どん、と轟音が闇と海を揺るがせた。
高く吹き上がり、そして雨のように落ちてくる水。
しどどに濡れる阿美。
しかし彼女は何の損傷も負っていなかった。
「え……嘘、でしょ……!?」
代わりに、彼女の目の前で炎を纏うものがある。
見慣れた後ろ姿。
絶えず追いかけ続け、ついには阿美が「力」の一端に
触れることさえ可能としてくれた、
花のように美しく凛とした背中。
「――由良お姉ちゃん!」
「阿美……怪我は、ない……?」
阿美を気遣う言葉を口にしながら、
由良は力なく倒れ始める。
阿美はすかさず彼女の身体を抱きとめた。
「嘘……どうして!
私を、かばったの? 由良お姉ちゃん、どうして!?」
「あなたが、危なかったから……。
決まってる、じゃない……あなたは大切な、私の仲間で、
友達で……妹、なんだから……」
「妹……私、まだ、由良お姉ちゃんのこと、
お姉ちゃんって呼んでいいの?」
「……いいよ。こんな私で、よければ。
……ごめんね、阿美。
さっきは酷いこと、言って……」
由良の口にした偽りの拒絶に、阿美は心を閉ざしていた。
それを悟った由良は、
阿美に危険が迫った時に身を呈して阿美をかばった。
彼女を傷つけたことへの償いに。
身を捧げるように。
「嬉しかったよ。みんなが、ここまで来て、くれて。
危なかっただろうに。
私は、みんなはここに、来るべきじゃないと、思った。
それに、みんなに無い力を持つ、私は、
ここで戦うべきだって、そう、思ってた。
けど、違ってたって、私は、間違ってたって、気付いたよ。
私は、みんなと、阿美と……提督さんと、一緒にいたい。
だから……勝って。阿美。
そして、みんなで、一緒に帰ろう……!」
「由良お姉ちゃん……ごめんなさい!
私も、間違ってた。
わかってたよ! 由良お姉ちゃんが、あんな酷いこと、
本気で言うはずがないって。
でも、信じられなかった。
由良お姉ちゃんのこと、信じてて当たり前なのに。
ごめんなさい……ごめんなさい、由良お姉ちゃん!」
「ううん。いいの。
お互い……謝るのは、もうやめにしよう?
それよりも私は、阿美と、みんなと、一緒に話したい。
だから……ね。ね?」
「うん。――行くよ。
勝って、一緒に帰ろう!」
由良は阿美から離れ、なんとか自立する。
魚雷が直撃したことで由良は大破級の損傷を負っていた。
まだ沈みはしないが、浮かんでいられるのが精一杯。
だがそれでも気丈に立ち、
心配そうにする阿美を促し、彼女を見送った。
「うるわしき姉妹愛、ってところかな」
ようやく肉眼で姿が見える距離まで近づいた。
北羅は由井に寄り添われながら、
闇の中で傲慢に阿美を待ち構えていた。
「けど、私と北羅さんとの絆には及ばないんだから――!」
由井が高らかにそう叫ぶと同時に、
40発もの魚雷が一斉に発射された。
北羅と由井、
「北上」と「大井」、2隻の重雷装巡洋艦による全力攻撃。
まさしく弾幕となった魚雷は、
断頭台の刃のように阿美に死を突きつける。
だが――
「やあぁぁぁぁぁぁ――!」
阿美は叫び、駆け出し、死刃をすり抜ける。
40発の魚雷の位置をすべて感知し、
髪の毛ほどの隙間をぬって前進する。
「な――!?」
「嘘でしょ!? 北羅さんと私の魚雷が――!!」
「できるよ! だって、これは――っ」
――由良お姉ちゃんと一緒にいるための力だから。
さっきは肯定できなかった、その理由。
それを肯定した時、阿美の力は本当の覚醒を迎える。
「ガラ空きなんですけど!」
「――!」
魚雷を撃ち尽くし、
無防備になった北羅を阿美の砲撃は逃さなかった。
「北羅さん――! おのれ、よくも!」
「いたた……あー、もう帰ろうかな」