シンオウの昔日-翡翠英雄奇譚-   作:ヒュペルボレイオス

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キングvsチャンピオン

 

 

 

 空にぽっかりとあいた穴のような白い月が大海原を見そなはし、漆黒の水面に仄かな紺が溶け出していた。

 

 多くの命を育み、同時に多くの命が散る海上には、無数のフワンテとフワライドが潮風に揺蕩う。毒々しいハリーセンの視界を横切り、縄張りの侵入者を威勢良く追い掛ける彼らを圧倒的な速度で撒く。

 

 小さな抜け道を潜り抜ける。

 溶け落ちた太陽の如く燃える溶岩に彩られた火吹き島が目前に迫る。

 

 

「もう少しです! お願いしますイダイトウ様!」

 

 

 赤い雲文の尾を力強く振り抜いて、大きく髭を靡かせたライドポケモン──イダイトウ様は雄々しい叫びと共に水面を跳ねた。

 更に空中でもう一弾跳ね上がった彼の意を解したおれは、その背から飛び降りて火吹き島の岸辺に着地する。

 水飛沫をあげて着水したイダイトウ様は疲労の色をまるで浮かべないままススキさんを下ろすと身を翻し、夜の海へと消えていった。

 

 

「す、凄い……身のこなし……でした……」

 

「はは……アヤシシ様でもたまにやるんで……」

 

 

 煮え滾る液状の溶岩が光源となり、火吹き島はまるで夜明け前の様な明るさがある。

 足元から伝わる地熱はシンオウの寒さを物ともせず、おれがガブリアスなら故郷の南国を思い出していそうだった。

 

 なんでこんなド深夜に海を渡る必要があったのかと言うと、こんなド深夜に問題を起こした野盗の皆さんがいたからだ。

 

 ススキさんに事情を話し、イダイトウ様に供える団子を作るべくサマヨールを捕獲して、ゴーストタイプにビビりまくる彼と調理を終えたのが、夜になってまだ間も無い頃。

 

 今日はもう遅いのでイダイトウ様を呼び出すのは明日にしましょう、との提案に従って砂浜ベースに戻り、調査隊の皆と夜食の鍋を囲っていたのが先程のこと。

 

 

 ──ガラナさんのガーディが野盗に攫われたと駆込み訴えされたのが、ついさっき。

 

 

 そこからはもうハイスピードでイダイトウ様との初お目見えを終えて、深夜の海原なんて恐怖しかない漆黒の世界に飛び込んだ。

 せっかくいただいたしずくのプレートもまだ裏の文字を読めていない。このおれが神話を後回しにするなんてとんでもない一大事だ。

 でもこの一大事を後回しにするようではアルセウスに土下座するなんて夢のまた夢、どの面下げて案件以外の何物でもない。

 

 あらゆるポケモンを撒いて辿り着いた火吹き島の地を道なりに走る。

 ブーバーを振り切った先、キング場の設備の向こう側に──

 

 

「ほら、進化しなさいよ!」

 

 

 見覚えのある背中が三つあって、反射的にバクフーンのボールをぶん投げた。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 夜の静寂を切り刻むように、漣の音が耳に響く。

 乾いた倒木に腰を下ろし、ガーディを抱いて背中を丸める。震えているのは腕の中のこの子なのか、それとも自分なのか。

 

 不意に、遠くで吠えたトドゼルガの声に肩が跳ねた。

 大丈夫、大丈夫。

 そうガーディに言い聞かせる。そう自分に言い聞かせる。

 

 キングの子と判断され攫われたのは、勇ましく果敢な方のガーディだった。あたくしを、あたくしのガーディをずっと守っていてくれたあの子は今、遠くの火吹き島に連れ去られてしまっている。

 

 だから、ならば、故に、今。

 この子を守れるのはあたくしだけ。

 あたくしを守るものは何も無い。

 

 アゲハントを、ガーメイルを、スコルピを追い払ってくれるガーディはいない。

 タマザラシから、ブイゼルから、テッポウオからあたくしがこの子を守らなければいけない。

 

 沢山の後ろ指から守らなければならない。

 沢山の後ろ指を差されても胸を張らなければならない。

 

 

 ──どうやって?

 

 

 心の臓が凍てつき息が凍る。

 ススキさま、とここにいないあの人への縋りが泡となって消えた。

 

 大丈夫。

 ──何が?

