シンオウの昔日-翡翠英雄奇譚- 作:ヒュペルボレイオス
大大大発生編です。
「へえ~、ムウマってこんな可愛いポケモンだったのか」
「実はそうで」
赤い空が晴れ渡り、シンワの祭りを思い思いに楽しんだコトブキムラにはすっかり日常が戻っていた。
ポケモンへの関心も強くなったことで、今まで以上にあのポケモンが見たい、このポケモンが見たいとの依頼が舞い込んでくる。
放牧場に行けばおれが育てた子たちが沢山いるのだが、依頼の大抵は進化する前の小さめなポケモン目当てなのでちょっと需要が合わない。ちなみに今の流行はウリムーだったりする。
「もっと凶暴なのかと思ったが、こうして近くで見てみるとなんとも愛らしい姿をしている」
「そうでしょそうでしょ。ヒナツさんが考案した髪型もこの子がモデルなんですよ」
「ああ、ちょっと前から女子の間で流行ってるあのゆるふわな……。確かに言われてみれば、ムウマの頭の形と似ているな」
「首飾りにだけは気をつけてくださいね。知らない方が良いこともあるので」
「なんでそこで匂わせてくるんだそこで」
ムウマの栄養は人の恐怖心であり、首飾りは恐怖心を集めて栄養に変える胃腸のようなものである。耳を近づけると悲鳴が聴こえてくるため、彼女の印象を可愛らしいで留めておきたいなら不用意に近づかない方が良い。
それはそれとしてそういうゴーストポケモン特有の怖さもいつかは好きになってくれると嬉しいです。
*
発狂したように雨が篠突く。
坂を駆け下りる泥水はひとつの新しい運河の雛形で、全身を容赦無く打ち付ける暴雨で視界にノイズが掛かる。
いつぞやの『戻りの洞窟』をロッククライミングした際の天気を思い出して、制服の撥水性が悲鳴をあげていた。
──なお。
──おれ自身はというと。
「天国……………………」
「テル、しっかりしてください」
菅笠の先で雨水に潤う双葉の愛らしいわかばポケモン、ナエトル。
本来なら『紅蓮の湿地』の片隅、『羽音の原』で大切に匿われているかの様にひっそりと暮らしているその子が、未来のシンオウ地方でも大変希少なポケモンが、どういう訳か
おれのポケモントレーナーとしての人生がナエトルと共に始まったのは今更もう長く語ることでもないが、何度でもあの記憶は鮮やかに蘇る。
のんびりまったりゆったり気ままなおれの初めての相棒とクロガネゲートを突破し、ハクタイの森で頭を抱え、トバリのゲームコーナーでいつまでも止まらない連チャンに半泣きになり、ノモセの湿原で泥だらけになって、ヨスガのふれあい広場に入れず意気消沈し、ミオの図書館で神話に出会い、キッサキで熱い闘志を燃やし、ナギサの日光浴を楽しみ、そしてポケモンリーグの門を叩いた青春。
鈍足故に先手は取りづらかったが、その巨躯を以て攻撃を受け止め反撃で取り返す勇姿はまさに重量級ポケモンが持つ逞しさの最たるものであり、場を整えて後続に繋ぐ力にも長けていたので先発も殿もここ一番も常に頼りになる相棒だった。
「見てください先輩。ナエトルの可愛さは晴雨別件なんです。雨の中のナエトルはあのチャームポイントの双葉がつやつやに活き活きしてるんですけど、実は第二の刃としてあの甲羅のつややかさがあるんです」
「テル、落ち着いてください」
「あの小さくも存在を主張する鼻先が堪らないっスよね。ほら見てください欠伸した時にほんの僅かに鼻の穴が大きくなるじゃないですか、あの数ミリの動きに硬い皮膚の下の筋肉の働きが視えて愛おしくなってくるんです」
「テル、仕事中です」
「フフ……天職」
フェザーボールを逆手で握り込む。
ポケモンたちから認識されない遠距離でのスナイプは戦闘にもつれ込まないし逃げられないしで大変都合が良い。
ナエトルは“ねむりごな”が効かないし、そもそも悪天候下で粉技はほとんどが使い物にならないのだから困ったものだ。
軽く六発連投して様子を見る。
一体だけボールを飛び出してしまったので、一秒経つより先にこちらに向いている背を目掛けて再度スナイプ。
