セカイのカフェへようこそ   作:ラピスラズリ

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マイセカイが面白かったので初投稿です。
※マイセカイの初期家の位置にカフェがあるイメージで書いてます。


『ワンダーランズ×ショウタイム』の場合。

「さて、こんなものかな」

 オーブンの中に今回の試作ケーキを入れて一息つく。焼き上がるまでにゆっくりしようと、紅茶を淹れる。コーヒーでも良かったのだが、今は紅茶の気分だ。

 茶葉をポットに入れて蒸らしている間に鞄から読みかけの本を取り出して用意しておく。紅茶を淹れ、店全体の雰囲気と合うウッド調のカウンターで紅茶と本を楽しむ。実に優雅な午後の昼下がりだ。生憎外の天気は雨のようだが。

 しばらく読書に勤しんでいると外からドタドタと音がしていることに気がついた。

 ……はて、一体何事だろうかと本に栞を挟んで入り口へと向かう。ドアに手をかけようとしたその瞬間。

 

「すみませーん!!!どなたかいらっしゃいませんかー!!!」

 

 恐らくドア越しでなければ鼓膜が破れるのではないかと思うほどの声量が突っ込んできた。

 おっかなびっくりしながら、はーいとドアを開けると、そこにはびしょ濡れになっている集団がいた。

 

「もう司、うるさい」

「まぁまぁ寧々。今は雨だし、僕たちの声ではかき消されるかもしれなかったから仕方がないよ」

「ふふん、スターである俺の声が雨などに負けるわけがないだろう」

「流石だね司くん!……って、あ!」

 

 目の前ではしゃいでいた人たちのうち、ピンクの髪の女の子がこちらに気づいたようだ。少し賑やかになりそうだなと考えながら、来客たちに笑みを浮かべる。

 

「いらっしゃいませ。『ombrage』へようこそ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、見知らぬ扉を潜ってここに来た、と」

「ああ、概ねその通りだ」

 

 あの後、ピンク髪の女の子がくしゃみをしていたのでひとまず中に入ってもらい、予備のタオルや温かい飲み物をお出ししてテーブルに座ってもらい話を聞いていた。タイミングよく紅茶が出来立てだったのが幸いである。

 

「なるほど……こちらへ来たのはともかく、雨が降っていたのは少しタイミングが悪かったですね……」

「おや、その言い方だと普段は雨は降っていないのかい?」

 

 紫髪の男性が興味を持ったようで、興味深そうにこちらを見てくる。ふむ、普段というか何というべきか。

 

「いえ、どちらかというと今日が雨だった、と言うべきでしょうか」

「……なるほど、日によって天気が変わるようだね」

 

 こちらの返答に対して、彼の中で納得したのか答えを先に言われてしまった。かなり頭の回転が早いご様子。

 隣の金髪の彼は、天気が変わるのか!と大袈裟に驚いており、見ていてとても楽しい気持ちになる。

 ちなみに他の女性の2人は少し離れたところでお互いの髪を拭いたりしている。女性は髪が長いと時間が掛かるだろうし、何より初対面の人間の前で透けた服はダメでしょう、ということで奥まった席の方を利用していただき、少し大きめのタオルを多めに渡している。

 閑話休題、それにしてもどこかこのお二方は見覚えがあるような……

 お二人を見ていると、金髪の方が何かに気づいたようにそういえば、と話し出す。

 

「自己紹介をしていなかったな!天翔るペガサスと書いて、天馬!世界を司ると書いて司!その名もーーー天馬 司!」

「僕は神代 類。司くんたちと一緒にショーをやっているよ」

「申し遅れました、ここの店長をしている篠宮 乃蒼と申します」

 

 確かに自己紹介をしていなかったと、こちらも名乗り返す。……そして本題なのだが。

 

「差し支えなければお伺いしたいのですが、お二人は神山高校の生徒でお間違い無いでしょうか?」

「む、その通りだが……」

「おや、もしかして君も神高なのかい?」

「ええ、神高の1年です。先輩方のお噂はかねがね」

 

 気になっていたことは間違っていないようで、今や神高の名物と言っても過言ではない変人ワンツーのお二人だった。

 学年違いのため確信が持てなかったが、名前を聞いて確信した。

どうやら俺たちは1年生の間でも有名らしいぞ!と嬉しそうな天馬先輩と、そうだねぇと流す神代先輩。

 前者はともかく、後者は何の噂か分かっているらしい。

 こちらも余計なことは言わないようにしようと思っていると、奥の席から歩いてくる音が聞こえた。

 

「タオル、ありがとうございます」

「ありがとうございます!お日様の匂いがするポカポカタオルでした!」

「いえ、構いませんよ、タオルはこちらで預かります」

 

 戻ってきたお二方からタオルを預かり、淹れたての紅茶をお出しする。ちなみに現在はカウンター席で談笑している。

 お二人が紅茶を飲んで一息入れたタイミングで自己紹介を行う。

 

「天馬先輩と神代先輩には先に自己紹介しましたが、改めまして。ここの店長をしています、篠宮 乃蒼と申します。以後お見知り置きを」

「鳳 えむです!よろしくね篠宮くん!」

「えっと、草薙 寧々、です。よろしく……って司たちのことを先輩呼びするってことは」

「ええ、ご明察の通り、神山高校の1年です」

「そうなんだ……私も神高だよ、でも会ったことないから別クラスだよね」

「えー!私以外みんな一緒の高校なのー!?」

「ちなみにえむくんは宮女だよ」

「おや、かの有名な学園の。……つかぬことをお伺いしますが、鳳、という名字ということは」

「うむ、フェニックスグループのお嬢様だ」

「なんと」

 

