい……抑えてくれ! 」

 

カコーン……!

 

すると俺の方に詰まった打球が飛んでくる。

 

「オーライ……!」

 

すぐさま前進し、落下地点に入り込んでボールを待つ。

 

パシっ!

 

「っぶね…道塁さんだったから少し前に出てたけど、結構ギリギリだったな」

 

スリーアウトチェンジ……!!

 

「悪りぃ、お前に変わる前に余計な得点与えちまった……」

 

ベンチに戻ると仁科にそう言われる。

 

「大丈夫だ、ランナー溜め込んだ状況での交代よりかはマシだよ!」

 

仁科を励まし、俺は軽くストレッチを始める。

 

「零翔くん!アニータと一緒に肩作ってて!下位打線の人はランナーコーチよろしく!」

 

茂野先輩の指示を受け俺はブルペンへと向かう。

 

「っしゃ!いくで零翔!」

 

「おう」

 

マウンドに立ち、軽く投げ始める。

 

パシっ!

 

「こんな緊張する場面で投げるの初めてだから緊張するな…… 」

 

「なんや、ビビってんか?」

 

「いや、、気合い入るなと思って…w」

 

アニータと、ボールと一緒に言葉も交わす。

 

「余計なこと考えんで、アンタは茂野先輩のミットを信じて投げればええんや!」

 

転がってくるボールと共に、飛んでくるアニータの言葉に、少し体の力が和らぐ。

 

「そーだね、そろそろ座っていいよ」

 

徐々に肩も温まり、アニータを座らせる。

 

「ストレートだけね!」

 

そう言って、5割くらいの力で指先に力を込めて投げ込む。

 

スパーン!

 

うん、悪くない。

 

ボールの投げ方も安定してきてるし、しっかり指先まで力が伝わってる感覚がある。

 

何球か繰り返し、徐々に力を強めていく。

 

パシーン!!

 

「そろそろラストで行くよー!全力で投げてみるからしっかり取ってね!」

 

「おうよ!」

 

一旦、試そう。

 

今の出せる全力の投球。

 

大きく振りかぶって、アニータのミットを見据える。

 

1歩大きく踏み込み、全体の力を指先に集中してボールに力を伝える……!

 

ビュンッ!!!

 

「っ!?」

 

バシーンッ!!!

 

「…っよし!」

 

「っぶなー!何とかミットに入ったけど…捕れるか怪しかったで」

 

調子がいい……。

 

そんな気がして、審判のチェンジの声が聞こえてくる。

 

「ええボールやったで!このまま行けば三振取れんで!」

 

「ありがとね!……じゃあ行ってくる! 」

 

アニータに返事を返し、グラウンド中央のマウンドへと向かう。

 

“風林中、守備位置の交代をお知らせします。レフトの轟くんがピッチャー、ピッチャーの仁科くんがレフトに入ります。”

 

「零翔くん、調子はどう?」

 

「問題ないです。8割くらいなら取り敢えず安定して投げれるので」

 

「とりあえず3番と4番は強打者だ……落ち着いてコントロールしていこう! 」

 

3番の打者が打席に入り、審判の“プレイ”の言葉が辺りに響く。

 

外角低め……。

 

ボールの握りを確かめて深呼吸をする。

 

いつも通り……指先に全身の力を伝えて、、

 

ビュンッ!

 

パシーン!!

 

“ストラーイクッ!”

 

手を出さず、見送られストライクとなった。

 

「ナイスボール!」

 

あぁ…やっぱり楽しいなマウンドって!

 

茂野先輩のミットまで糸が引かれているかのように、一直線に進んでいくボールが捕球された時の快音……そして審判の気持ちのいいストライクコール…!

 

「(は、速い……!さっきのピッチャーも速かったが、こっちはボールに圧を感じる……)」

 

そんなバッターの心情など気にも留めずに、2球3球と投げ込み3球勝負でバッターを三振に討ち取りワンアウトとなる。

 

コントロールも定まってるし、ボールの勢いもいい感じに投げれてる。

 

続く4番……

 

インハイ低め……

 

ビュンッ!

 

ズバーン!

 

“ストラーイク!”

 

「(この人数で、まだこんなピッチャーが居るなんてな…低いボール球かと思ったらストライクだった……!)」

 

 

 

 

ブンッ!

 

ズバーンッ!!

 

“ストラックアーウト……!”