草の陰に隠れていたもう一体を見つけたのでそちらも狙撃すると、『舞台の戦場』近辺に突如大量発生したナエトルの群れ丸ごとの捕獲が完了した。大多数は調査に協力してもらった後、お礼のきのみと共にまた野生に帰す予定である。
「やはり普通の大量発生とは規模が違う……大大大発生、シマボシ隊長の呼称にも納得です」
「ですねー。今のところおれたちが遭遇してるのは普通のポケモンばかりっスけど、余所じゃオヤブンの群れもあったらしいじゃないですか。人間なら普通に死ねますよ」
「ピチューのオヤブンですね。中には珍しい色違いもいたそうですが、負傷していて捕獲どころではなかったのだとか。……テルもオヤブンの群れは厳しいですよね?」
「うーん群れって言っても一体ずつ引き離してウイングボールで捕まえればなんとでもなります。時間はそりゃあ掛かるでしょうけど、いざとなったらウォーグル様に逃がしてもらいますから」
「そこは……厳しいと言ってほしかったです……」
赤い空が晴れ渡り、『時空の裂け目』が消えたヒスイの地で起こった新たな異変──大大大発生。
突然の豪雨と共に各地でポケモンの群れが大量に出現し、豪雨が止むとどこかへと行ってしまう摩訶不思議な現象は、通常の大量発生とは別物としてハッキリ区別された。
中にはこれまで調査隊も野生下では存在を確認できていなかったポケモンが姿を見せたケースもある。例えばアヤシシ様ではないアヤシシ、キング・バサギリではないバサギリなどだ。
そして本来ならありえないオヤブンポケモンの群れ。
どれだけ小さなポケモンでもオヤブンともなればその凶暴性は計り知れず、コトブキムラは新たな不安に怯えていた。
特にイチョウ商会にとっては死活問題だ。豪雨ではポニータどころかあのギャロップさえもぬかるみに足を取られるし、炎技の威力もガタ落ちになってしまうから護衛もままならない。ただの雨ならそれでも問題ないが、そこにポケモンたちの大大大発生が重なればもう身の安全は保証できない。
よって調査隊はツーマンセルで警戒しながら調査に当たっている。
おれは単身でもポケモンたちがいるから大丈夫だと言ったのだが、むしろ興奮して回りが見えなくなると危ないという理由から、お目付け役も兼ねてショウ先輩が相方となった。嬉しいやら悲しいやら。
「お。上がりましたね、雨」
雨脚が去るのは本当に一瞬だ。
弱まってから上がるのではなく、速やかに上がって雲が流れ出す。
泥流のようだった雨雲は早くも白澄み始めていた。
今のところ、どれだけ長くても雨が降り続くのは半日程度。少し待てば嵐は過ぎ去り、また平穏な原野や湿地が戻って来る。予兆が無いのが困りものだ。
「ではベースキャンプに戻りましょう。ナエトルにサイホーンにリングマ、それにガチグマまで発見した快挙を伝えるために!」
「はい。あ、クイーン・ドレディアに挨拶だけしていきますね」
せっかく近くまで来たことだし、と『舞台の戦場』を見上げて振り向いたその時だった。
本来なら『毛槍の草原』の上空を気ままに飛んでいるはずのトゲチックが、草原から遠く離れた舞台の上空を危うげにホバリングしているのが見えた。ひょっとして大大大発生の影響……とも考えたけれど、それにしては群れの姿が見えない。
「……何か、様子が……?」
飛んできた方向を何度も振り向いては必死に加速せんと小さな羽を羽撃かせる姿に違和感を覚えた。争いを好まないトゲチックは自分から喧嘩することも無ければ、他のポケモンから襲われることもあまり無い。
トゲチックが気にする後方に視線を滑らせるとその正体が自ずと判明する。
一頭身の妖精っぽいフォルムに暗い青緑色の体、オヤブン相当の巨躯で空を駆けるムウマが何度も“シャドーボール”を撃っていた。
「なんで湿地にムウマが……『天冠の山麓』から飛んできたか?」
「分かりません。ですがこのままだとあのトゲチックは撃ち落とされてしまいそうです」
「んーじゃあ……」
