貞操逆転世界で、ASMRを売りまくる 作:天声ξ紳士
ねえエリス……エリスったら!
もう……やっと起きたの? ずっと待ってたんだからね。
ん? これのこと? うん、膝枕。エリスにしてたんだ。
おっとと、そんなに急に起き上がらないでよ……ふふっ。
ごめんごめん、エリスの寝顔が可愛かったからさ、つい。
いやぁ、でもさ、エリスって寝てる時ほんと無防備だから。
普段はあんなに重そうな鎧を着て、剣を振り回していて……。
でも、こうやってエリスが僕の脚の上で眠っている姿を見ると。
……そうだね、何だか。守ってあげなきゃって思うんだ。
ほら、エリス! そんなじっと見つめてないで、後ろを向いて?
全く……君はいつも髪をボサボサにして……僕が直してあげる。
いいっていいって、エリスはこのまま僕に寄りかかって?
そう……それでいい。うん、こうしてっと……これでヨシ!
うん、髪型は整ったよ。
あれ? どうして耳を赤くしているの?
何でもないって……そんな、熱とかはない? 大丈夫?
そっか、エリスは強いもんね。僕なんかよりずっと、ずうっと……。
実はさ、僕。エリスのこと……今までであってきた中で一番、信頼してるんだ。
だからさ? ね? こっちに顔を向けて……?
そして静かに、ゆっくりと目を瞑ってごらん?
そう、そしてゆっくり深呼吸して……息を吐いて……。
――――っ。
ふふっ、どう? ……驚いた?
エリス……顔を隠さないで、僕にその瞳を見せて……。
深呼吸……深呼吸……。
僕と君は、二人で一つなのだから……。
【体験版はここまでとなっております】
収録が終わり、マイクの赤いランプが消える。俺はヘッドホンを外し、パソコンのモニターに映る波形を一瞥してから、椅子の背もたれに体を預けた。
「ふうっ……」
思わず漏れたため息が、静まり返った部屋に小さく響く。窓の外からは、夜の虫の声が遠く聞こえてくるだけだ。時計を見れば、もう深夜を回っている。さっきまで甘ったるい声で「お姉さん」を翻弄していた自分が、なんだか遠い存在に思えてくるから不思議だ。
「いやぁ……結構、気合い入っちゃったな」
自分で呟いて、苦笑いする。今回の第二作は、前作の勢いをそのまま引き継ぎつつ、少し冒険してみた。台本を書いてる時は「膝枕シチュとか、鉄板すぎて逆にありきたりかな」とか一瞬迷ったけど、いざ録ってみると、意外とハマった。
エリスっていう架空のお姉さんを相手に、優しくからかう感じを意識して声を調整したのが功を奏したのか、録音を聞き返すたびに「これ、いけるぞ」と手応えを感じてた。
指先で机を軽く叩きながら、さっきのセリフを思い出す。
「エリス……顔を隠さないで、僕にその瞳を見せて……」
自分で言っておいて何だけど、ちょっと恥ずかしくなる。でも、この世界の女性たちが求める“甘さと焦らし”を考えると、これくらいの距離感がちょうどいいんだろう。前世の感覚と今の経験が混ざり合って、自然とそういうラインが見えてくるのが面白い。
「……さて、と」
椅子から立ち上がり、ストレッチがてら首を回す。肩が少し凝ってる。長時間マイクに向かってると、どうしても姿勢が固まるからなぁ。収録中は意識しないけど、終わった途端に疲れがどっと押し寄せてくる。まあ、それだけ集中してたって証拠だ。
モニターの画面には、さっきまで編集してた音声ファイルがそのまま残っている。体験版としてカットした部分まで含めて、全部で30分くらいになった。
今回は「癒しとドキドキの両立」をテーマにしてみたから、前作より尺を長くして、じっくり聴かせる構成にしたつもりだ。コメント欄で「もっと長いのが欲しい!」って声が多かったのもあって、そこに応えた形だ。
「これでまたランキング狙えるかな……いや、狙うしかないか」
前作のバズり方が尋常じゃなかったから、正直プレッシャーもある。『アイスティー』って名前が一気に広まったせいで、期待値が跳ね上がってるのが分かる。でも、その期待を裏切るわけにはいかない。この声がある限り、俺には勝算があるはずだ。
冷蔵庫からアイスティー——そう、俺の名前の元ネタ——を取り出して、グラスに注ぐ。サーッとした音が耳に心地いい。ひと口飲んで、ふと笑う。
「前世でも今でも、俺ってほんと単純だな」
そう言いながら、俺はもう一度パソコンに向き直った。編集の仕上げとアップロードが残ってる。ため息をついてる暇なんて、本当はないのかもしれない。この世界の「お姉さん」たちが、俺の声を待っているのだから――。
【アイスティー新作ASMR、女騎士と盗賊について】
1:木枯らしの名無し
アイスティーの新作来たぞおおおお! やっと出た!