 流石に少し驚いた。フェニックスグループと言えば超がつくほどの大手企業である。先ほどショーをやっていると神代先輩がおっしゃっていたし、近頃話題になっているフェニックスワンダーランドのショーメンバーの集まりなのだろう。

 さて、ここで気づいたことがある。そんなメンバーがこの店に来ている、ということは。

 

「篠宮くん。ここは、君のセカイなのかい?」

「その質問をされるということは皆さんは他のセカイからいらっしゃった、という認識で間違いないようですね」

 

 神代先輩からの質問で確信に変わった。とうやらこのセカイは、他のセカイと繋がってしまったようだ。

 他の方々も何となく気づいていたようで、やっぱりという顔をしている。

少しの間、何を話そうかと場を沈黙が支配していると、背後から軽快な電子音と、香ばしい香りがしてきた。

 今更ながらにケーキを焼いていたことを思い出す。先に断りを入れ、ケーキの様子を確認するためキッチンへ。オーブンの中からケーキを取り出すと、出来は上々。少し考えて、このまま仕上げをする。出来上がったケーキを四つ切り分け、それぞれ盛り付けてカウンターへと戻る。

 

「急に席を外してしまい申し訳ありません。お詫びと言ってはなんですが、先ほどケーキが出来上がりましたので、宜しければ」

「おや、そこまで気を遣わずとも」

「え、いいの!?やったー!」

「こらえむ、篠宮くんの好意に甘えないの」

「もー!寧々ちゃんだって食べたいでしょ!」

「ぐっ……」

 

 何やらコントのような会話を繰り広げているのを微笑ましい気持ちで見つつ、紅茶のお代わりは如何ですかと問いかける。流石にこれ以上お出ししていると冷めてしまうので淹れ直したのだ。

 俺の提案に全員がカップを差し出し、新しく紅茶を淹れ直す。

 

「む、これは……!」

「おいしー!お口の中がわんだほーい!って感じ!」

「うん、上品な甘さとフルーツの香りが見事にマッチしているね」

「紅茶もケーキに合うような味だから、無限に食べれちゃいそう」

「ふふ、ご満足いただけたようで幸いです」

 

 どうやら紅茶もケーキもお気に召したようで、全員が美味しいと言ってくれている。作った側としてはこれ以上に嬉しいことはない。

 

「もしかして篠宮くんは日頃からお菓子作りをしているのかい?随分手慣れているようたけど……」

「確かに、これはお店で出せるレベルだな」

 

 舌鼓を打っている女性陣を横目に、質問が飛んでくる。……ふむ、セカイに来れる人は限られるだろうし、言っても構わないか。

 

「実は、飲食関係のバイトをしておりまして。そちらのケーキは今度の新作ケーキの試作品なのです」

「なるほど。それならこれほどまでに美味しいケーキが作れるのも納得だな」

「でも、そんな貴重なのを食べちゃっても良かったの?」

 

 草薙さんから心配そうな視線が向けられるが、問題ないことを伝える。

 

「寧ろこうやって味の感想を直接聞けるのはとても貴重なことですので。おかわりもございますが」

「いただきまーす!」

 

 その後、ケーキのおかわりを用意しながら色々なことを話した。彼らのセカイは遊園地がモチーフになっていること。ワンダーランズ×ショウタイムという名前でショーをしていること。それは、ケーキが無くなり外の天気が変わるまで続いた。

 

「っと、随分話し込んでしまったな」

「外も晴れているようだし、そろそろお暇しようか」

「ケーキ、ご馳走様でした」

「ねぇねぇ、また来ても良い?」

「勿論です、いつでもいらしてください」

 

 天馬先輩たちを見送り、店に戻って後片付けを行う。試作ケーキの感想も聞けたし、私もそろそろ現実に戻ろうかと考えていると、カランカランとドアが開く音がした。

 

「こんにちは。今日は色々あったみたいだね」

「こんにちは。色々ありましたよ。でも、あの扉のことは知っていたでしょう?」

 

 バレたか、と少しイタズラっぽい顔をしている最後の来客にコーヒーを用意する。彼女はどちらかというとコーヒーが好きだと言っていたのを覚えているから。

 

「……うん、美味しい。それで、ケーキは?」

「残念ながら本日は完売です。次からは取っておきますよ」

「そんなー」

 

 落胆した様子で目の前でコーヒーを啜っているのは、バーチャルシンガーであるはずの初音ミクだ。ただし、格好が丈の長い給仕服……所謂クラシックメイドの衣装であることと、このセカイの案内人と自称している部分が世間の知識と異なるが。

 

「それで、あの扉は?」

「なんとなく気付いてるでしょ?君のセカイは少し特別。だから他のセカイと繋がれる。ちなみに扉は君がいる時しか出ないよ」

「……なるほど」

 

 このセカイに来た時に説明されたが、私の想いからできたセカイは、少し特殊らしい。だから、他の世界と繋がれる。私の想いがそうである故に。

 

「ちなみに私が確認してるだけでも、他に4つ。繋がれるセカイがある」

「一斉に繋がることは?」

「ないと思うよ。ただ、いつ繋がるかは分からない。日替わりかもね?」

「……あの扉からこちらまで屋根を作るべきかな?」

 

 こちらへ来て色々作った時のことを思い出す。そこそこ……いやかなり大変だったが、今となっては良い経験だ。流石にもう一度家屋を作れと言われたら素直に頷けないが。

 話しているうちにミクはコーヒーを飲み終わったようで、それじゃまた明日〜と去っていった。

 残っていた空のカップを片付けて、店の表札を[close]に変えておく。

 ミクのあの口ぶりだと、今後お客さんは増えるだろう。

 楽しみだ、軽くなった足取りでそのままこのセカイを後にした。

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