 

「っしゃあ!!」

 

4番も討ち取り、続く5番も危なげなく三振にし交代となった。

 

落ちた帽子を拾い上げ、ベンチへと戻っていく。

 

「ナイスピッチング零翔くん!」

 

駆け寄ってきた茂野先輩に、グローブで背中を叩かれる。

 

「あざっす!」

 

俺はグローブを外しながら茂野先輩に対して返答する。

 

ピッチャーも変わっていい変化球を投げる人になったから、打てるかは分からないけど……作戦は無いわけじゃないし。

 

「ナイス零翔くーん!」

 

ショートから戻ってきた相楽先輩にもお褒めの言葉をいただく。

 

「あざす!さ、次の回…逆転でも狙いますか!」

 

いつも通り、目標は高く宣言する。

 

「う、うん……!この回、私からだけどさっきのエラーの分、頑張って打つから…!」

 

そう言って佐倉先輩はヘルメットとバットをもってバッターボックスへと向かっていった。

 

「俺も早く準備しねーと…!」

 

仁科も外野から戻ってきて急いで準備をしている。

 

ふぅ……。

 

マウンドでの気分が抜けてないのか、まだなんかフワフワしてる感じがするな……。

 

初めての熱い勝負に、まだ気持ちが浮ついてる気がする。

 

とりあえず水分補給でもしようかと、飲み物を手に取りグイッと口に入れる。

 

「少しこわばった表情してるけど…どうかしたの?“零翔”」

 

「ブフッ…!?ゲホッ…ゲホッ!」

 

すると、横にいた沢先輩に声をかけられて思い切りむせてしまった。

 

「あらら…w大丈夫そう?w」

 

「さ、沢先輩!?その…!呼び方……突然どうしたんですか!?///」

 

「ん?嫌だった?」

 

「いや!別にそういう訳じゃないですけど…///」

 

推しに突然名前で呼ばれたらそりゃびっくりもするでしょうよ……!

 

「いやーごめんね?wちょっとした興味本位でさ?w」

 

「……弥生?」

 

「まさかここまで驚くとは思わないでしょうよw」

 

「びっくりさせないでくださいよ…」

 

なんか変に考えてた自分が馬鹿らしくなってきた……。

 

俺もバットとヘルメット持って準備しつつ、バッターの応援しよう。

 

5回表……

 

佐倉先輩は粘るも、大尾中の守備に阻まれセカンドゴロ……。

 

仁科は外野にいい当たりを飛ばすも、センターフライとなりツーアウトになる。

 

「(ツーアウトで俺の打席か……セーフティバントしようと思ってたけど、、下位打線だからなんとも言えないな……)」

 

そんなことを考えながら、打席に入る。

 

それなら、変化球は捨ててストレート打ちするしかないな……。

 

この打席で変化球が苦手なのがバレるかもしれないけど、仕方ない…。

 

バットを構えて心を落ち着ける。

ビュンッ…!

 

「(す、スライダー…!?)」

 

パシンッ!

 

今まで対戦して来たピッチャー達よりも鋭い変化のスライダーが自分から逃げていくかのようにキャッチャーミットに収まる。

 

結果はストライク、見えてはいたけどバットの先っちょとかに当たって、打ち損じる自信しかない…。

 

続く2球目…

 

「(…!?またスライダー!?)」

 

カコンッ…

 

“ファーウル!!”

 

くっ…やっぱり先っちょに当たった…。

 

どれ程の変化かまだ見極められてないから芯で捉えられない…!

 

ボール球かもだけど…ストレー卜を思い切り打つしかない!

 

そして投じられた3球目……

 

バゴーン…!

 

高めのボール球を思い切り振り抜き、打球は外野に飛んでいく。

 

だが打球の勢いはすぐに落ちていき、センターが定位置で捕球しアウトとなりチェンジが告げられる。

 

「ドンマイドンマイ!まだチャンスはあるからこの回きっちり抑えよう!!」

 

茂野先輩の励ましで気持ちを切り替え、帽子とグローブを身につける。

 

「(これ以上得点を許すわけには行かない…!! )」

 

この回は6番バッターからだから落ち着いてコントロールしていけば大丈夫。

 

5回裏……

 

一球一球落ち着いて投げていき、全球ストレートで三者連続三振に討ち取り、5回の裏が終了する。

 

あと残る回も2回…そしてピッチャーも変わり、あの眉村道塁さんになった。

 

サイドスローから放たれる力強いストレートに多彩な変化球、そして精密なコントロールと男子にも負けない実力者だ。

 

「真打登場ってやつ?」

 

「道塁ちゃんはリトルの頃から凄かったけど、それに多彩な変化球を身につけてる…とりあえず狙い玉を絞って自分のスイングをするしかないよ」

 

道塁さんの投球練習をベンチから眺めながら沢先輩と茂野先輩が呟く。

 

俺はその会話に耳を傾けながら、ヘルメットを被りランナーコーチへと向かった。

 

6回表……

 

堂々としたピッチングに、関鳥先輩と丹波先輩が三振となりツーアウト。

 

1番バッターに戻り、千里が打席に立ち粘るも、キレのある変化球を振り抜くも、セカンドのファインプレーに阻まれ、セカンドゴロとなった。

 

ランナーコーチから戻って来て帽子とグローブを持ってマウンドへと向かう。

 

まだ疲れはないし、肩もいい感じにあったまって来た気がする。

 

「茂野先輩!打者一巡したらギアあげますね!」

 

俺の言葉を聞いた茂野先輩は少し驚くような様子を見せるが、すぐに“うーん…”と考えて、、

 

「…分かった!延長のことも考えると少し怖いけど、1点もやるわけにはいかないからね…」

 

そして6回裏……

 

9番バッターを危なげなく討ち取り、打者一巡となる。

 

ここからは4人の強打者が続く…。

 

より一層気を引き締めていかないと。

 

さっき一球だけ10割で投げて分かったことがある……。

 

 

 

 

 

「茂野先輩…10割だと少しコントールが荒れるかもしれないので、気をつけてくださいね?」

 

「あ、うん!了解…!ここからは悔いのないように、相手チームに俺たちの全力をぶつけていこう!」

 

「ういっす!」

 

改めて自分たちを鼓舞して、審判のプレイボールの声がグラウンドに響き渡る。

 

「フゥー……」

 

大きく息を吐き、呼吸と共に投球モーションに映る。

 

全身の力を、この指先一つに…!