 

 あたくしがこの子を守る。

 ──どうやって?

 

 誰に何を言われようと寄り添うと決めた。

 ──そう気にするのは後ろめたいからではなくて?

 

 カチカチと己の歯がぶつかり合う。

 終わりの無い闇に独り取り残された気分だ。

 シンジュ団の古い刑罰に「永久に明けない闇に狂わせる」というものがあるが、もしかしたら今自分はその刑罰を受けている最中で、今までの日々は狂気の中で見たぬるく柔らかな夢だったのかもしれない。

 

 

「……シンオウさま……どうか、どうかあの子をお救いください……」

 

 

 遙か上空の裂け目に祈る。

 その向こうに広がるシンオウさまの領域に祈る。

 神鳴りの意も汲み取れない身で勝手なことをと自責する。

 それでも今の自分には、あの勇ましいガーディを失った自分にはもう、他に縋るものなどありはしなかったのだ。

 

 

「っ、ガーディ?」

 

 

 腕に収まっていたガーディが細く遠吠えた。

 もう一度、もう一度と繰り返し、次第に声は海原の彼方にまで届くような、ハリのある力強いものに変わっていく。

 やがてあたくしの腕からも抜け出して、彼は砂浜の傍まで駆け寄った。

 

 丁度その時だ。

 黒い水面を掻き分けて、月夜の帳をゆらりと裂いて、イダイトウが戻ってきたのは。

 

 まるで同胞を迎えに来た使者の様に、闇の中に浮かぶ真紅の眼がガーディを射抜く。

 ──次の瞬間、ガーディは浜を蹴ってイダイトウの背に飛び乗った。

 

 

「ガーディ!?」

 

 

 あんなに水辺を恐怖していた子のあり得ない行動にあたくしは悲鳴をあげる。

 イダイトウの背に飛び乗り、哀れにも震える彼が見ていられなくて「戻りなさい!」と声を掛けた。

 

 それなのに、掛けたのに、ガーディはそこから動こうとしない。

 それどころか顔を上げて、彼方の火吹き島を見据えて吠えた。

 

 

「! 待ってガーディ! まって、待ってイダイトウ!」

 

 

 身を翻してイダイトウが浜を離れていく。慌てて立ち上がり駆け寄るも、足先に触れた冷たい水の感覚に喉が引き攣った。

 

 対してガーディはイダイトウの身が沈み込む度に近づく海面にも臆さず、ただただ彼方を見つめるばかりで、あたくしの声に振り返りもしない。

 

 分かっている。

 イダイトウの速度はこんなものではない。

 猶予を与えられているのだ。

 引き返すまでの猶予が、ガーディに。

 行ってしまうまでの猶予が、あたくしに。

 

 

「まって──」

 

 

 待ってほしい。

 まだ無理なのです。

 ガーディは海が恐ろしく、あたくしは水も水ポケモンも恐ろしい。

 あたくしはあの日から一度だって泳げていない。シンジュ団の誰より海に親しんだこの身が水そのものを拒絶している。

 ガーディとて同じこと。

 天真爛漫に育まれた彼は久しく笑顔を見せていない。傷ついた心は治らない。閉じた心は戻らない。

 

 だから。まだ。

 だから。もう。

 お願い。これ以上。

 あたくし(ガーディ)を、置いて(連れて)いかないで──!!

 

 

「っ……行きます、行きますからせめて、あたくしも乗せてくださいませ!」

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 影に潜んだゲンガーに無数の鬼火が喰らいつく。

 堪らず影から逃げ出したその瞬間を狙って待機させていた鬼火の殿(しんがり)を追い打てば、時間差の攻撃にゲンガーは次手を繰り出せずそのまま倒れ込んだ。

 

 

「ああっもう! 早いんだよオマエ!」

 

 

 ついさっき倒されたドクロッグが復帰する。

 時間が足りなかったのか快調とまではいかないようで、疲労の滲む大ぶりの“どくづき”は簡単にバクフーンに避けられた。

 

 

「“じんつうりき”」

 

 

 これ以上の外傷は本当に治療が追いつかないと見て、ならば内側へのダメージはどうかと思いつく。

 バクフーンの眼が艶やかに輝くと空間は波紋の如く撓み、二重の効果抜群にドクロッグは一撃で意識を失った。

 

 

「っ……まだ負けてない、まだ負けてない! キズぐすりがある内は、ずっとずっと戦えるんだ!」

 

