研究所の中を幼いの少女が歩いていた。青い瞳に白い肌、髪は緩やかなウェーブの金髪。白のワンピースの上に黒のベストを着ている。歳は10歳から12歳程度だろうか。
無機質なこの空間には、似つかわしくない姿をしている。
化石や薬品が辺りに散らばっているが、少女はそれにいたずらを出すわけでもなく、ただぼんやりとあたりを歩いている。
そして、そのうちに研究者風の青年の後ろ姿を見つけた。
「……レオン。」
「…おっと。」
彼女が名を呼ぶと、青年は驚くでもなくそっと振り向いた。
「来てたのか、エレナ。珍しいな?」
「ん……。」
少女の名はエレナというようだ。青年は微笑むと、少女の頭をふわりと撫でた。
レオンと呼ばれた男は少女と同じ金髪で、長い後ろ髪を結って垂らしている。目は赤色だった。歳が離れているなりに顔もよく似ていて、彼らが兄妹であることは他人にもすぐ分かる。
「……サイラスが呼んでた。来てほしいって。」
「あぁ、それを伝えに来たのか。」
レオンは少し考えるように顎に手を置き、進捗を確かめるように周りを見渡す。
「…折角来てもらって悪いんだが、もう少し時間がかかる。なにか用があるなら待ってもらえないか?」
彼がそう言うと、エレナはむっとしたような顔をする。
「いいけど……怒られてもしらない。」
「勿論、エレナのせいにはしないさ。」
ははっ、とレオンは笑って答えた。
「本当にもう少しだからさ。まあ、一時間しないくらいだ。そう伝えておいて貰えると助かる。」
「……分かった。」
「ああ、よろしく頼む。」
そういいながら、念を押すようにエレナの頭にぽんぽんと触れた。エレナは親猫に毛づくろいされる子猫のように目をつむってそれを受けていた。
「…じゃあ、戻るね。」
「悪いね、エレナ。」
そういいながら、少女はてとてとと出口に歩いていった。どこか不満そうな様子は変わらずだ。
研究室の扉近くについて、エレナはくるりと振り返る。
「……もしサイラスがお菓子作ってたら、レオンの分も先に食べるから。」
少し悪い顔をしながらつぶやくエレナ。レオンは困ったように笑う。
「おや、本気かい?」
「早いものがち。嫌なら、早く終わらせてね。」
そう言い残すと、彼女は金色の髪をふわふわさせながら扉に向かい、かちゃりと開いた。
「…まったく。こりゃ早くしないとだ。」
エレナに聞こえる声で、レオンは笑い混じりに言う。
「…頼むね、レオン。」
少女の小さな手が、研究室の扉をぱたんと閉めた。
エレナとレオンという兄妹のお話でした。研究室を歩く少女って何だかいいと思います。
名前だけ出ていたサイラスも登場予定。
蓮とサラは今回出てきませんでしたが、彼らは全員同じ世界に住んでいます。そのうち接点が生まれるかも。