 

そして…!!

 

ボールに伝える………!!

 

ビュンッ!!!!

 

ゴォォォ…!

 

ズバーンッ!!

 

“す、ストラーイク!!”

 

俺が流れを作るんだ…!

 

この気持ちをボールに込めて投げ込んだ一球は、唸りながら茂野先輩のミットに収まる。

 

もう出し惜しみはしない。

 

 

 

2球目…

 

ビュンッ!!!!

 

ゴォォォー…!

 

ズバーンッ!!

 

“ストラーイク!!”

 

2球目も相手バッターのバットに掠ることなくミットに収まっていく。

 

 

3球目……

 

左バッターのインコースにこの球を…!

 

スポッ…

 

 

 

 

 

「(失投……!?ボールがこっちに向かって……!!)……なっ!?」

 

クククッ……パシっ!

 

インコースに投げ込んだスローカーブに相手バッターの出光は仰け反るも、ストライクゾーンのキャッチャーミットに吸い込まれて行った。

 

“ストラーイク!バッターアウト!”

 

一度後ろに身を引いてしまった出光は呆然とボールを見送ることしか出来ずに見逃し三振となった。

 

「よっし…!!」

 

初公開のスローカーブを一番良い形で使うことができた。

 

後続のバッターもカーブが強く頭に残ってると思うし…。

 

そして、次の打者である道塁さんが打席に入る。

 

「(打たせない…!)」

 

振りかぶって、右足を上げる…。

 

ビュンッ!!!!

 

ゴォォォー…!

 

ズバーンッ!!

 

“ストラーイク!!”

 

よしっ!まだまだいける…!

 

 

 

 

 

ズバーンッ!!

 

“ストライク!!バッターアウト!!”

 

続く2球目と3球目もストレートで三球三振に打ち取る。

 

7回表…

 

「この回で点をとって、一気に逆転しちゃいましょう!」

 

『おーっ!!』

 

ちょんちょん…

 

「…ん?」

 

肩を指で突かれ、振り向くと沢先輩がいた。

 

そして、耳元でとあることを囁かれる。

 

もう一度沢先輩と目が合った時は小悪魔っぽい笑みを浮かべていた。

 

 

そして俺は、この回最初のバッターである相楽先輩のところに歩いていく。

 

「さ……太鳳センパイ、ヒット打ったら今度シェイク奢りますよ…///」

 

相楽先輩の方を見ると…。

 

「え、えぇっ!?///今、名前で……////」カァァー

 

顔がトマトのように真っ赤になっていた…。

 

これ逆効果なんじゃ…!

 

「プフッ…!っw」

 

沢先輩の方を振り返ると、下を向いて顔が見えないが口元を押さえて肩をプルプルと揺らしているところを見ると、笑いを堪えているのだろう。

 

「よ、よぉーし!零翔くんのためにも絶対打つぞぉー!」ブンブン

 

そう言ってバットを振り回しながら打席へと向かっていく太鳳先輩。

 

俺のためって…まるで俺が奢るのが好きな人みたいに言わないでください…。

 

せめてシェイクのためであってくれ。

 

「いーなぁ〜私の時言ってくれたら頑張ったのにー」

 

千里が横でそんなことをぼやく。

 

「ちょっ…沢先輩!!」

 

原因である沢先輩を恨めしそうに睨むも…

 

「次のバッターだから行かなきゃ〜、私もよろしくねー零翔くーん?」

 

そう言って逃げるようにネクストバッターサークルへと向かう沢先輩。

 

熱くなった顔を冷やすように顔に水道の水をぱしゃっとかけて、タオルで拭いてから試合の行方を見守るためにグラウンドに視線を移した。

 




評価と感想とアンケートとここすきがモチベです。
全て貰えるとやる気あがるのでお願いします。
評価https://syosetu.org/?mode=rating_input&nid=369980&volume=1
感想https://syosetu.org/?mode=review&nid=369980&volume=1#review

《追記》
評価のバーが初めて赤色になっててすごく嬉しかったです!
これからも面白いと思って貰えるよう勤しんでいきます。

零翔くんと仲良くして欲しい人

  • 茂野大吾
  • 佐倉睦子
  • 相良太鳳
  • 沢弥生
  • 藤井千里
  • 椛島アニータ
  • 仁科明
  • 眉村渉
  • 眉村道塁
  • 茂野いずみ
  • 佐藤光
  • 郷田早苗
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