 

 ゲンガーを倒すのは二回目で、ドクロッグを倒すのはもう三回目。

 その間バクフーンは一度も倒れておらず、控えのドレディアとラッキーに交代したことも無い。

 ヒメリのみの用意もある。薬がある間ずっと戦える戦法はこっちにだって有用だ。

 申し訳ないけど、野盗三姉妹がここから勝つルートは与えてあげられない。

 

 

「広いヒスイで生きていくには! 強いポケモンがっ、キングくらい強いポケモンが必要なんだよ!!」

 

 

 顔を歪めたオタケが絶叫と共にユキノオーを繰り出した。

 体格に恵まれたユキノオーの素早さはバクフーンに大きく劣る。“つららおとし”が発動する前に“かえんほうしゃ”を浴びせれば、ドクロッグと同じく二重の相性に為す術もない。

 

 

「もうウンザリなんだよアタシたちは……コンゴウ団もシンジュ団もギンガ団も!! 古臭いしきたりと思想に縛られて、いるかも分からない神さまなんか崇めて! そいつらの顔色窺って! 日々規則通りに生きていくなんてもう沢山だ!!」

 

 

 唯一弱点を突かれないサイドンの回復が終わり、ようやくバクフーンの前に立ちはだかった。“じならし”で無理やり弱点を突く方法もあるけれど、サイドンの防御はとても高いので反撃を許してしまうだろう。

 反面特防がとても低いので、彼女は弱点ではない特殊技の“ひゃっきやこう”を耐えられない。

 

 

「……悪いけどさあ! あんたらの主張ははっきり言ってどうでもいいよ! だっておれ分かんないもん、あんたらが味わった苦労とか過去とか! そりゃこのヒスイでのほほんとは暮らしていけなかったんだろうなと思うよ!? でもねえ!」

 

 

 ポケモンが一周する。三度目のゲンガーが場に出た瞬間、早業で“あくのはどう”をぶっ放した。

 ここに来て大きくもらった一撃にバクフーンか少し息を乱す。“めいそう”が無ければもっと深手だったな。

 

 

「それ()()()()()()()()()()()()()()()!? あんたらが苦労したからガラナさんはガーディと引き離されましたって、全っ然なんっにも関係無いよねえッ!?」

 

 

 返しの“じんつうりき”がゲンガーを捻った。赤と緑と青の光の奔流。だいぶ発動にも慣れが見え始めたなと特訓の成果をこんなところで実感する。

 

 

「自分が苦労したことと! 他人の幸せを奪っていいかは! 別の! 問題! だぁーっ!!」

 

 

 火炎を、通力を、百鬼夜行を引き連れて彼女たちの矛を打ち砕く。

 

 “誰の未来も、誰の世界も、何者かによって奪われるものではないのだ。”

 

 ナナカマド博士が槍の柱でぽつりと呟いた真理(それ)が心の中で火を灯す。この場においてはその言葉が、一方的な試合を運ぶおれの精神的な支えだった。

 

 ──でも、それはそれとしてキツいんです。死体に鞭打つみたいな感覚が。

 

 血反吐がそろそろこみ上げそうになった時、背後からここにいるはずのないガーディの咆哮が聴こえた。

 

 

「なっ……こいつ、おチビちゃん!?」

 

「うぇっ!? きみなんでここにいるの!?」

 

 

 思わず振り返って見るとやっぱりキングの血を引く方のガーディで、彼は懸命に野盗三姉妹に吠え立てる。

 その子を返せ、と言わんばかりに。

 まさか海を渡ってきたの? あんなに臆病な子が? 偉業か?

 

 

「ガーディ!」

 

 

 少し遅れてガラナさんが息を切らしてやって来た。

 まさか来られるとは思っていなかったようで、ススキさんが彼女とガーディをおろおろと見比べる。

 見なよガラナさん……あなたのガーディを……。

 

 

「ガーディおよしなさい! ()()()()()()のです!」

 

 

 ──今なんて言った?

 吠え立てていたガーディがぴたりと声を止める。口元が悲しげに窄み、初めて出会ったときのように小さくうなだれる。

 

 不自然な沈黙がキング場を満たした。

 それはきっと、ガラナさんの言葉に抉られたのはきっとガーディだけじゃないからだ。悪足掻きを続けていた三姉妹にも刺さったからだ。

 

 どうしよう。

 否定したい。

 その言葉だけは絶対間違ってる。

 今言うことじゃない。今この子に掛けていい言葉じゃない。

 けど。

 部外者(おれ)が、なんて言っていい?