一発試しにウイングボールを飛翔させる。真っ直ぐ遠くに飛ぶフェザーボールに改良を重ねた高性能な一品は白い雲と糸で繋がれた様に直走り、着弾と共にムウマの体を呑み込んだ。
トゲチックは何が起きたか分からないなりに助かったと感じたのか、止まらずに少しでも距離を稼ぐ。空から重力に従って落ちてくるボールをキャッチしようと手を掲げた刹那、空色の球に幾筋もの亀裂が走ったかと思うと内側から木っ端微塵に破壊された。
「うーん元気があって良いね!」
そして意識は完全にこっちに向いた。上空からおれを射殺さんばかりに睨みつける眼光の気迫はまるで“くろいまなざし”。
最早視界を遮るだけになってしまった菅笠を取り去ってショウ先輩に預けたおれは、祭の後で新しく育てたポケモンの名前を高らかに謳い上げた。
「行ってこい──ダイケンキ!」
始まりの浜で捕まえた三体の内の一体、ミジュマルの研究が終わったらしい先日遂に譲ってもらえた個体。
二度目の進化を遂げたとき、その風貌は青い体に貝殻の甲冑を纏う威風堂々とした佇まいではなく、この苛烈な地を生きるに適した黒騎士へと在り方を変えた。
上空からぐんぐんと近づいてくるムウマが放った禍々しい“シャドーボール”の軌道を見据えてアシガタナを抜刀する。奔る剣閃、“シャドーボール”だったのもが斬り裂かれて霧散した。
互いに小手調べが済んだ時、『舞台の戦場』の前に相対するふたつの影。
──きみ何か写真と違わない?
ムウマの特徴である波打つ髪のような頭部からはまるで二対の触手が如く羽が伸び、その巨躯は小さく見積もっても二倍以上に膨れ上がっている。
まだ体格はオヤブンだからで納得できるがその長く伸びた髪は何なのか、もしかして老熟の証なのか。子供っぽく釣り上がっているはずの眼差しも色合いに違和感があって、本当に眼前のポケモンがムウマなのかという疑念が頭を支配した。
咆哮するムウマの叫びにダイケンキがアシガタナを逆手に持った刹那、彼女は本当に一度だけ瞑目すると、かっと広げた眼に目標を捉えて一瞬にして重力を振り払った。
ダイケンキと比べて半分ほどになった体重が可能とした縮地の移動。
抜刀術の如く翻る剣戟は一撃一刀の重量級ではなく、体を蝕む傷の痛みが長く続くようにと設計された目にも止まらぬ連続攻撃。
黒い嵐が襲い来る。
暗紫の残光が太刀筋として軌跡を描き、刃毀れした貝殻の破片が肉体にきつく食い込んだ。
押し寄せる黒き千重波を思わせるその秘剣を可能とするためのヒスイの姿。この地で新たな進化を遂げた彼女は、確かな手応えを感じて頷きながらカタナを再び突きつける。
……
今のが早業だったからとかそういう話ではなく、その秘剣はオヤブンムウマの赤い眼光を陰らせるには至らない。
ムウマの物理防御はお世辞にも高いとは言えないから、たとえオヤブンだったとしても今の攻撃で体力を根こそぎ奪われているはずなのだが──ムウマはその業をせせら笑うかの様に一本の腕で口元を押さえ、くすくすと笑ってみせたのだ。
「……」
──タイプが違う。
からくりがあるとすれば、それはこの世界に満ちる絶対的な法則に他ならない。
いつぞやの氷の巨人みたいな例外は別として、ゴーストタイプに悪タイプの技がそれほど効かなかったのなら、それは眼前のポケモンが悪タイプに耐性のある何らかのタイプを複合しているだけだ。
同じ悪タイプか、あの長い髪を生かした格闘タイプか、愛らしいだけでは済まないタイプのフェアリーか。
「試し打ちだ、“サイコカッター”!」
刀身に宿す色を一度だけ悪から超へと切り換えて振り抜いた。
鮮やかな薄紅色に発行する念力の刃が弧を描いてムウマを捉えんとするも、向こうはそれを上回る速度で身を翻して
その圧倒的速度にダイケンキの守りが間に合わない。
振り抜いた直後のアシガタナを引き上げる余裕は無いと判断して捨て置くも、縮地の発動が僅かに間に合わず黒騎士は月光の裁きに呑み込まれた。
──なあーんなんですかねえ、そのスピードは!