2:木枯らしの名無し
体験版聴いた瞬間死んだわ。「エリスったら!」の甘い声で脳みそ溶けた。アイスティー何者⁉︎ 天才‼︎
3:木枯らしの名無し
膝枕シチュやばすぎる……「寝顔が可愛かったからさ、つい」って言われた瞬間、心臓が飛び出そうになった。お姉さん属性の私、昇天。
4:木枯らしの名無し
>>3 分かる! あの声で「守ってあげなきゃ」って……もう無理! 好き!
5:木枯らしの名無し
「君はいつも髪をボサボサにして……僕が直してあげる」のとこで叫んだ。優しく髪整えられる想像したら顔赤くなって死にそう。
6:木枯らしの名無し
あの優しいトーンで髪弄られるのやばいよね。私もエリスになりたい人生だったわ……。
7:木枯らしの名無し
前作より尺長いしじっくり焦らされてる感じ最高。「深呼吸して……」の囁きで息止まったわ。焦らし上手すぎて悔しい。
8:木枯らしの名無し
「ゆっくり目を瞑ってごらん?」で目瞑っちゃった自分に笑った。でもその後の「驚いた?」で心拍数爆上がり。アイスティー犯罪者だろ。
9:木枯らしの名無し
男盗賊って設定が神すぎる。優しげな男盗賊にあの声で翻弄されてるの想像したら悶えるしかない。
10:木枯らしの名無し
>>9 ほんとそれ!「エリスは強いもんね」って褒められつつ甘やかされるのたまらん。ギャップで殺しに来てるわ。
11:木枯らしの名無し
「僕と君は二人で一つなのだから……」で頭抱えた。こんなん言われたら一生ついてくしかないじゃん。男盗賊くん責任取って!
12:木枯らしの名無し
体験版だけでこれなら本編どうなるの……? 30分もあるって聞いて震えてる。絶対買うわ。
13:木枯らしの名無し
私も即ポチった! 前作超えるクオリティ確定だよ。作者毎回期待値上げてくるのやばい。
14:木枯らしの名無し
「顔を隠さないで、僕にその瞳を見せて」の言い方が頭から離れない。あの柔らかい声で懇願されたら隠せないよ……!
15:木枯らしの名無し
分かる。あの優しさと小悪魔感のバランスが完璧すぎる。お姉さん全員堕ちるわ。
16:木枯らしの名無し
アイスティーの声ってさ、低音の響きが心地いいのに高音で焦らしてくるから中毒性やばい。吐息の使い方も天才的。
17:木枯らしの名無し
吐息混じりの「ふふっ、どう?」で毎回心臓止まる。音質も良くて耳が幸せすぎる。
18:木枯らしの名無し
前作も神だったけど今回は「癒しとドキドキ両立」って感じでさらに進化してる。アイスティー成長早すぎない?
19:木枯らしの名無し
コメント欄で「もっと長いのが欲しい!」って書いたの覚えててくれたのかな……30分にしてくれてありがティー!
20:木枯らしの名無し
次はツンデレ幼馴染とか出してほしい。「お前なんか別に興味ないから!」とか言いつつデレるとか……妄想が止まらん。
21:木枯らしの名無し
それいい! お姉さん連合の需要ドンピシャだよ。
22:木枯らしの名無し
アイスティー、この世界のお姉さん全員救ってるよね。私含めてみんなハマりすぎ。ファンクラブ入りたい。ないの?
23:木枯らしの名無し
アイスティーの声聴いてると現実忘れるわ。エリスと一緒に深呼吸したい……次回作も待ってるからね!