 

 

 ──その逡巡を鮮やかに取り払うように、何かがおれの隣を駆け抜けた。

 刹那に感じたぬくもりに目を見開く。

 知ってるんだ。その熱を、この体が、朧げなその熱を覚えている。

 

 火吹き島に突如響き渡った遠吠えがあった。

 それは勇ましいガーディのものでもなければ、キングの子のものでもない。

 ──その声を、彼は誰より憶えている。

 

 

 遠吠えに呼応しガーディが吼えた。

 舞い上がる火の粉は祝福の様に。

 地は鳴動し風は熱を(めぐ)らせ王の子の咆哮を伝達する。

 

 灰白の体毛は黒炭に染まり、戯画の太陽を頭から被った様な鬣が首周りに拡がった。

 鮮烈な緋の色彩を宿す肌に走る稲妻の如き黒き筋。

 頭頂の一本角は左右に小さな対の角を連れ、「冠を頂いた王」の印象を強く刻印する。

 炎の意志を宿し、炎の遺志に肯定された、正統なる神使の後継者。

 

 それが空席の玉座に、新たな王が座した瞬間だった。

 

 

「っ逃げろショウチクバイ!」

 

「へ?」

 

 

 ──キングが即位した次の瞬間、狙った様に空が裂けた。

 待ち侘びた新たな王を歓待し、天が金色の雷槌を打ち鳴らす。

 轟音と共に降り注いだ一迅の光。

 鳴動なんてものではない。地の底からではなく天の頂きから無理矢理揺り鳴らされた大地が悲鳴をあげた。

 

 火山の全てが配下にくだる。

 溢れ出る地表の溶岩流が、煮え滾る地下のマグマが、神鳴りに輝くキングを仰ぎ、拝謁し、喝采し、讃歌を言祝ぎ諸手を挙げる。

 

 

「見ちゃったなあ、現場……!」

 

 

 雷に打たれたキングが荒ぶる──伝聞と証言でしか知らなかったおれは、視覚を媒介した情報の殴打に感嘆した。

 金色に輝く巨体が一歩踏み出す。

 それだけで地熱の温度は一足飛びに上昇し、噴出する熱気に焔が混じった。

 

 パチパチ、パチパチと。

 それは拍手か柏手か、火の粉は全霊を奉じて王の凱旋を知らしめる。

 

 

「え? え? ガー、ディ?」

 

「ガラナさんこちらへ!」

 

「ススキさま、これは」

 

「雷を浴びて荒ぶったのですよ! バサギリや、ドレディアと同じように! ……だから、この島に来たくはなかったのに……!」

 

「逃げるよ妹たち! 命あっての物種だからね!」

 

「お、応さ姉上!」

 

 

 にわかに騒がしくなった辺りの音を削ぎ落とし、眼前の王者に集中する。同じ炎タイプとしての敬意からか、バクフーンが恭しく一礼した。

 それでも彼の王に与することは無く、払うべき礼節はここまでだと言わんばかりに細めた鋭い眼を向ける。

 

 

「や、お前は休んでくれバクフーン。さっきまで何連戦したよ」

 

 

 あん? と異論を唱えたそうにしてる相棒をボールの中に下がらせる。

 あと単純にタイプ相性が悪いんだ。ヒスイのガーディが炎岩の複合タイプなのは調査で判明している。きっとウインディだってそうだろう。

 

 

「いいんだな、ドレディア」

 

 

 何より、さっきからこの子がやけに出たがっていた。

 炎岩の獅子に優雅な敬礼をしてみせた草格闘の舞姫。

 クイーン・ドレディアの狂騒を思い出したのだろうか、彼女は今にも爆発しそうなキングを見上げて力強く構えた。

 

 

「──さん、────よ──!」

 

 

 背後でススキさんに呼ばれた気がした。

 何か提案をされたみたいだけど、分厚いガラスの先で喋っている感じがして上手く聞き取れない。

 

 多分逃げますよって提案だけど、それは受け入れられない。

 もちろんススキさん達は逃げてほしい。おれは駄目。おれたちは駄目。

 

