「……そう。それじゃあ本当に今日来たばかりなのね?」
図書館の外にあるベンチに、蓮とサラは腰掛けて話していた。
「はい。…どこに行くべきか分からなくて、一先ずここに。」
「なるほど、ね。それにしても、あんなパラクールじみた見回り方する人は初めて見たわよ?確かに本の森だけど。」
「ご、ごめんなさい…」
サラは呆れたようにそう言った。蓮は申し訳なさそうに項垂れる。彼の淡い青色の髪が垂れて、気まずそうな顔を隠した。見たところでは、とても変なマナー違反を起こすような者には見えない。
「どうしてエリシアへ?」
「え、えっと…祖父からの勧めです。ここでは色んな経験ができるだろうから、って。」
「お爺さま?」
「はい、故郷の。祖父であり、先生でもあるんです。」
「ふぅん……」
「…?」
気になる事があるような顔をするサラ。蓮はその様子を不思議そうに眺めていた。
「何の先生なの?魔法とか?」
「剣の先生です。正しくは剣だけじゃないですけど…主に。僕の数倍身軽な人なんですよ。」
「本当に言ってる???」
先の身軽さを見るに、彼以上に身のこなしが軽い人間が居るとは到底思えなかった、とサラは驚いた。
「……えっと、お爺さまからの勧めでここに来たのよね。」
一先ず話題をもとに戻す。蓮は返事の代わりにそっと頷いた。
「確かにエリシアは大陸の中でも特に発展した場所だし、経験を積みに来るというのは分からなくもない……けど、それは魔法使いや学者にとっての話。剣術の鍛錬を積みたいのなら、もっといい場所が他にもあるはずだけど。」
「…確かにそうです。でも、ここに来ないと分からないこともあると思って。」
蓮の言葉はだんだん歯切れが悪くなってきた。その様子を見て、サラは少し不思議そうな顔をする。
「……何か他に理由があるの?」
「…無いといえば嘘になります。でも、あなたには関係のないことですから。」
急に突き放されて、サラは面を食らった気分になる。
「……あはは、すみません。折角聞いてくださったのに。」
「知られたくないことくらい、誰にもあるから。こちらこそごめんなさい。」
ふぅっ、と息をついて、サラは気を持ち直す。彼女の銀色の髪が、風にふわりと揺れた。
「そういえば僕、魔法ではないですけど、陰陽術を教わっていたんです。」
蓮が気分を変えようと話題を投下してくる。サラもこれには興味を示したらしく、耳を傾けた。
「陰陽術……大令の方に存在する術式だったかしら。それもお爺さまに?」
「いえ、それには別の先生がいて……あ、その先生のお屋敷がからくり屋敷で、パルクールみたいにしないと危険なくらいだったんですよ。」
あはは、と笑いながら蓮が答える。そんな屋敷が存在するのか、という風にサラは驚いた顔をしている。
「……というか、さっきの図書館での動きは、その時の名残?」
「あ、そうかもしれません。」
腑に落ちたような、何だか納得いかないような気分でサラは苦笑いをしていた。
……蓮のキャラ、私の描写がだいぶ下手なのもあってヘイト買わないといいんだが。設定上はちょっと変わった子だけど凄くいい子なんですよ。本当に…