ポケモンの技を繰り出す速度というものには一応適性不適性がある。得意不得意と言い換えてもいいだろう。
例えば炎タイプが炎技を繰り出すのとエスパータイプが炎技を繰り出すのとではその威力に大きな差が出るほか、技を繰り出すまでに要する時間にも僅かながら差が存在する。人間が陸を走るのと水中を走るのとではそのスピードにかなりの差が出てしまうように。
長くて数秒、熟練者なら一秒にも満たないからあまり重要視されていないが、クロバットなんかの超スピードを持つポケモンを相手にする時みたく一秒でも突き詰めたいなら覚えておいて損は無い。
──つまり今のはこのムウマの素早さを予見できなかったおれのミスです。ごめんダイケンキ、一旦下がって。
で、それを踏まえた上で。
発動速度と威力からして、複合先はフェアリータイプで断定していいだろう。悪タイプならエスパー技を避ける必要もないし。
「ヒスイ最速は譲れないよなあ、マルマイン!」
ダイケンキに代わってボールから飛び出した球体が吊り上がった眼で睨みつける。
ビリリダマの群れで一番の俊足を持つ陽気な
挨拶代わりに迸る閃光は雷鳴を置き去りにした。
たかが“スパーク”で轢き逃げされたムウマは驚愕に目を見開いてギャンギャンと敵愾心を露わに威嚇する。おそらく自身のスピードを凌駕されたことなんてなかったのだろう。
電気でも地面でもないなら“でんじは”を一発当てれば脚は奪える。
マルマインは年端もいかない妹を相手取る様な、一線を退いた老人を相手取る様な面持ちでけらっと笑ってみせた。
おいそんなに煽ると──
「あっ」
分かりやすく立腹したムウマが天に吠え立てる。
その咆哮に呼応するかの如く陽光がさんざめくと肌を撫でる日差しが僅かにだが明確に強くなった。
問題はその後。
金色のオーラを纏ったムウマが獰猛な笑みを浮かべた瞬間、彼女はマルマインの眼前に瞬間移動してその靡く触手で顔面を思い切り殴りつけた。
土を転がるマルマインを高い声で煽り返しながら幾度も叩いては追いかける。キレたマルマインが放電するのを見切って上空に飛び上がると、強い日差しを背に次々に“マジカルフレイム”を点火した。
かぶりを振って空を見上げたマルマインと目が合った瞬間を狙いすまして、緋色の軌跡で宙を彩りながら容赦なく炎の連撃を見舞う。
それはタイプの得意不得意なんて覆す、理不尽なまでの超スピード。
まるで噴火した火山から炎を纏った石が落ちてくるかの様な暴虐。
人間の眼が捉えられる限界なんてとっくに超過している。おれがこれまで見てきたどんなポケモンより速いのだ。それこそマルマインでも追いつけないくらいに。
何発かの命中を許してしまい、マルマインは苦悶に声を上げた。そこには苦痛への呻き以上に、自身が最速の座を蹴落とされている現状に対する悔しさが滲んでいる。
「テル、このままでは……」
速度が増したのは“にほんばれ”の後だ。上がり続けている様子は無いからあくまでひとつギアを上げる程度のもの。見たところ──いやほとんど見えないけど──上がり幅は結構大きいけどそこまでじゃない。
……ああ。なんか懐かしいな。でも確かにそうだ。
攻めの力でも守りの力でもないなら、
「大丈夫だよマルマイン。一旦落ち着け、“こうそくいどう”だ」
炎の雨が降り注ぐ中、おれの声にはっとなったマルマインはあえて全ての力を抜いた。
力んでいた全身がふっと軽くなる。無駄な構えなんていらない。風に乗ってどこまでも飛ぶ木の葉の様に、川の流れに身を委ねる笹舟の様に。
雑念を払い、ただ速さにのみ意識を向ける。
降り注ぐ炎に身構える必要なんて無い。
見てからふらりと避ければいい。
右に。
後ろ。
左。
前。
前。
前。
──今。
「“でんじは”!」
助走を重ねて最高潮になった加速の果てで跳躍する。飛翔と言うにはあまりに直線的な瞬間移動に、ボールの中のダイケンキが静かに頷いたのを感じた。
過分を捨てて重さを捨てて辿り着いた速さの極地。まるで日輪の恩恵は己だけのものだとでも言わんばかりに天を背にするムウマを雷の網が絡め取る。
目を見開く時間さえ与えてやらない。
逆転した速度の上下関係は後手の反応を許さない。
相手は地を駆けるしかないのだと侮った赤い眼差しが再度驚愕に見開かれる。
──そもそもムウマは日差しを好まないんだけど、きみ本当に誰?
