ようこそ櫛田桔梗から攻略する教室へ 作:葱塩柚胡椒
車に轢かれて死んだあとに自分のことを神と名乗る存在と出会い、テンプレの如く再び生き返ることを知らされた。
そして再びテンプレの如く、何かしらの特典を授けてもいいという話だったから、【女受けする理想の男の肉体】なんて曖昧なものを求めて、『ようこそ実力至上主義の教室へ』の世界に生まれ落ちたのが5年前のこと。
「(どんな世界でもとにかくモテればいいやと思っていたけど、その後に告げられた転生先はまさかの『ようこそ実力至上主義の教室へ』。もしや、俺が好きな作品を選んでくれたのかもしれないな)」
こんな魂が凡人の俺にそこまでしてくれるかは怪しいが、答えがこの先も分からない可能性が高い上に、不都合が無いのだからそれでいい。
「(まあ、さすがに『よう実』の世界に転生させられるとは思ってなかったけど。
暴力と策謀ばかりの生活が生きやすいかと言われて、首を縦に振る人の方が少ないに決まってる」
なんだったらエロゲの方が良かったくらいだ。
「……だけど、もしこれが血生臭い世界への転生だったら名前のないモブキャラのイケメン枠として、死んでたかもしれないんだよなぁ……)」
冷静になってみるとバトル漫画だったなら普通にヤバかった。
……まあ、『よう実』も非暴力的な作品とは口が裂けても言えないから、心から安心とはならないんだけど。
「原作の女キャラを彼女にしたい……確か、『東京都高度育成高等学校』に入学できる時点で、生徒の顔面偏差値も平均的に見て高いらしいし、この世界の堀北や坂柳、一之瀬なんかも、全国有数の美少女になっているはず」
美女や美少女ばかりの学校に入学するなんて全ての男子の理想そのもの。
殺伐とした高校生活になることは目に見えてるが、それだけで退学するリスクを受け入れる充分な理由になる。
そして何よりも……
「原作が舞台の場所に行きたいと思うのはファンとして当たり前の思考だろ?
それにこの顔と身体さえあればアイドルや俳優、モデルまで、なんでもなれるだろうから、退学になってもどうにでもなるだろうってこともあるけど。
精一杯楽しんで第二の人生を満喫させて貰いますか」
小学校に入学する少し前に、俺は将来どこの高校に入学をするのか決断したのだった。
◇◆♥️◆◇
そして小学一年生になると、偶然かはたまたさらに神の気遣いかどうかは分からないが、『よう実』で俺が一番好きなキャラと出会うことができた。
「ほわぁ……すごくかっこいい……」
薄茶色の艶やかな髪をカチューシャで止めている少女は櫛田桔梗。『よう実』のヒロインの一人にして最推しキャラの女の子。まさか、こんなにすぐ会えるなんて。
「は、はじめまして!わたし、櫛田桔梗って言います!」
「はじめまして、僕の名前は
そんなわけで腹黒要素が原作よりも薄いロリ時代の櫛田と顔合わせをした。
本性を知ると同時に脅迫してくる奴とか、普通に地雷女でしかないわけだけど、まだその片鱗は姿を見せてはいないみたいだ。
内心でドキドキしながらも2時間くらい遊んで解散する。
「じゃあね。桔梗ちゃん」
「うんっ、バイバイ!謳歌くん!」
手を振りながら別れを告げる。その姿を見ながら原作との相違点を認識した。
「(さすがに原作みたいに損得で考える思考回路はまだ持ってないか。
単純にチートボディによる魔性の顔面にトキメいてるって感じだ。さすがは女子、精神的な成長が男子よりも早い)」
一番になることで周りの人間から認められたい承認欲求の怪物。勉強や運動で一番になれるように努力している時期だろう。
それで一番になれないことを悟り、一番の人気者になるように振る舞い始める。
それが確かそれが中学生になってのことのため、裏の顔が形成されるのが中学生以降になるというわけだ。
「(つまり櫛田の超簡単攻略法である、『極度のストレスで生まれた櫛田の裏の本性を認める』という方法を、この年齢で使うことはできない。
今の何をしても差が付かず、努力次第で一番になれる今の子供時代は、櫛田が人生で最も満ち足りた時間なんだから)」
つまり、しばらくはそれ以外で櫛田を攻略するしかない。
「まあ、この転生チートボディなら、あの難易度ベリーハードの櫛田も落とすことは不可能じゃないはず」
幸いにして時間は幾らでもある。幼馴染みとして過ごしていけばあの美少女を俺の女にする機会は幾らでもある。
「一番安牌なのは櫛田を落として、そのままフェードアウトすること。『東京都高度育成高等学校』に進学することを止めて別の学校に行けば、それだけで暴力や策謀に巻き込まれない、ストレスフリーで安全な高校生活を送ることができる」
あの反応と承認欲求ならば、間違いなく学校一のイケメンになるだろう俺を放っては置くことはない。
原作知識で弱点まで知り尽くしている俺には、他の男からすれば高嶺の花でも櫛田桔梗の攻略はイージーモードになってしまう。
ーーだが、そこまで理解してあることに思い至る。
「……彼女を作ること自体は、このチートボディを以てすれば大して難しいことじゃない……なら、他の女キャラを倫理観を優先して除外するのは勿体ないんじゃないか?
この人類最高峰の肉体を以てすれば、現実では不可能なハーレムも叶えられるかもしれない」
このアイドル並みの顔面なら霞むどころか上回ってもおかしくない。いや、既に魔性の片鱗が垣間見得る容貌なら、原作時にはさらに凄みが増しているだろう。
顔が良ければ好印象を持たれやすいのは誰でも分かることだし、この顔こそ女が求める理想像の一つなのだから、男はともかく女から嫌がられることはこの先もないはずだ。
「(まず櫛田桔梗を俺なしではいられないくらいに徹底的に攻略して、ハーレムを作るための足掛かりにしよう)」
原作の櫛田がそうそうしない、イケメンに見惚れる顔を眺めながらそんな最低なことを想定する。
「(櫛田一人落とすだけなら今から始めることも含めて、割りとイージーモード。
だけど、ハーレムを形成するならあの櫛田にバレない、あるいはそれを受け入れさせるルートを作り進んでいかないといけなくなる)」
調子に乗って浮かれている自覚はあるが、これだけのチートとあの櫛田にこんな顔をさせることができたという達成感。野心が強くなってしまうのはしょうがない。
「なるべく自由に動ける原作前にやれることを全部しないといけないか。アドバンテージが取れるなら取るのは当たり前のことなんだし。
それこそ原作の時点から足並み揃えようとするのは、転生チートに足を組んだ自惚れでしかない」
何より坂柳、龍園、綾小路。
どいつもこいつも真正面から挑んでも、ほぼ負けることが確定している面子が相手ばかりだ。だからこそ今取れるアドバンテージを確実に、そして数多く手にしなければならない。
「入学する前に全ての準備を終わらせてやる。俺のハーレムのために!」
肉体も頭脳も限界まで鍛えて、努力し続ける主人公と言えば聞こえはいいけど、その理由が『ハーレム作りたい』と『暴力恐い』と『綾小路怖い』が大部分を占めてます(その三つで95%くらい)