貞操逆転世界で、ASMRを売りまくる 作:天声ξ紳士
俺はスマホを手に持ったまま、しばらく画面を見つめていた。
「シスターズエコー」からのコラボオファー。おねおねおねショタという、妙にインパクトのあるテーマ。初動3000本確実で、売上は山分け。頭の中でその言葉がぐるぐる回る中、俺はとりあえず返信を打つことにした。
【興味あります。詳しくお話ししたいので、どこかで会えませんか?】
送信ボタンを押した後、すぐに返事が来た。カフェで会う提案だ。場所は街の中心にある落ち着いた雰囲気の喫茶店で、時間は今日の午後3時。急な話だが、俺のスケジュールは空いている。
ということで、俺はシスターズエコーの人たちと急遽会うことになったのだ。
約束の時間に近づき、俺は指定された喫茶店に足を踏み入れた。
店内は木の温もりが感じられる内装で、静かに流れるジャズが心地よい。窓際のテーブルを選んで座り、アイスティーを注文する。そこに砂糖を少量入れて、更に甘くする。
時計が3時を指すと同時に、店の扉が開いた。3人の女性が入ってくるのが見えた。ピンク色の帽子をかぶった女性が目印だと事前に聞いていたので、彼女たちが「シスターズエコー」のメンバーだろう。店内を見渡してキョロキョロしているリーダーらしき女性に、俺が軽く手を振ると、こちらに向かってきた。
「ねえ、もしかして……僕くんがアイスティーさん。なのかな?」
ピンクの帽子をかぶった女性が、驚いたような声で俺に尋ねてきた。続いて、他の二人が彼女の後ろから顔を覗かせ、俺をじっと見つめてくる。
俺は少し緊張しながらも、笑顔で答えた。
「はい、僕がアイスティーです。よろしくお願いします」
彼女たちは一瞬顔を見合わせると、リーダーらしき女性が目を丸くして口を開いた。
「え、待って。こんな可愛い子があの声の主なの? 信じられない……ねえ、二人とも見てよ、この子!」
彼女の視線が俺を上から下まで舐めるように動いて、ちょっとドキッとしてしまう。
「本当にね。お姉ちゃんの言う通り、びっくりだよ」
「うん、まさかこんな少年に会うなんて思わなかったよね」
俺は彼女たちの言葉を聞きながら、ふと違和感を感じた。……お姉ちゃん? 二人がリーダーらしき女性を自然に「お姉ちゃん」と呼んでいるのが気になった。
「えっと……もしかして、皆さん、姉妹なんですか?」
つい思わず口に出してしまった。
すると、ピンクの帽子をかぶった女性が、くすっと笑って俺の方に顔を寄せてくる。
「あ、やっと気づいた? そう、私が長女のミキでさ」と彼女は自らの豊満な双方を軽く叩いて自己紹介した。「で、私が次女のユウナね」と、背の高い女性が穏やかに微笑みながら手を振る。「私は三女のリナ! よろしくね、アイスティーくん!」と、スレンダーな最後の一人が元気よく手を挙げた。
「え、ほんとですか? 全然知らなかったなあ……」
俺が驚きの声を上げると、長女のミキが帽子のつばを軽く持ち上げてウィンクしてきた。
「ふふっ、シスターズエコーって名前、まんま私たち姉妹のことだからね。びっくりしたでしょ?」
「確かにびっくりしました。てっきり、グループ名だけかと思ってたんで」
俺がそう言うと、次女のユウナが優しげに目を細めて俺の頭を軽く撫でてきた。
三女のリナも楽しそうに笑いながら付け加える。
「可愛い反応だね。アイスティーくん、意外と素直でいいよ。私たちお姉ちゃんたち、気に入っちゃったかも」
「うん、この子ならいっぱい可愛がってあげたいね!」
そして3人が笑みを浮かべて席に着き、話を切り替えた。
「驚かせちゃったみたいだけど、ここから本題ね。私たちシスターズエコーは、姉妹で女性向け音声作品を作ってるグループなの。今回はアイスティーくんの声を使って、ちょっと特別なコラボをしたいと思ってるんだ!」
「それが、その……おねおねおねショタ……ですか」
「ご名答! おねおねおねショタなのだ!」
カフェ店内ということもあり、後半は若干声を控えめにしたのだが、元気はつらつスレンダーお姉さんには、その効果は薄かったようだ――。
俺たち4人はカフェのテーブルに座った。リーダーがメニューを手に持って軽く振った。
「せっかくだから何か飲もうか。アイスティーくんはもう飲んでるみたいだけど、私たちも頼もうよ」
「私はコーヒー、ブラックで」
次女が落ち着いた声で言った。
三女が元気よく手を挙げた。
「じゃあ私はカフェラテ!」
リーダーは少し考えてから笑顔で言った。
「私は紅茶にするね」
彼女たちは店員を呼んで注文を済ませた。その間、世間話もそこそこに。飲み物が運ばれてくると、リーダーが紅茶を一口飲んで話を始めた。
「さて、本題のコラボの話ね。私たちがやりたいのは、『おねおねおねショタ』ってテーマ。年上のお姉さんたちが可愛い年下の男の子を囲んで、ちょっと甘やかしたりからかったりするシチュエーションだよ〜」
「具体的にはどんな感じになるんですか?」
その質問に対し、次女が淡々と珈琲を口につけながら答える。
「例えば、放課後の教室。3人の先輩が後輩くんを取り囲んで、勉強を教えるふりして耳元で囁いたり、ちょっとしたイタズラを仕掛けたりする設定」
三女が嬉々としてそれに同意する。
「そうなのだ! 今回は君が責められ役になる予定なのだ!」
「な、なるほど」
カフェのテーブルで話が盛り上がる中、リーダーのミキが紅茶を一口飲んでから、メモを取り出しつつ話をまとめるように切り出した。
「さて、カフェでの打ち合わせもいい感じに進んだね。コラボのテーマはおねおねおねショタで、具体的な内容やセリフの方向性も決まってきたと思う。私たちがやりたいのは、アイスティーくんの声で甘やかされたりからかわれたりする可愛い年下キャラを演じてもらうこと。例えば、こんな感じのセリフはどうかな?」
『えっと、先輩たち、僕のことそんなに近くで見ないでください……恥ずかしいです』
『あ、あの、そんなに優しくされると…僕、どうしていいかわからなくて……』
『お、お姉ちゃん。って呼べば、いいんですか……?』
「ねえねえ、このセリフ。今目の前で言ってみてもらえる?」
「あー、わかりました。『先輩たち……僕――恥ずかしいです』……どうでしょう?」
「「「…………い、イイ」」」
3人からのお褒めの言葉(?)を受け取り、オッケーをもらった俺は安堵する。
良かった……これなら、シスターズエコーの先輩方と上手くやれそうだ。
「じゃあ後日、一緒に収録よろしくね!」
「ではまた」
「どんな収録になるか楽しみなのだ!」
そして後は各々で、設定やら音声データのやり取りについてなど、諸々を話あった後に、4人はカフェで解散するのであった――。