減速を知らず、そのまま激突したマルマインとムウマがもつれ合いながら落下する。
激昂したムウマは至近距離で炎技を叩き込んでやろうとしたが、全身に流れる痺れの鎖がそれを阻害した。
ポーチからボールを取り出して、落ちてくるムウマと目を合わせる。
今になって気づいたけれど、目元の違和感はムウマと同じ色でありながら色の置き方が異なっていることに起因するみたい。
ムウマのようでムウマではない、だけどポケモンの例に漏れず可愛いと断言できるその姿。
おれは擽られる知識欲を押さえながら笑いかけ、せめてもの敬意を示すかの様にハイパーボールを放り投げた。
お騒がせしました、クイーン・ドレディア。
*
「う~ん…………」
コトブキムラのギンガ団本部──ラベン博士の研究室で、博士が腕を組みながら首をひねる。
彼の視線の先はおれの頭の上。調査結果を資料に纏めているおれの頭上で、先程からひたすら頭皮を甘咬みしているフェアリームウマだ。
「ポケモンの大きさにも振れ幅があるのは把握しています。ミノムッチやミノマダムのような、同じ種族で大幅に姿を変える事例も確認済みです。ですが……ボクとしては、このポケモンを『ムウマ』とするのはどうにも慎重にならざるを得ません」
「ですよねー」
「テルくんにも心当たりは無いのですよね?」
「ないですねー」
自分の長い腕と親近感が湧くのか、ムウマはずっとおれの総髪にじゃれついている。いやムウマではないって話を今していたところなんだけど。
湿地の調査から戻る間にあれこれコミュニケーションを取ってみたのが功を奏したのか、フェアリームウマは無邪気な子供みたく笑うことが増え、出会った当初のような獰猛な表情はすっかり鳴りを潜めていた。
特にその髪なのか腕なのかよく分からない触手をお手入れされるのがいたく気に入ったらしい。リゾートエリアのリボンシンジケートで受けられるエステの技術を見様見真似で模倣した甲斐があった。ありがとうエステシャンのお姉さんたち。
「博士、テル。こういう時は研究室で頭を捻っていてもどうしようもありません。コトブキムラへの移住者も増えたことですし、何か知っている人がいないか聞き込み調査を提案します!」
「妙案ですショウくん! そうですね、ボクたちの知らないこともまだまだ沢山ありますから。ではテルくん、お願いできますか?」
「了解です。姿絵を見せて回るより実際にこの子を連れていける方が良いですもんね」
「イグザクトリーです!」
行こっか、と頭上で遊ぶムウマ──いやだからムウマではないかもしれないんだけど──に声を掛ければ、彼女はにぱっと口元を笑みに広げてみせた。
ツリ目気味のムウマとは違うジト目気味の眼が独特の可愛さを醸し出している。そういえばアルセウスフォンはどう思う?
──『すべてのポケモンとであえ』。
はい……。
ダイケンキ(♀)
冷静な性格で体が丈夫。フタチマルに進化した時点でヒスイじゃ一撃一刀はやっていけないと悟り太刀筋を変える決意をした。貝殻の鎧を大幅に軽量化させることで瞬間的な超スピード・縮地を可能としている。
マルマイン(性別不明)
陽気な性格で物音に敏感。ヒスイ最速を目指してテルについていった元ビリリダマ。マジカルフレイムの連撃にはちょっと泣きそうになったけどテルの声で心を保てた。
ムウマ(性別不明、テルからの印象は♀)
多分ムウマじゃない。