 キングは「炎」という概念を従えておれたちを見下ろしている。

 新任の王の双肩に圧し掛かる重みにしては些か不相応な力に見えた。

 鎌首をもたげる「炎」の中で、噴煙の如くこみ上げる力に抗うキングを視た。

 雷を浴びたウインディは、ガラナさんを傷つけまいと、共に育った兄貴分を傷つけまいと、必死に力を噛み殺している真っ最中らしい。

 

 ……金色の体で荒ぶる間に、キングたちは何を想っているのだろうかと考えたことがある。

 狂気に侵され我を失っている間、彼らの心はどこにあるのだろう。

 狂い暴れる自分を止められずに見ているしかないのだろうか。

 最も対処が早かったバサギリは元の気性も相まって、強い者との戦いを楽しむ様子がほんの少しあったと思う。

 では、バサギリよりも早くに対処されるこの子は。

 元の気性と相まって、今、どんな思いで前に立つおれたちを見つめているのだろうか。

 

 

「──行くぞドレディア! キング・ウインディに、誰ひとりとして傷付けさせるな!」

 

 

 悲鳴ならざる絶叫が夜の火山に轟いた。

 荒ぶる力に耐え忍ぶ心優しき王。

 その心に敬意と称賛を。

 そして今よりの戦いにおいては、抑え込まなくて構いません。全力で解き放って構いません。

 

 今から御身(きみ)が相手するのは──シンオウの王者(チャンピオン)が鍛えた、自慢のポケモンたちなのだから!

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「ガラナちゃん!? これは一体どういうこと!?」

 

 

 溶岩の戦場前に現れた長・カイの姿に膝から崩れそうになる。それを支えてくれたのは足元に戻ったあたくしの大切な相棒だった。

 長の座を巡って争った相手に無様な姿など見せられない。努めて冷静に、彼女の問いに返答する。

 

 

「先代キングの子が進化を遂げ……直後に雷に打たれ、荒ぶり始めたのです」

 

「あのガーディが……!?」

 

「今、ギンガ団のテル様が──きゃああっ!」

 

「うわあっ!? こ、これは先代キングの御業!?」

 

 

 背後で暴発した熱の余波が叩き付けられる。火吹き島が噴火したのかと錯覚する程の熱波と熱気の大憤激。

 恐る恐る振り向けば、そこにあったのは溶岩の戦場の中心で暴れ狂う、赤を纏った金色の巨体。

 その狂乱を全て捌き舞い踊る緑の姫君。

 熱風に靡く襟巻きの先端を焦がした、青い衣のギンガ団。

 

 

「テルさんが戦ってるんだね!?」

 

「ぼ、ぼくは逃げるよう言ったのですが聞き入れていただけず……」

 

「そりゃそうだよ! テルさんがあのガーディを独りにするはずないもの!」

 

 

 あまりにも真っ直ぐ断言したカイの言葉に胸を穿たれた。

 走る痛みに自覚するのは、自分がずっと抱えていた後ろめたさ。それを糾弾された様な激痛に唇を噛むと、その瞬間カイに両肩を掴まれた。

 

 

「ガラナちゃん、シズメダマを作らないと! ガーディの……ううん、ウインディの好物! 持ってるよね!」

 

「そ、それでしたらぼくも持っています……イダイトウの団子を作るとき、手伝ってくれるお礼として……」

 

「ススキ氏が? 一体何故……ってそんなことは今はいい! 早くシズメダマを作ってテルさんに渡すよ! 手順は作りながら教えるから、急いで!」

 

 

 有無を言わさず、けれど力強く背を叩くような物言いは、年若い少女のものながら長としての威厳を持ち合わせた声だった。

 

 今一度、溶岩の戦場を振り返る。

 炎を纏ったウインディが駆ける中、緑と青が猛攻に喰らいついていた。

 

 

 

 




ゲンガー(♀)
 生意気な性格で負けん気が強い。
 オマツがカントーからヒスイに渡る際、自身の影に潜ませる形で密入国させた。

サイドン(♀)
 脳天気な性格で力が自慢。
 物忘れが激しい種族だがオマツと一緒にいて楽しかった気持ちだけはずっと覚えている。

ドクロッグ(♀)
 慎重な性格で気が強い。
 三姉妹の生傷が絶えないので自分が一番お淑やかだと思ってる。

ユキノオー(♀)
 頑張り屋な性格で我慢強い。
 正直オタケがいるなら多少暑くても全然平気。「強いポケモン」に自分が含まれていると信じて疑っていない。



次回、第三章最終回です。
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